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 私はそんじょそこらのお子様と同じく、母親からは「知らない人について行ってはいけません」と習っていたし、事実これを順守してきた。


 むしろ知らない人を連れまわしていたほどだ。


 前に秋葉原に行ったときに会って、メイド喫茶とアニメショップに連れ回した外人さんは、いまごろどうしているだろうか?

「日本人はヲタクがいっぱいデスカ?」

 と聞かれたので

「ええ。日本人は7・5・3歳の誕生日のお祝いでメイド喫茶に行くほどです。」

 と答えておいたが覚えてくれているだろうか?



 外人さんの話はこれからの話に関係ないが、とりあえず私は今まで知らない人についていくことはなかった。子供のころの教えというのは身に染みているもので、大人になってもこれは変わらなかった。そのためこれまでに危ない目にあったことは皆無だった。

 しかし今回はどうかしていた、としか言いようがない。この私があっさりと男の人について行ってしまったのだから。

 全くもって自分が信じられない。どうして疑うことなく稲城翔についていってしまったのか。



 稲城翔が一人で暮らしているというアパートについてから、遅ればせながらそのことに気づき、自らの行動に驚いた。そして警戒心を最大に引き上げずにはいられなかった。


 ああ、どうして稲城翔は私に声をかけたのだろう?

 私はどうなってしまうのだろう?

 初めての事態に怯えるしかなかった。ただただ私は怯えていた。


 が、私は理解した。


 この男がなぜ私に声をかけてきたのか。その目的が分かってしまったのだ。考えてみれば簡単なことだ。むしろこんな簡単なことになぜ気が付かなかったのだろう? 私のような見知らぬ女に、何の目的もなく声をかける訳がないではないか。

 彼がその気なら私も逃げるわけにはいかない。なぜなら私には彼の気持ちを受け止める義務があるからだ。

 そう、彼はきっと……




 私の“UNO(ウノ)神奈川県大会優勝”を妬んでいるのだ!


 そうに違いない! 私が高校生の時に出場したUNOの神奈川大会に彼もきっと出場していたんだ! きっと私を連れ込んだのは、あの時負けたリベンジを果たしたいのだろう。


 その証拠に彼は綱島という男を一人呼んでいた。きっとUNOの人数合わせのためだ。

 私の中ではUNOは4人が最適な人数だと思うが、3人でも支障はないだろう。それならば是非もない。

 ふふふ、私の奥義『7枚同時出し』を見せてあげようじゃないか……。



 だが私のそんな考えは甘いと言わざるを得なかった。3人でUNOをやる、なんてそんな話な訳がなかったのだ。むしろ、どうして私はそんなに平和なことを考えていたのか、と疑問に思えるくらいだ。稲城翔の考えは私には及びもつかなかった。




 彼は妹を呼んでいた!


 ……しっかり4人集めるとは。稲城翔、侮れないな……。


 ◇◆◇◆


「はじめまして、由梨さん。稲城翔の妹の稲城怜(いなぎれい)です。」


 俺は妹を呼んでいた。これこそが俺の言っていた“手”である。男2人に囲まれている栗平さんに安心してもらうためには最善の策だと自負している。

 ちなみに4人でUNOをしようとか思ったわけではない。


「こちらこそはじめまして。栗平由梨です。そうですか……あなたが稲城さんの義妹(いもうと)さんですか……。」

「おい、ちょっとまて! 義理じゃないぞ!? 実際に妹だぞ!?」

「え、腹違いですか?」

「いや、だから普通に妹だって!」

「え!? いまどき妹と血がつながっている物語なんてありませんよ?」


 あるよ! ハーレム計画のやつとか!

 ……まあ、あれも気にしないで攻略してしまう気もするけど。

 あと腹違いでもダメだよ!


