第12話 旅行1 ⑦ すみ田と罠
《イキバシ》の中は石畳で。
一本路だった。
そこを真っ直ぐに、二人は歩いていた。
「ときに、かやの殿」
「? 何だよ、すみ田」
「お主は一体何歳なのでござるか??」
ばっこーーーーん!
「!? ぁ、だァああ???」
「女の子に、年齢を訊くとはいい度胸だな!」
「……う、うむ」
あまりの剣幕に、すみ田も引いてしまった。
叩かれてしまった頭を、手で擦りながら。
「済まぬで……--かやの、殿?」
「? ああ」
正面には明らかなものがあった。
罠らしいものが。
「ときにかやの殿」
「? んー何だよ」
「お主は……何万回、ここに来て居るでござる?」
「……何万回じゃないし! 本当に失礼な奴だなァ」
「その際。罠をどうされて居る?」
淡々と訊くすみ田に。
「そりゃあーお前、強行突破に決まっているっしょ♪」
横目に、かやのが微笑んだ。
幼女に近い容姿だが、彼女は鬼人。
すみ田よりも、浅葱に近い年齢だ。
「ふむ。それもそうでござるなぁ!」
「だっろぉー~~‼」
路の真ん中にあったのは。
狗の顔と人間の上半身の石像。
目が真っ直ぐに、二人を射抜いていた。
「お主の真似をして行くでござる!」
「あんまり期待しないでよねぇ!」
勢いよくかやのは奔り。
石像の脇をすり抜けた。
次いですみ田はーー足の裾を踏んでしまい。
ずっこけてしまった。
ずしゃッ!
「あ! おいッッ‼」
すみ田も、思いもしないことに。
その体制のまま、頭の中が真っ白になってしまう。
「おい! 早く、来いって‼」
大きく腕を振りながら、かやのが言うのを。
すみ田は視ながら、視界に映る石像からも目が離せない。
「--これは……何たる失態でござるか」
すみ田は、失笑しながら。
小さく、そう漏らした。
それは。
一瞬の勝負だった。
「一回だけの正面勝負でござる!」
掌を石畳につけ。
「ーー《経文陣》 攻撃無効化ッ! 序の口ッッ‼」
円が大きく広がり。
経文字が渦を巻き。
「《ミイラ縛り》ッッ‼」
石像を括りーー縛った。
「よし!」
すみ田は強く頷き。
かやののように石像の横をすり抜けた。
ゆっくりと、歩きながら。
「ふぅ」
「ふぅ……っじゃ! ないだろぉーーうがぁ‼」
ばっこーーーーん‼
「ぁ、だァッ!」
またしても、さっきと同じところを殴られてしまい。
すみ田も、一際高く声を上げた。
「かやの殿! いい加減に叩くのは止して貰いたいでござる!」
「こっちは心配したんだよ! ったく~~っ!」
「……うむ。それは、済まぬでござる」
「あー~~もういいよ! いいよ! さ、行こうぜ!」
大きなため息を漏らしながらかやのも。
手を振った。
「そうでござるな! 参ろう!」




