1話 天才、入学する
「はうああああ!? な、なんじゃこれは……」
白いヒゲを生やした立派な老紳士が、あられもなく叫んだ。
普通だったら『アホみたいな叫び声だ』と言われそうな感じだったけど、部屋に一人だけだったので、まぬけな叫び声を聞かれずにすんだ。
あるいは、彼は頭がいいので、周囲に誰もいないことをちゃんと考えて、『はうあああ』とか言ったのかもしれない。
だって、『世界で一番賢い学校』の学園長だから、すごく、賢いのだ。
布をいっぱい使った服を着てるし、立派な机と、立派な椅子は、学園長専用のものだ。
持っている杖だって、太くて、長くて、すごい。
そんな彼は、歳をとってるし、立場もあるから、なかなかおどろかない。
でも、ぶったまげた。
学園にそろそろ入学してくる生徒の中に、一人、あきらかにヤベーのがいたからだ。
「シラギ・ユータ……知力のステータスが……1000000……!?」
世間の平均が20ぐらいで、この学園だと、40~60ぐらいだ。
1000000とか、見間違いかと思って、五回ぐらい見直した。
でも、見間違えとか、誰かがイタズラで『0』をいっぱい足したとか、そういうことはなさそうだった。
学園にとって、入学生は大事だ。
大事な入学生のプロフィールを記した大事な資料なんだから、大事にされてるのだ。
「知力1000000……世界最高の知力を持つワシの一万倍……いや、ちょっとワシの知力を多めに見積もって、九千倍ぐらい……これは、一度会って話をしてみる必要がありそうじゃのう」
なんかそうしたほうがいい気がしたのだ。
具体的に、なぜここで『知力高い。話してみよう』となったか、説明を求められると、ちょっと困る。
でも、学園長は自分の賢さを知っていた。
だから、賢い自分がポロッと口からもらしたアイディアは、とても素晴らしいものだと思った。
「おい、誰か! 誰かいるか! 誰かあああ!」
机に置いてある『呼び出し用ベル』をガランガラン何度も慣らす。
その鐘の音は学園中に響き渡った。