おいしい水
長らくお待たせいたしました。
まだ子供な樹里ですから、彼女の物語はこれからも続きますが、物語はこれにて一旦閉じさせていただきます。
2/12現在で累計で約4.6万、ユニーク1.2万もの方々に読んでいただいてとても嬉しく思います。
また総合評価186ptもいただきありがとうございます。
ご愛顧いただき、ありがとうございました。
短いですが、お楽しみください。
月遅れのお盆が過ぎ、北の街に吹く風が急に涼味を交えるようになった。
気の早い秋桜がまだお日様に向かって頑張るひまわりの横で見られ、南から来る観光客の中には薄物を羽織る姿もあった。
本州の小学校とは違い、夏休みもそろそろ最終コーナーを抜けて追い込みがかかる頃、ゆりかは母親や友達たちと一緒に新千歳空港の四階にある展望デッキで西へと旅立つ飛行機を見送った。
小さな肩を落とした少女たちは青い空に飛行機が溶け込むまでその場に残っていたが、親たちに背中を押されて屋内へと戻った。
北の地の荒々しい山並みとは違い、穏やかな峰に囲まれた盆地は蓄えた熱をなかなか離そうとはしない。
歴史ある町家が軒を連ねる小路の石畳は夕立後の涼風が町家の二階のすだれを揺らしていた。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……
「あれっ? あっ……ちがうのかな。こっち、だと思うんだけど……」
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……
塗下駄の底に歯ではなく、ヒールがついたソールに朱色の帯のように華やかなストラップに素足をつっかけて、まだ幼さが残る華奢な両足が石畳にできた水たまりも気にしないでかけて行った。
「Wow !」
「すんましぇん! っと、ソーリー?」
ラフな服装にバックパックを背に、ビデオカメラを手にした大柄な外国人男性とレンタルの浴衣をまとった男性と同じ国らしき女性がをかすめて、元気な声で謝ると、二人は笑顔で手をふった。
すらりとした腕を大きく降って応えて、腰に大きなリボンのついた細いストライプのキャミワンピースの裾を揺らしてまた駆け出した。
朝顔や植木が置かれた細い路地の石畳は規則的に大きな石が敷かれている。
ケンケン、パッ! ケンケン、パッ! ケンケン、ケンケン……
「あっ…… ぬけちった。ほんなごつ、どこなの?」
ため息交じりにひとりごち、足を止めた。
と、大きなバリトンが町に響いた。
「ジューリーッ!! じゅりーっ!! 」
「あっ!!」
声のする方に振り向き、また駆け出した。
路地を抜け、小路に出た。
夕立ち明けの赤く照らされた古都の町並みに大事な人が立っていた。
「あなたっ! いたっ!!」
「樹里!! 」
カランカランとサンダルを鳴らして、樹里はスピードを上げて耕助に向かって飛び込んだ。
「見つけた!!」
2015年10月に投稿をはじめて、こんなに時間がかかるとは思いもしませんでしたが、物語の中ではちょうど一年経ったくらいです。
樹里が北の地で過ごした一年を通じて、この国でもちょっと毛色の違う土地柄を感じていただいてくださったなら幸いです。
「小説家になろう」様の中ではいわゆるテンプレ作品と呼ばれるファンタジー小説とは違う系統ですし、まえがきにも書かせていただきましたがこの2年半でたくさんの方に読んでいただきありがとうございました。
ランキング常連の方々や野望を抱く方々にとってはささやかな数で、いわゆる底辺と呼ばれるのかもしれませんが、リアルを考えると4万回以上もお目にしていただけているという機会はそれほど多いとは思えません。過分の評価をいただいたと素直に感じています。
なかなかお話の更新ができなかったことは申し訳ありませんでした。
言い訳がましいのですが、エッセイにも少し書きましたが、わたしの生活がかなり変わってしまったために、執筆する心身的な余裕ががが……
気分転換と衝動に駆られて他の物語にも手を出してしまいましたが、エターナル空間に入り込んでしまった作品もあり、心苦しいです。いつか続きを書きたいなと思っています。
夜寝る前にベッドで色々な物語の妄想をしています。
それを形にできたらいいなぁと思っています。
ついでに小説家(在宅ワーカー)になれれば、なんてね。
実際にデヴューされた方々は大変そうですよね。
では、いつか、また。違う作品でお会いすることを楽しみにしています。




