第39話 旅行2 ⑦ 異世界の冒険者たち
斬!
「!?」
「すみ田……お前」
斬‼
黒鉄を鞘から抜き。
辺りの木を伐採し、
「これで! よし‼ でごっざーーるぅうう‼」
首なしの神の足元に巻いた。
その隙に、叶多も真も這い出た。
「った、助かったー~~‼」
「おいおい! 助かったわけじゃねぇよ! 馬鹿真ッッ‼」
はー~~……。
はー~~……。
黒鉄を抜いたすみ田は肩で息を吐き。
腕を震えさせた。
「大事ないでござるか?! お主たち‼」
顔には大粒の汗を浮かばせながら。
そう訊いた。
「ァ、ああ! 怪我はねぇ!」
「あ、有難う! すみ田君‼」
二人の言葉に、
「うむ! 分かったでござる!」
すみ田も頷いた。
(っく! 思いのほか、疫の回りが早い!)
歯を噛み締めながら。
すみ田は首なしの神を見上げた。
「--……神!」
口元はーー笑みにつり上がっていた。
「神が人間を殺めようとは! 何事でござるかァアアッッ‼」
黒鉄を首なしの神へと向けた。
「すみ田! 俺も参戦するぜ!」
「要らぬ。邪魔でござる!」
「邪魔だァあ?! これでも、そんなこと言えるのかよ‼」
ピン! と叶多が自身の耳のピアスを抜いた。
瞬間にして。
人間の姿だった彼がーー獣人の姿へと変わっていた。
「俺も呪われた人間だって言ったろォ? これよ、これ!」
その姿は真よりも、獣の姿だった。
「俺だって! 牙はあるんだよ‼」
勇ましい叶多とは対照的に。
木の影に真が隠れて見ていた。
「叶多~~ぅ」
「そこに隠れてろ! 真‼」
「ぅ、うん!」
カタカターー……。
地面に落ちた桶が大きく揺らぐ。
首なしの神が動く度に。
ガッタン! ガッタン! と揺れる。
桶の蓋も浮かび。
中から紫の液体が溢れ出ていた。
真の目にそれが映る。
「--ッッ!」
咄嗟に、ぶぢゅ! と蓋を開け。
首なしの神の《首》を取り出した。
「叶多!」
「何だよ! 真~~っておい! おいおい?!」
首を抱える真に。
叶多もビックリした表情を向けた。
「馬鹿真‼ 桶に置け‼」
大きな口を開き真を罵倒した。
「いや! そのまま首をこちらに!」
「うん!」
首を抱えながら真はすみ田へと駆け出した。
しかし。
首なしの神と会ったことにより。
《首》も大きく口を開けた。
共鳴するかのように。
「嬉しいか。そぅか、嬉しぃでござるか」
すみ田はしゃがみ込み。
その首へと腕を伸ばした。
「では。戻してやるでござるよ」
--待ちぃ、待ちぃやー自分! 待てやァー
「?! たま万呂殿、何でござるか?」
--自分。刀ぁー鞘に戻しぃ。
《奇機伝人》から発せられるたま万呂の声が。
強張ったものなっていた。
「--……大事ないでごっざ! ごふ! ごっぶ、ぶぶ‼」
否定しようとしたすみ田の声が。
咳によって歪み、声に形を失くした。
止まることのない咳。
「っごっふ! が、っはァああッッ‼」
口から血が。
またしても零れ落ちた。
「っふ! っふ、ぅ゛う……」
口腔に広がる鉄の味。
痛む喉元に、何とも言えない腹の痛み。
--ほらなぁ? 自分、すみ田ぁー無理はアカンでぇ? 自分死んだら椿姫も悲しむしなァ。
「椿姫……今、何をして居るでござるか?」
ーーこ暮と寝とるよぉー? 今、夜やさかい。
(夜????)
すみ田は宙を見上げた。
ここはーー天に太陽が高らかにあった。
時刻は昼だ。
--そこォ。日本やないやん。
すみ田の驚きの顔に、たま万呂が言う。
--自分、旅行て。時空超えてんやで? 分かってないやろ?
「ごっふ! ゃ、な……ごほほほほほッ!」
言い返そうにも咳が止まらない。
乱発してしまう。
--ちなみにぃーこの時点でもう、四か月やで? 嘘やないで?
たま万呂の言葉に、すみ田は混乱してしまう。
だが。
「た、とえ……そぅであろうとも! 拙者には!」
たどたどしい口調で、すみ田も言い返し。
「やらねばならぬことがある!」
--何が! 自分にそう突き動かすんや! 莫迦やないかァ!? 自分ンんンッッ‼
「人間の後始末は人間がせねば! 新たな疫神や厄神が産まれてしまうでござる‼」
--自分が! 第三者が口だすなやぁアアッッ‼ ボケがァアアッッ‼
声を荒げながらたま万呂が言えば。
すみ田も声を荒げて言い返す。
「「…………」」
叶多も真も、見守る他がないのだが。
そうも言ってはいられない。
依然として、首なしの神が居るのだ。
黒鉄を地面に刺し、すみ田が立ち上がった。
「莫迦だの! ボケでも! どうとでも呼ぶがいい!」
口元の血を拭き取ることもせず。
「拙者は! この者たちを救う‼ っで、ござるぞォ‼」




