第9話 旅行1 ④ 村人たちの威嚇襲撃
その曰くのある橋はーー《イキバシ》と言った。
「かやの殿! すごい迫力でござるなぁ~~!」
「……そんなに感動出来るのは今のうちだけだぜ」
真剣な表情をするかやのに。
バン!
「った! 何をすんだよ! お前は!」
「肩の力を抜くでござるよ。かやの殿! リラックスでござる!」
「--あァ?」
目を細めるかやのに、
「下手に力んでも、いいことなど起こる訳でもなし」
そう、すみ田も言う。
「ーーよくないことも起こり得るでござるよ」
「! ぁ、ああ! 分かってるよ!」
「だから。拙者はお主の傍から離れぬでござるよ」
「‼ ぁ、ああ! っそ、そうだな‼」
きゅ。
きゅきゅんンん♡
(やばい! 何なんだ! この胸の動悸わっっ!?)
バクバク。
バクバクバクーー……。
「? 如何されたかな?? かやの殿???」
「っな! なんでもねぇし!」
「? む。そうでござるか」
真っ直ぐにすみ田は、橋の入り口を見た。
そこには錆で覆われた門があった。
錠もされている、のだが。
「っじゃ、じゃー~~ん!」
かやのが針金を取り出した。
太陽の光に、それも輝く。
「錠外しとは。まるで泥棒の如くでござるな」
「仕方ない、じゃ……っへ? え」
ギィイイっっ。
錠がなくなりーー錆びていた扉も。
真新しいもののように変わっていた。
「どうやら。拙者たちはーー招かれたようでござるな」
強張ったすみ田の言葉に。
かやのは返事をしなかった。
ただ。
ただ。
起こったことに驚きしかなかったからだ。
次いで来るーー恐怖に。
生唾を呑み込んだ。
ごきゅ!
「かやの殿」
「! っふぁ、ォ、おう‼」
「前に進むでござる」
勇ましくも、すみ田は前へと。
足を踏み出した。
「拙者は解せぬことは嫌いでござる!」
「止せ! 行くなァああっっ‼」
「「?!」」
背後から怒りの籠った声が。
罵声のようなものが背中越しに吐き捨てられた。
すみ田も、かやのも振り返った。
そこにはーー村のにんげんらしい男たちが立っていた。
「……一体。何故そのようなことを申されますかな?」
「《イキバシ》に入っちゃなんねェ!」
「この村に災いを起こすべ!」
「守り神にも怒られるぅ!」
訛った言葉で、彼らは切々と言う。
しかし、言われれば。
言われるほどに。
「……何故。そのような凶器をお持ちでござるか?」
手には猟銃があった。
「何故って。そりゃあ!」
「「お前らを殺すためだァ‼」」
ドン!
ドドン‼
「っく! このォおお‼」
すみ田は腰の刀を鞘から抜いた。
そして、弾丸を真っ二つにした。
それに、男たちもたじろいだ。
「それで仕舞いならば! そのまま変えられるがよい!」
刀を勢いよく振るった。
「「「っひ‼‼」」」
男たちは尻もちをつきながら。
走り去って行った。
「ほら! ほらな! この中に何かがあんだよ! ふふふ!」
にこやかに、かやのが進んで行った。
「待たれよ。かやの殿!」
次いですみ田も走った。
すると、どうだ。
門がゆっくりと閉まり。
またしても、錆のついた門に戻っていた。