第41話 旅行2 ⑨ すみ田の意志
「如何するでござるか! 首なしの神よッ!」
再度。
すみ田は《首なしの神》に説いた。
すると。
すみ田が抱くーー首が息をした。
ひゅ、ぅ゛う゛うう゛!
「!?」
『我が身を別れさせた不届き者が何を言うか』
「喋るのでござるか、お主は」
『神を侮るのは愚かな人間の性なのだな』
すみ田も抱き締める顔を正面に向け。
両手で強く挟んだ。
『っだ! だだだだだッッ‼』
「このまま! 斬り捨ててもいいのでござるぞ?!」
『この! 罰当たりが‼』
「とっくに! 拙者は《罪人》でござるッ‼」
頭とすみ田が睨み合う。
「ぇ、っと……いい~~かなー~~??」
手を低く上げながら、叶多が声を上げた。
「む? 如何したのでござるか? 叶多殿??」
「ぇっとー神、様っすよねーあんたは」
『あァ゛! 貴様だ‼ 儂の首をはねたのはッッ‼ 不届き者がァ゛あ゛~~‼』
一歩後ろに叶多も下がってしまう。
それを横目に。
「僕たちの呪いは解けないですか?!」
真が鼻息荒く訊ねた。
「--と言う要件でござる!」
頭は大きく。
わざとらしくため息を吐いた。
『神は神の領域に踏み入れることも。相手に関わる真似も禁止されているのだ』
浅ましい二人に。
呆れてしまっているように。
『神罰を受け入れ。そのまま天寿を全うするがいい』
「「…………」」
『儂からはそれしか言えぬ。ほれ、頭を返せ』
ガチャ!
すみ田は黒鉄をーー《黒天重銃》の猟銃に姿を変えた。
「--《経文結界発動》‼」
二重三重と魔法陣を浮かばせ。
閉鎖された空間を生み出した。
ジャキッッ‼
『っき、貴様ァァアアッッ‼』
首なしの神の身体が。
息もつかせずーー腕を伸ばし。
顔を装着させた。
姿が神々しくーー牡鹿の姿に変わった。
そして、神の回りに。
空間を歪ませる半透明の物体が在った。
「‼ っが! っごっほ! っごっほほほッッ‼ っく‼」
黒鉄の姿を変えたことによって。
すみ田は突然として咳き込んでしまう。
止まることのない咳。
口元を覆い、身体も激しく動いた。
『何だ! 貴様も‼ っふ、ふぁー~~っはっはァ‼』
弾!
『!?』
放たれた弾が。
牡鹿の神の角に当たった。
当たった角も、勢いよく弾き飛ぶ。
「--次は……何処を射抜かれたいでござるか?」
口元から夥しい血を流し。
すみ田はにこやかに訊いた。
間。
「また兄上様は戻らないか……」
部屋で正座しながら本を読みながら。
こ暮がため息を吐いた。
「兄上様ー戻らないー?」
舌足らずにそう訊くのは。
すみ田の愛児ーー椿姫だ。
彼女の成長は目まぐるしく。
あっという間に。
こ暮と同年齢の容姿になっていた。
「不穏なことを言うもんじゃないぞ。椿姫」
「でもー城の皆ー言ってるよー~~?」
「……聞き流せ」
「んー~~それはたま万呂も言ってたー」
たま万呂と言う言葉に、
「ふん。アイツは兄上様が大好きだからな」
こ暮の眉間にしわが寄る。
「べっっっっつにー~~そういう感情はないでー? 僕ー」
《奇機伝人》を持ったたま万呂が。
部屋にやって来た。
「何しに来た。オラに何か用か?」
怪訝な表情になったこ暮に。
「自分の大好きな兄上様と連絡とれんようになってもぅたでー?」
ポイ! っと放り投げた。
そして、胡坐を組んだ。
「僕もー行くべきやったかもしれんわー」
顔を手で覆い隠すたま万呂に、
「--何を……言っているんだ。君は」
状況が飲み込めないこ暮が訊き返した。
「兄上様は……君がーー力を封じたんだぞ?!」
「ああーそぅや。僕はすみ田に制御をしたんや」
「一体! 何処に行ったんだ‼」
間。
「拙者は罪人。いまさらーー神殺しも恐れないでござる!」
ガチャリーー……。
猟銃をすみ田が抱え直した。
生き詰まる光景に。
叶多と真も目を反らすことも出来なかった。
次回、多分最終回。




