第10話 旅行1 ⑤ 気になる噂
「あの村人たちは一体なんだってござるか!?」
少し声のトーンを上げながら。
すみ田はかやのに訊ねた。
「さぁ? おらに訊かれても分かんないぞ!」
「左様でござるか」
少し、口許を突き出しながら。
そう、小さく言った。
「しかし。解せぬでござる」
「? 何だっていいさ! この《イキバシ》を進もうぜ!」
そうにこやかに、かやのは腕を宙に伸ばす。
「かやの殿! あまり安易な行動はしてはならぬでござる!」
「!? ぇ、え?? 何でだ??」
「何があるか分からないからに決まって居るからでござる」
そう言うとすみ田は腰の鞘を腰から抜き取り、地面につけた。
タン! と。
「《経文陣》発動‼ 提灯白夜型ッ!」
二重三重、四重に陣が浮かび上がった。
「《鬼火》」
ダッッッッンッッ‼
強く、地面に押しつけた。
すると、どうだ。
赤い鬼の型をした何かが、溢れ出た。
瞬間。
内部に灯りが点いた。
「ォ、おおう! 一体、お前は何をしたんだよ‼ 雰囲気が台無しになったぞ!」
「拙者はこの術が得意でーー台無しとはなんでござるか! 台無しとは!」
「暗くて、じめじめしてさ! 先が読めないのが通じゃないか!」
すみ田の目も細まっていく。
「通じゃなくてもいいのでござる! さ、行くでござるぞ!」
ひゅん。
そして、赤いものがすみ田の周りに浮いていた。
「それ、何?」
「これは《精霊》でござる」
「??? っへ、へー~~」
かやのがそっぽを向いた。
苦笑しながら、すみ田も前を見据えた。
奥からはーー冷たい空気が溢れ出ていた。
(いや。これたただの空気ではないでござる!)
「あ。そだ! 忘れてた忘れてた!」
「? 何をでござる????」
「《決して、振り向くことなかれ》だよ。すみ田」
その言葉に、すみ田は立ち止まる。
「振り向くこと、なかれとは……一体????」
「言葉のままだよ。すみ田」
「いや。言葉のままとかではなくでござるよ?」
「前だけ向いて歩いて。この《イキバシ》を突き進むんだ」
「……しかし。出口がーー」
「噂じゃ。《イキバシ》の途中で抜けられる橋ーー《モドリバシ》があるんだってさ!」
「ぅ、噂????」
かやのが言う、全ての言葉に。
すみ田も、不安が増していく。
しかし。
《イキバシ》に入ってしまった以上。
引き戻ることは、振り返ることを意味をする。
掟を破るということだ。
「では。その噂の話しを、もっと訊きたいでござる」
「? いいけど、どんな話しをだよ」
すみ田は言う。
「村の、この《イキバシ》の噂話。その全てをでござる」