「それで翔兄(しょうにい)はどうして私を呼んだの? どうして栗平さんが翔兄の部屋に来ることになったの? それにどうして綱島さんがいるの?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 質問は一つずつにしてくれ!」

「冷蔵庫に入ってたケーキ食べていい?」

「最初に聞くのがそれかっ!?」

「で、いいの?」

「まあ、いいけど……」


 というよりあのケーキは怜を呼ぶための供物みたいなものだ。悪いわけがない。


「稲城、なんで怜ちゃん呼んだんだよ……」

「どうした、綱島。女性なら見境なく声をかけるお前なら、喜びこそしても、そんな風にテンションが下がるなんておかしいだろ? 怜は高校生ながら、なかなか美人に育ったからな。むしろお前なら進んで狙っていくタイプだろ?」

「いや、お前わかってて言ってるよな? 怜ちゃんは……」

「綱島さん! 綱島さん! お久しぶりです! いやー、翔兄からは綱島さんがいるとは聞いていなかったんでびっくりしました! どうですか、私、大人っぽくなりました?」

「あ、ああ……怜ちゃん久しぶり。そうだね、大人っぽくなったよ。うん。」

「ほんとですか! やったー! 私、日頃から頑張ってるんです! 綱島さんに褒めてもらうために!」


 ふふ、綱島、困り果てるがいい……。日頃の恨みだ……。


「あの……稲城さん? これはいったい?」

 おっと、栗平さんにはちゃんと説明しないとな。


「いや、怜は昔から綱島にアプローチし続けているんですよ。」

「えっ! そうなんですか。……でも、綱島さんは乗り気ではないんですか? 怜ちゃん、かわいいですし、綱島さんも女性には積極的なほうですよね?」

「そうなんですけどね。綱島からすると、小さいころから知っている怜に手を出すのは良心が咎めるらしいです。普段女性にアプローチし続けている奴が何を言っているのか、って話ですけどね。」

「綱島にも五分の良心、ってことですかね……」


 栗平さん……。なんですか、その地味にひどい自作ことわざは……。


「それで、翔兄。由梨さんとはどういう経緯で知り合ったの?」

「ん? ああ、スーパーでな、栗平さんが困っているようだったから声をかけたんだ。」


 泣いていたというのは栗平さんの名誉のために伏せておこう。


「私がスーパーで泣いているところを稲城さんに連れ去られたんです。」


 栗平さんっ!?


「翔兄……そんな犯罪っぽいことを……。大丈夫だよ、私も一緒について行ってあげるから。最近の刑務所は、ご飯も結構おいしいらしいから安心して!」

「捕まった後の話!? 違うぞ!? 俺は無実だ!」

「稲城……。ゲームソフトくらいは差し入れで持って行ってやるよ。ハードは無理だけど。」

「嫌がらせかっ! だから違うって……」

「そして稲城さんはこう言ったんです。「俺とリアル人生ゲームをしないか?」と」

「捏造しないでっ!」

「栗平さん、俺とリアル人生ゲームしませんか?」

「綱島は黙ってろ!」

「そんなこと言われても困ります、綱島さん。私、怜ちゃんとならまだしも……」

「栗平さん!? 怜も女子ですよ!?」

「由梨さん、私ならいいよ。」

「怜!? これ以上ややこしくするな! 綱島が好き、って設定がいきなりぶれたら困惑するだろっ!」


 あ、あれ? 怜を呼んで状況を落ち着かせようと思ったら、逆効果になってる? まだ、栗平さんが青梗菜を片手にスーパーで泣いていた理由も聞けてないのに……。

 って、今聞けよ、俺!


「それで栗平さんはどうしてスーパーで泣いていたんですか?」

「あ、はい。実は上司に「ほうれん草を買ってこい」と言われて買い物の最中だったんです」


 そうか、社会人になって「ほうれん草を買ってこい」という仕事を受けるのもなかなかシュールな状況だな。


 ……って、ほうれん草? 彼女がスーパーで買ってきたのは青梗菜だよ……な?

 



 なんか嫌な予感がしてきたなぁ……。

自分で何を書いているのかよく分からなくなってきました。

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