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第5話 さぁ! 始めよう!

「本当に、拙者が行ってもいいのでござるか?!」


 駕籠に乗り、扉を開けたまま。

 すみ田が聞き返した。


「よいよい! 好きなだけ羽を伸ばしてくるがよい!」


「たかだか。五泊六日程度ではありませんか。兄上様」


 すみ田は今から。

 不安に襲われてしまう。


「……五泊六日……」


 愉しめるか。

 不安しかない。

「絶対に五泊六日を遂行せよ! よいな、すみ田‼」

 腕を組み、すみ田を見下ろすしげ洸。


「っは! 仰せのままに」


「うむ! でな、その……すみ田??」

「? え?」


 しげ洸が膝を折り、すみ田の耳に囁いた。


『よい。毛生え薬があれば即買いじゃ! よいな?!』


 きょとんと、すみ田もしてしまう。

 その様子に、何かを察したのか。


「兄上様。お土産を、一同楽しみにしていますから」


「!? ぁ、ああ! 分かってるでござるッ‼」

 少し、焦りながらすみ田も言い返した。


「ならば! 発進じゃ! さらば、すみ田!」


 ばっしーーんッッ‼


 しげ洸が勢いよく駕籠の扉を閉めた。

「ぁ、ああ~~なんで、こんなことになったんでござるかぁ~~??」

 すみ田は両手で頭を押さえながら。

 悶絶していると。


 す、っぱーーんッッ‼


「へ?」


「駕籠で行くのは駅までじゃ! 駅よりは《奇機車オートラル》に乗り継ぎじゃぞ!」

「??‼ え、拙者はどこまで行かされるんでござるか!?」

 少し、顔を歪ませるすみ田の様子に、

「他の者が言ったのじゃ。近場だと、お主が戻って来るとな! それにはこ暮も同意しておったが」

 満面の笑顔で、こ暮を指でさし、さらに続けた。

 すみ田がこ暮を睨むも、しげ洸に頭を平手で叩かれてしまう。

「よって。遠くの有名な戻って来れないような場所を選んだのじゃ!」

 ついに。

 すみ田が手で顔を覆ってしまう。


(虐めではござらぬか?? これは)


「さ! 行き去るがいい! すみ田ッ!」


 ばっしーーんッッ‼


 そして。

 駕籠が動き出した。


 ゆらゆら。


「駕籠、でござるか。意外と中はしっかりとした作りで」

 ぺたぺた、と。

 すみ田が関心しきりに、当たりに触れた。


『触るな! 触るな! 無礼者が‼』

「?」

 駕籠の中に声が響いた。

 すみ田も見渡した。

「誰も、らぬでござるな」


『儂は、この駕籠の付喪神じゃ! 敬意を払わんかい!』

「ふむ。安いだけあって、これが憑いていたでござるな」

『長い道のりじゃろ? 儂が話し相手になーーおい!』


 ずる、りーー……。


 すみ田は寝入ってしまう。

 気が緩んだからだ。


『寝んなァ~~! おいっ! コラ~~?!』


 ◆


 ガタン。


 ガタタンーー……。


「はは。ぐっすりのご様子だなァ」


 クスクス、とすみ田を見る影があった。

 すみ田は長い座席に座っていた。

「これが俺様の次の玩具って訳、ね?」

 向かい合ってにいる男が


 楽しそうに手を叩く。


「ダメだ。今回はわらわたちだ!」


「はァ?! 出しゃばって来んなよ!」

「散々、遊んでおいて。まだ、満足しないのかと僕は言う」


「満足?? するわきゃないっしょ? クラリス坊や?」


 睨み合う男とクラリス。


「いいから! 妾たちに寄越せ! 灰にしてやろうかぁ?!」

「返り討ちにしてやんよ? 出口のようにな!」


 ここはーー《御霊特急ミタマファーレ》なる輪廻転生便。

 場所はー《連鎖の揺り駕籠》なる絶対領域。


 彼の名前は。

 江頭保と言った。


 クラリスと江頭が罵り合う中。


 --よしなさいって。私たちが巻き込んでいい人間じゃないでしょ♡


 スピーカー越しに、優しい声が響き渡った。


「なんだよ。手前も参加するってのかい?」


 --そうだね。君たちが、彼で言い争う原因になるくらいなら、私が預かるよ♡


「あー~~つまんねェ~~つまんねェ~~‼」

「ふん! 行くぞ! クラレント!」

「くっそー~~あの野郎っっ‼」


 そう激昂しながら。

 三人はすみ田から離れて行った。


「本当に。厄介な人間だ」


 ずり下がってしまうすみ田に。

 彼は横に座り、膝に頭を置いた。

「だが。いい旅路を、伊井すみ田君」

 そして、優しく髪を撫ぜた。

 彼の加入により。

 この先すみ田は安全ではないものの、生きて旅行に行ける。

 その事実を。


 これからも。


 この先も。


 伊井すみ田は知ることはない。


 彼の名はーー魔術師オーウェリア。

 すみ田の友達。


「さぁ。始めよう! 伊井すみ田君!」

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