10話 学園長、悩む
「うむむ、困ったのう……」
白いヒゲを生やした、立派な老紳士が、立派な机で、悩んでいた。
見るからに頭がよさそうな、おじいさん――学園長だ。
実際に、頭がいい。
なにせ世間の平均値力が20ぐらい、エリートを集めたこの学園でも40~60ぐらいの学園なのに、この人は、知力が100もある。
これは、ほんとにすごくて、少し前まで、世界一位の知力ステータスだった。
でも、最近は、知力1000000とかいうヤベーやつがいることがわかったので、世界二位だ。
世界二位だけど、知力1000000の子は、1000000じゃないことにしてるので、公式には、世界一位だ。
このあたりの話は、すごくややこしいから、頭が悪い人には、うまく理解できない。
学園長の高い知力でも、たまにこんがらがる。
「うむむむむ……しまったのう……実に、やっかいなことじゃ……ワシの知力をもってしても、解決法が、さっぱり思いつかん……」
学園長が見ているのは、カレンダーだった。
日曜日から土曜日までの、週は七日、一年は三六五日の、『神さま』が使っていた暦をそのまま利用している、カレンダーだった。
毎週水曜日に、赤い丸印がついている。
ちょうど、今日が火曜日なので、明日が、水曜日になる。
「困った、困ったのう……そうじゃ! 彼なら……知力1000000の、シラギくんであれば、ワシの思いつかぬこの問題に、答えをくれるに違いない」
なにせ、知力1000000だ。
わからないことなんか、たぶん、ないだろう。
「誰かぁぁぁ! 誰かぁぁぁ! 緊急事態じゃ! シラギくんを呼んでくれい!」
机に置いてあった呼び出し用ベルをガランガラン鳴らしながら、学園長は叫んだ。
その音は学園中に響き渡った――