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『知力1000000』のマジヤベー超超大天才がパネェ大活躍の神的最強無双英雄日常伝説  作者: 稲荷竜
二章 『モンスター襲来』、魔力プラントを守れ!
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11話 天才、任される

「『モンスター襲来』ですか?」

「うむ……」



 学園長は重々しくうなずいた。

 そして、相談相手の顔を、すっごく見る。


 知力1000000のシラギ・ユータは、すっごく見ないと、記憶が難しい顔をしてる。

 あんまり、特徴がないのだ。

 黒髪で、ブレザーを着てて、身長は普通で、細くもなくて太くもない。

 角とか生えててくれると、とても覚えやすくて助かるんだけど、ユータは角とか生えてなくって、だから、困る。


 もしくは、メガネとか、かけててほしいなあって、学園長は、けっこうな頻度で思う。

 メガネをかけると、頭がいいと思われる。

 見た目だけで頭がいいと思われると、よっぽど頭がよくない限り、『なんだ、話してみたら、メガネほど頭よくないじゃないか』ってなることが、たくさんある。


 プレッシャーがかかるのだ。

 だから、目が悪いだけでメガネをかけている人は、いない。

 それだけに、このエリートまみれの学園で『メガネをかけている』っていうのは、よほど自分の知力に自信があるっていうことに、なる。


 ユータは、メガネにふさわしい知力の持ち主だから、かけててくれると、すごい、助かる。

 でも、ユータは今、知力30ってことにしてるから、メガネをかけてると賢さが透けてしまって、学園長も『顔を覚えにくいからメガネかけて』って、言い出せずにいた。

 他になにか、賢くなさそうで、わかりやすい特徴は――



「シラギくん、今度、翼とか生やしてみんかね?」

「……ええと、僕が翼を生やすことと、先ほどおっしゃられた『モンスター襲来』とは、いったいどういった関係性があるのでしょうか?」



 学園長はハッとする。

 そうだ、モンスター襲来の話をしていたんだった。


 でも、普通、いきなり『翼生やさない?』って言われたら、翼の方で、話が進んでしまうだろう。

 それを、冷静にもとの話題に戻せる知力は、さすが、知力1000000の大天才だと、学園長はあまりの賢さに目玉が飛び出かけた。



「うむ、まあ、翼はいいんじゃ。『モンスター襲来』というのはな、これが、不思議で、どう説明したものか……」

「……」

「毎週水曜日の、決まった時間に、決まった場所から、決まった場所に、大量のモンスターが現れるんじゃな」

「……モンスターの生態、みたいなものでしょうか?」

「わからぬ。神代からずっと、一日三回、昼、夜、深夜と、きちんと襲来が続いているようじゃ。だからの、その襲来される場所を、モンスターから守らねばならんのじゃ」

「なるほど」

「でもな、普段、生徒に防衛に行かせるんじゃが……今はまだ、入学式前じゃろう? 春休みじゃ。生徒がおらんので、困っておるんじゃ」

「……ええと、なぜ生徒がいないんですか?」

「ははは。ワシをからかっちゃ、いかんぞ。今言ったばかりのことぐらい、知力が100と少しのワシだって、覚えておけるからのう。――生徒がおらんのは、春休みだからじゃ。どうじゃ、さっき言ったまま、きちんと言えたじゃろう?」

「そうではなく……あの、『モンスター襲来』の日時は、きちんと決まっているんですよね?」

「そうじゃな」

「その時に生徒がいないと、防衛の人手が足りないのも、わかってるんですよね?」

「うむ」

「じゃあ、なんで春休みのスケジュールを『モンスター襲来』に合わせたものにしなかったんでしょうか?」

「…………?」



 学園長は首をかしげた。

 ユータは頭がよすぎるし、早口で難しいことを言うものだから、知力100ある学園長でも、理解するまでにちょっとかかるのだ。



「……シラギくん」

「はい」

「君の質問は、もっともじゃが、ちょっと、社会通念をわかっておらん」

「社会通念ですか……」

「そうじゃ。いいか、シラギくん。休みは長い方が、学生のみんなは、嬉しいじゃろう?」

「そうかもしれません」

「そういうことじゃな」

「……ええと、モンスターたちは、別に攻められて困るような場所に来るわけではないんでしょうか?」

「……? 攻められて困る……んんん?」

「『モンスター襲来』は、放っておいても大丈夫な感じなんですか?」

「いいや。連中、魔力エネルギープラントに攻め寄せるから、放っておいては、いかんぞ。魔力エネルギープラントを落とされると、多くの地域で、生活に困るんじゃ。復旧まで時間がかかるし、守らなければ、たいへんじゃな」

