街を守っていたと主張する冒険者が追放された話
『もし・・・そこの人・・』
俺は冒険者アレク。
森の中を見回りしていたら令嬢に声をかけられました。
水色の髪、水入りの瞳、水色のドレスで、肌が透き通っていました。
近くに泉があります。
『助けて下さいませ。悪い人族が泉にケガレを投げ入れました・・・』
『どれ、どれ・・・』
泉を見たら折れた剣が捨ててありました。錆びている。かなり古い物か?
『これですか?』
取ってあげたら。
『あああ』
と令嬢は一瞬うめき。汗が滝のように出ました。
『有難うございます・・・お礼に加護を授けます』
『籠?間に合っていますよ』
『ええ、他の精霊が授けたのですか?』
『精霊?』
どうも話が通じません。
『とにかくご令嬢、街までご案内しますよ』
『いいのです。お礼に貴方がいる限り眷属達に街に襲わせませんわ。では、ごきげんよう』
森の奥に消えていきました。
それが二年前です。
ご存じの通り俺はこのままこのバークの街の冒険者を続けました。
先代に認められて出世し。バーク戦闘クラウの代表者にまでなりました。
以来、バークの街を守ってきたと自負しております。
不思議とバークの街は魔物のスタンビートも発生せず。事件は蛇に驚いた村娘さんが腰を抜かす程度の平和な街になりましたね。
・・・・・・・・・
「ですから、私を追放するのは別によろしいですが、今思えば森の令嬢は人外に違いありません。泉に挨拶に行った方がよろしいのではないですか?」
だが、新当主のダニエル坊ちゃんは人の話を聞かない。既に俺が嘘を言っているのだと前提に話をする。
「嘘コケ!追放されたくないから適当なことを言って!サボっていたのは知っているのだ!」
「坊ちゃん・・・本当ですよ」
俺はこの街のバーク戦闘クラウ代表をクビになった。
何故なら、魔物を狩らないからだ。いや、狩る必要はないだろう。
代が変わり。新当主ダニエル様が都から元紅蓮騎士団の騎士を5,6人連れて来た。
坊ちゃんは大の騎士マニアだ。
「我は元紅蓮騎士団一番隊シュリンガーである!」
「「「「シュリンガー様の配下の将校である!」」」
あちゃ。紅蓮騎士団は精鋭だ。だけど、辞めたらただの人だ。軍隊ってそういう物だ。元騎士団員と肩書きを見せびらかす奴は碌な奴がいない。
それが坊ちゃんは分からない。しかし・・・
「一番隊はメルケル殿だったような・・代わったのですか?」
「こやつ、嘘をついて我を貶めるつもりだ!裁判を起すぞ!」
偽物確定だ・・・
俺は街を出た。
俺の元団員たちも右往左往だ。
「俺は家族がいるから・・・」
「私も旦那の農作業を手伝うことにするよ」
「じゃあ、ハンス、お前が一番長老になるから、これを渡しておくよ。いざとなったら・・・」
秘策を話した。
「これが?」
「ああ、本当だ」
だが、俺に付いていく者達がいた。
「「「私達は行くわ」」」
「君たち・・・何故?」
軒並み独身の女冒険者たちは俺に付いていくと言う。
「だって、ダニエル様、この街に滞在している間、伽をせよと言うのよ!」
「そうよ。新しいクラウ長、シュリンガーがね。宿に来るわ!部屋で面接をするって・・しつこいのよ」
「ありゃ・・」
まるでハーレムのようだ。10人を超える女冒険者が俺に付き従う。
「アレクはいやらしい目で見なかったでしょう?」
「そりゃ、仕事と恋愛を交ぜたら危険ってね・・いいけどさ。他の街に行く前に泉に挨拶に行くぞ」
「「「はい」」」
森に行くと何か荒れている・・・獣の声と木々のざわめきが耳に響く。
泉の前で手を合せて今までの感謝を述べた。
「今まで有難うございました」
「「「「有難うございました」」」
更に水面が荒れ。強風が吹くが・・・彼女は出てこなかった。
そう言えば一回だけしか会ったことなかったな。
帰る途中、女賢者のミライがおかしな話をする。
「アレク、女の精霊かもよ。アレクを好いてて、私達が全員女だから不機嫌なのかもね」
「そうか・・・」
「良くあるそうよ」
そのまま他の街に行った。
以下は街に残ったハンスの話の又聞きだ。
☆☆☆10日後冒険者ギルド
俺たちが去ってからすぐに魔物のスタンビートが始まったそうだ。
通常の魔物ではない。邪神級、つまり神が率いて来たのだ。
『ダニエル様!邪神ナーガが攻めて来ます!我は王都に報告に行くのでごめん!』
『ヒドいよ!戦ってよ!紅蓮騎士団でしょう。せめて僕を護衛して王都まで連れて行ってよ!』
『ええい!そんな太った体では馬にも乗れないでは・・・ヒィ、扉が開いた!冒険者ども逃げやがった!』
上半身は女で下は水蛇の邪神に率いられたビア樽ぐらいの太さの大蛇たちにダニエルとシュリンガー達は生きたまま丸呑みにされたと推定されている。
死体は残っていない。涎まみれの剣や衣服だけが残っていた。一端服、武器ごと喰って吐き出したのだろう・・・
その後、非戦闘員のいる区域に攻め入った。
『女神教会ににっくき人族がいるぞ!食らいつくせ!・・・』
しかし、大蛇たちは動かない。
鎌首を上げたまま呆然としていたそうだ。
何故なら、女神教会には折れた剣があったからだ。俺が泉で拾った折れた錆びた剣だ。
それをハンスが木にくくりつけ槍のように門の上から飾っていた。
『・・・・眷属どもよ。帰るぞ!』
これで邪神ナーガに主導されたスタンビートは治まりました。
実は、この折れた剣は・・・
『聖剣だ・・・』
と都から調査に来た騎士団付の鑑定士に確定された。どのような経緯で泉にあったかは年代記を調べているそうだ。
おそらく、勇者様が封じたのだろう
何故、俺がこの話を知っていたかは、その騎士団は紅蓮騎士団で一番隊のメルケルが率いていたからだ。
隣の街の酒場で再会した。
酒を酌み交わし。からまれた。
「アレクよ・・・二年前、俺に騎士団長の令嬢を譲るために、わざと辞めて一番隊の隊長の地位と令嬢を譲ったな?吐け!」
「そんなではない。俺は嫌になったのだよ。個人の武勇と人を率いるのは別だ。俺はまだまだ個人で戦いたいのよ・・・騎士を率いるのはメルケルの方が上、武勇は俺が上だけどな」
「ほざいたな・・・おい、待て、どこに行く?」
「明日仕事があるんでね・・・」
もう、騎士団は過去の話だ。
俺は未来に向けて走り出さなければならない。
最後までお読み頂き有難うございました。




