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夢と現実

結衣ちゃんはカバンからハンカチを出して景ちゃんに渡した



「ごめん

元彼のこんな話聞きたくないよね」結衣ちゃん



景ちゃんは首を横に振って



「違うの

・・・彼・・・今

私は彼と今・・・付き合ってる

彼の奥さんの感は当たってて

彼と私は不倫関係なの」景ちゃん



私と結衣ちゃんは言葉をなくした

どういうこと?



景ちゃんに聞こうとしてもどう聞いていいか分からない



すると

景ちゃんは話し始めた



「去年

彼の生徒さんがうちの病院に怪我で入院してたの

今もサッカー部の顧問をしているらしくて

その子は部活の生徒で・・・

お見舞いに来た彼とそこで再会した



久しぶりに会った彼は以前と変わらない優しい笑顔で



「懐かしいなぁ

元気だったか?」内田先生



って普通の卒業生と会った時みたいに話しかけてくれた



私は嬉しかった



元彼に再会したというよりは

恩師に再会した様な気持ちだった



だからその後

食事に誘われたときも何も戸惑いはなかった



食事をしながら今と昔のサッカー部のこと

懐かしい人たちのことを楽しく話した



彼は自分を「先生な・・・」って言ったから

私も付き合っていた頃に呼んでいた様には呼ばずに

「内田先生」って呼んだ



私達が交際していたことはなかった事のように全く話さないで居た



だから

教師と元生徒

という設定で懐かしく楽しい空間を作っていた



帰り際

名残惜しかった



タクシーに乗せられて



「これで送ってください」内田先生



彼はタクシーの人にお金を渡してドアを閉めた

なんだか淋しそうな表情をした様に見えた

私はそれが気になって



車が動き出すと彼は手を振って見送ってくれた

私は振り返って彼を見たけど

やっぱり何か気になった



私は何か忘れ物をしたような気持ちになって直ぐにタクシーを止めて彼の元に戻った



彼は私が走って戻ってきたことに驚いてキョトンとしてた



「違うでしょ!

私達は違うでしょ!

再会してこうして楽しく食事して

教師と生徒としてだけじゃないでしょ?」景ちゃん



そう言って抱きついたの



どうしてそんなことしたのかわらない



ただ

そのままサヨナラするなんて違う気がした



再会は何か大きな意味があるって・・・そう感じたの」景ちゃん



「っでその日によりを戻したの?」結衣ちゃん



「そう



彼が結婚したことを聞いたのは

しばらくしてからだった



きっと後ろめたかったんでしょうね



だけど私はそれすら愛おしく思った



顔も知らない

どんな人かも知らない

そんな奥さんのことをリアルに考えることはなかった

だから

不倫関係に罪悪感はなかった



それから週に一度か二度

私の部屋に来るようになった



一緒に夕食を食べて

一緒に過ごして

一緒に眠って



24時を過ぎる前に帰っていく



私は眠った振りをしていつも見送って・・・



何か悩んでいるようだけど

聞くと複雑な感情になるから・・・聞かないようにしていた

そういう類はわずらわしいから



お互いに大人として再会して

以前付き合っていた頃の様な青い気持ちではなく

冷静に純粋に労わり合う関係になれていた



ただ不道理な関係だけど」景ちゃん



「先生・・・奥さんと別れて景ちゃんと結婚したいのかな?」礼



「どうなの?」結衣ちゃん



「ないと思う

そんな話したことないし

今だけしか見ていないから・・・私達

愛し合っている想いあっているただそれだけ



さっきの結衣ちゃんがした奥さんの話聞いてて思った



彼は私のところに癒されに来ているんだって



現実のように

生臭く苦しく辛いことから

一瞬

逃げてきてるんだって・・・わかたった」景ちゃん



「景ちゃんはそれでいいの?」礼



「結婚願望ないしね

だけど奥さんがそんなに苦しんでいることを知ってしまったから

このままではいけないね」景ちゃん



景ちゃんはポロリと涙をこぼした



結衣ちゃんは景ちゃんの背中をさすった

すると景ちゃんは崩れるように泣き始めた

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