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アクアリウム

作者: 玖波 悠里

いつの頃だったか、家の周りの街灯が一斉に青に変わった。犯罪の抑止だとか、確かそんな事だったと思うのだけれど、詳しいことはよく分からない。

夜景の中の一欠片としては、とても綺麗なものだが。


家路の途中の暗い闇の中に、薄ぼんやりと街灯が青い光をアスファルトに落としているので、青い柱がいくつもたっているように見える。

夜の住宅街は静まり返って、足音がよく響いた。風の吹かない夜は、何も動く物がなくて、どことなく、私を不安にさせる。

こつ、と青い光の柱の横を踵の音を鳴らして通り過ぎようとした時、ふいに視界の端を何かがよぎった。青い光の中が揺らめき、その揺らめきは波紋のように広がって、青の光と闇の境目で、ぱしゃんとはじけた。音もないのに、そんな気がした。

青の光の雫は闇の中で煌めいて、あっという間にアスファルトに溶けて消えた。

驚いて、その青い光の中に目をやると、青くて少し暗い光の中で、薄墨を溶いた様な影がふうわりと泳いでいた。その影はよく見ると、魚の形をしていて、青の中を光のしぶきを飛ばしながらゆっくりと上へ、下へと泳ぎまわっていた。影の魚が、青い柱の中をくるりくるりと回っている様子は水族館のようだった。

蛍光灯の青い光の奥は一体どうなっているのか、見当もつかなかったけれど、その景色は実に幻想的で、私を不安にはさせなかった。あちこちの街灯の青い灯りの中できっと影の魚が泳いでいるのだろう。

静まり返った住宅街の一角を通り過ぎながら、ふと、目を閉じる。どこからか、潮騒の音が聞こえてくるような気がした。

あの、青い光の奥は、どこにつながっているのだろう。


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