第13話 旅行1 ⑧ 今、そこにある喜々や危機
ひゅうぅううう……。
《イキバシ》の中には冷たい風で吹き荒れていた。
「ぅ、むむむ」
それにすみ田も、身震いをしてしまう。
しかし、すみ田よるも薄着のかやのは。
至って、そんなそぶりを見せなかった。
(拙者の鍛錬不足でござるか)
そうすみ田は頷きつつも、
「くっしゅんンんっっ‼」
大きくくしゃみをした。
そんな様子のすみ田に。
「何? 寒いのか?」
少し、半笑いにかやのが訊く。
すみ田も鼻先に指をやりながら。
「大事ないでござる」
むくれた表情を見せた。
ここはーー《イキバシ》なる神が創りし場所。
多くの理由を知らずに、人間は《試練の間》として長く。
そこを使っていた。
《贄場》として、影の場でも兼用されて。
真っ暗な中を《経文陣》で明かりを灯していた。
それだけでも、中にいる恐怖も和らいでいく。
しかし、依然としてーー真っ直で。
「お主。この《イキバシ》に……何度も、来て居ろう?」
「ああ。誕生日にゃ、いっつも来てるぜ。よく、分かったなぁ♪」
「手慣れて居るように見受けられたでござる」
「そっか。失敗失敗♪」
パンパン! とかやのは手を叩いた。
その様子に、
「拙者に、何をさせたいのでござる?」
すみ田が、神妙な面持ちで訊ねた。
「それはおれが言うことじゃないんでね」
しかし、かやのは素っ気なく言い返した。
すみ田が立ち止まった。
「? あ、何?? 怒っちゃったの?」
かやのも立ち止まり。
少し、後ろに居るすみ田に声をかけた。
「だって。そうじゃないか」
「……--その蜂の女王は、どこに囚われて居るのでござるか?」
「真っ直ぐだよ。真っ直ぐ!」
かやのは腕を前に振った。
すみ田も目を細めた。
「拙者は休暇で来たのでござる」
「ああ。これが終わったら《苔渚温泉》に連れてってやるってば!」
喜々としてかやのも言い捨てる。
すみ田も納得はいかないものの。
この状況が状況では、従う他ないのも事実で。
「はァ」とすみ田もため息を漏らした。
とぼとぼ、と歩きながら。
「やはり。恐ろしいのは人間なのでござろうなぁ」
小さく、そうボヤいた。
「へ? てか、おれ人間じゃないし」
かやのは頬を膨らませながら、すみ田に言い返した。
「勘違いしないでよね!」
「うむ。鬼人であったでござるな。お主は」
「ああ! そうさ、鬼人さ!」
「化かされて居る気分でござるよ」
「! っと‼」
「む?? 如何さーー……れは」
かやのがすみ田の身体を、腕で制止させた。
目の前には糸が光っていた。
「その糸に触れたら」
首に手を横にやった。
「……--何かが、居るのでござるか?」
「ああ。そうだ」
すみ田は糸を端から、端まで見た。
形状は一定的だった。
まるでーー蜘蛛、そのもののように。
ぶわ。
ぶわわ!
「--……蜘蛛で、ごじゃるか????」
すみ田は、泣き声で訊き返した。
「蜘蛛。そうだね、それそれ!♪」
喜々として、かやのはすみ田の肩を手で叩いた。




