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走り書き  作者: 乾燥用
3/4

病院にて

 腰の痛みがひどくて何日か入院することになった。不摂生が祟ったか、運動不足が祟ったかはわからないが、現に痛いものだから、仕方なく病院に行ってみたところ、そのまま入院する運びとなった。

 私は今の今まで入院などしたことがない。私は極めて健康な人間でもないが、極めて不健康な人間でもなかったから、医者にかかることさえそもそも少ない方であった。しかし、現に入院していることを思えば騙し騙しの生活だったのかもしれないと考えた。

 また近い将来こんなことがあるのかもしれんと考えると、別に入院したところで、とも思った。こんな考えを持つから入院などするのだろうとも思ったが。

 そういうわけで、入院などしたことなど今まで一度もしたこともない私だから、入院する一週間の着替えだけを持って出かける時の心意気は随分気楽なものだった。

 結局のところ、腰痛を治す以上の意義を入院に見出そうとしたら、これで色々と休む都合がついたと思うしかないと考えたものだから、その気軽さがわかっていただけるものかと思う。大分無邪気なものだったと、今になればそう思わざるを得ない。

 それで病院について、病室に案内されて、病院内の服を渡されて、家から持ってきた着替えを病室に置いて、そして渡された服に着替えた。流れ作業であった。こうして簡単に病人が一人出来上がってしまうのだから何だか情けなくなる。自負であるとか、気概であるとか、所信表明であるとか、そういったことを私は尋ねられることなく、こうして私は一人の病人となった。

 実際、私は病人で、入院する前にそう診察もされたはずなのだが、私の意志に反して病人にさせられたという感じが沸いてくる。何故だろうか。

 その後は血を抜いたり、薬を飲んだり色々あって一日目が終わった。夕方から病室に入ったものだから案外時間の進みが早かった。別に何を考えるまもなく眠りについた。

 二日目になった。腰を痛めている私は絶対安静を医者に突きつけられ動くことを禁じられた。ここからが問題である。

 まず思ったことは軟禁という単語である。動かないのではなく、動けない。

 山椒魚を思った。どうすべきかと思った。どうかしてやろう、そうする考えは持っている、だが実際は何も策などはない。その状況に酷似していると思った。

 山椒魚と違って、既に私に至ってはどうしようもないことを悟っていたものだから、どうもこうもなかった。ただただ軟禁という単語が脳の中に垂れ流しで現れるだけである。

 病院でたった二日ぼんやり過ごしただけなのだが、こういう日々が軟禁かとこう考えた。 軟禁という日常では想像しがたい単語の実態はこういうものなのだなと肌身で実感すると、次に、ぼんやりと刑務所で過ごす日々はどれほどのものかと、こう考えた。

 一週間後の未来、軟禁状態のわが未来、こう考えるだけでも屈せし思いがする。半年、一年、三年、五年、時には十年、二十年とそんな長い時間を狭い刑務所内で日々暮らすことを思うと刑務所とは、日頃ぼんやりと思っている以上に刑務所なのかもしれんと、こう思う。

1283字。

大分前に書いたが、お蔵入りももったいなくて上げた次第。

その為800字の制限も吹っ飛んで、内容もいつも以上に尻切れ蜻蛉になった。

よかろうて。

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