「……春休みと生活と、どっちが大事なんですか?」

「生活がなければ春休みもないじゃろう。ということは、生活の方が大事というわけじゃな」

「だったら春休みを早めに切り上げて、生徒を学園に呼び戻してはいかがでしょう?」

「しかし、春休み中じゃからな。休みと言ったのに、呼び出しに応じる者は、おらんじゃろう」

「…………ええっと」



 ユータは額を人差し指でコンコンと叩いた。

 これは、天才の彼が考え事をする時のクセだ。

 学園長も、彼と一緒に、なにかを考えているみたいに、額をコンコンする。



「……学園長先生、それで、僕を呼び出した理由は……」

「モンスター襲来を放置すれば、学園の……いや、けっこう広い地域の、危機じゃ」

「そのようですね」

「でも、防衛にあたる生徒がおらん」

「そのようですね」

「とても困っておるのじゃが、ワシの100と少しの知力では、どうしていいか、わからん。そこで、君のすさまじい知力で、なんとかしてほしいんじゃ」

「……それは、僕に『防衛に行け』ということでしょうか?」

「いや、なんとかなれば、なんでもいいぞい。でも、一撃で学園を半壊させるすごい魔法使いの君が行けば、解決はしそうな気がするのう」

「しかし、僕が行って、魔力プラントを巻きこまずにモンスターだけを退治できるでしょうか?」



 つい先日、手からでちゃった魔法で学園を半壊させているのだ。

 二日ぐらいで妖精が学園を元通りにしたものの、魔力プラントは重要施設っぽいので、壊したらけっこう修理とか大変なんじゃないかなって、知力1000000のユータは推理した。

 さすが、頭がいい。

 情報と情報をつなぎあわせてものを考えられるなんて、並大抵では、ない。



「むむむ……たしかに、君の言う通りじゃ……魔力プラント防衛に失敗すると、一週間ぐらい直らん。次の『モンスター襲来』の時には、不思議と綺麗な姿のプラントに戻っておるが、それまでは、色々大変じゃな」

「ああ、でも一週間で直るんですね……」

「そりゃあ、モンスターが襲来するからのう。プラント壊れておるのに、それでも来たら、モンスターたちが馬鹿みたいじゃろう」

「……ええと、モンスターが来るから、プラントが直っているんですか? プラントが直っているから、モンスターが来るんじゃなくて?」

「む? ……すまんのう、シラギくん。ワシには、君が今言った言葉の、違いが、よくわからん。同じことを、二度言わなかったかね?」

「同じこと……うーん、そうかもしれません。僕にはちょっと、難しいです」

「ふむ……君に難しいならば、ワシらには理解など無理じゃな。なにせ、君は、ワシの一万……いや、九千倍ほどの知力の持ち主だからのう」

「……とにかく、生徒を呼び出すことはできないし、人手はないけど、なんとかしなきゃいけない、と……」

「うむ。頼んでもいいかね?」

「僕がなにも方法を思いつかなかった場合、学園長先生に腹案などはあるんですか?」

「ワシと君で戦えば、けっこうどうにかなるじゃろう。モンスター襲来は、難易度を選べるからのう。『イージー』で挑めば、ワシと君、二人でもいけると思うぞ」

「……難易度を選べる?」

「モンスター襲来中の魔力プラントには、学園の転送魔法陣で向かうんじゃが……その魔法陣で移動する時に、『イージー』『ノーマル』『ハード』『エキスパート』の四種類の難易度から、好きなものを、選べるんじゃ」

「……えっと、それはモンスターが手加減してくれるということですか?」

「いや、神代からあるシステムじゃからな。詳しくはわからん。古来の風習では、自分が挑める最大の難易度に挑戦するのが、正しい作法のようじゃな。ワシや君だと、『ハード』になるじゃろうか……君だけなら『エキスパート』かもしれんのう。ワシは『エキスパート』に挑もうとすると『受注レベルに到達していません』と言われるが……」

「誰に言われるんですか?」

「魔法陣じゃろう。抑揚のない、ぶきみな声じゃ。ワシはあの声が苦手でのう」



 学園長は身震いをした。

 なんか、感情がこもっていなくって、とても苦手な声なのだ。

 こわい。



「……まあ、ともあれ、なにか考えてみてはくれんかのう? ワシももう年寄りじゃから、プラント防衛戦はきついんじゃ。けっこう、いっぱい走らないといかんからのう」

「はあ……わかりました。でもモンスターとの実戦ですか……命懸けですね」

「いや」

「……え、違うんですか?」

「ケガはするかもしれんが、死ぬより前に、魔法陣前に転送されるんじゃ。今のところ、防衛戦での死者はゼロ人じゃな。まあ、詳しいデータは、マルギット先生にでも聞きなさい」

「はあ……ちょっと、すいません。なんだかよくわからなくって、頭が混乱してきました」

「ふむ……君は色々、考えすぎてしまっておるのかもしれんのう。そんなに難しいことではないんじゃが、それは、ワシらの知力では、考えるべき問題点を思いつけぬということかもしれん」

「そういうものでしょうか……?」

「頭がいいと、頭が悪い人には見えないものが、見えるんじゃな。ワシでも、そういった経験はあるぞ。君なら、ワシ以上に、そういうとこ、あるじゃろう」



 学園長はうんうんうなずいた。

 頭の悪い人の相手ばかりさせられていたころの、苦くも懐かしい記憶がよみがえっているのだ。

 知力に差があると、ほんとに話が通じなくて、すごい困る。



「ともあれ、君に任せたぞい。必要なものがあれば、ワシができる限り、用意しよう」

「他の生徒を呼び出していただくことは……」

「しかし、春休みじゃからのう。休みの時まで、先生の言うことを聞く生徒など、おらんじゃろうな」

「……わかりました。こちらでどうにかしてみます」

「うむ。君がそう言ってくれると、心強い」

「では、失礼します」

「うむ」



 ユータが一礼して去って行く。

 学園長はにこにことユータを見送り、あらためて、カレンダーを見て――



「とりあえず、今週はしのげそうじゃな」



 ――ほっと安堵の息をついた。

 知力1000000だから、余裕に決まっているのだ。

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