第1話
「あっつー・・・」
今の季節は夏。午前中だってのに、気温30度を超えている。
・・・・あたしは秋本真紀。(17)
あたしは、とある田舎にボロアパートに1人暮らししてる。親にあきれて家出してきた。
あたしの親はお父さんの浮気で、浮気相手に妊娠をさせて・・・それが原因で離婚。それであたしの名前は工藤から、秋本になった。まぁあたしが1歳4ヶ月の時の話だけど。
夏休み真っ最中。夏休み前の日には、皆「海いこー!!」とか「男子誘ってキャンプいこー!!」だとか・・・・あたしにとってはアホらしい。くだらない。
今はアイスを食べながら、フローリングの床にねっころがっている。
フローリングの板の床が若干冷たくて気持ちい。
アイスを食べ終わって棒をゴミ箱に捨てた。
ピーンポーン。 誰か来た。
あたしは覗き穴を覗いた。なにか綺麗な人が立っている。男の人だ。
綺麗な黒い瞳。それに綺麗な黒いさらさらな髪。下の髪が肩に付きそうな長さだ。
あたしはとりあえず、出ることにした。
「はぁ~~い・・・。」
その人の黒い瞳を見ていると今にも吸い込まれそうになる。
「俺さ今日引っ越してきたばっかだから、調味料揃ってないんだ。ケチャップ貸して。」
「・・・・・。」
「なになにな~に。貸してくんないの。」
「・・・・・。」
「なに?マジで貸してくんないの?あんたって、そーとーなけちだね。」
なに、コイツ。慣れ慣れしい。あたしは睨んでやった。でもやっぱり今にも吸い込まれそう。
「てか、なんで見知らぬ人に・・・」
「あ。俺、お前知ってるよ。秋本真紀だろ?」
こいつなんでっ・・・
あたしは、目を丸くして男の人を見つめた。
「な・・・なんで知って・・・・・・ストーカー!?」
「ちっ違うよ!俺の名前は工藤蓮太。」
あたしは再び目を丸くした。
「工藤って、もしかして・・・・・」
「そう。俺は、お前の父さんと浮気相手の子ども。」
「ってことは、あたしとあんたって・・・きょうだい!?」
男はこくりとうなずいた。そーいえば、目元とかあたしとよく似てる。
・・・なんか複雑な関係・・・・。
「だからハイ!!ケチャップ!!!」
まだ言うか!!こいつは!!
あたしはしょうがなくケチャップを貸した。
「5分以内に返してよねっ!!」
「サンキュッ!!」
そう言って蓮太はブイサインをしながらドアを閉じた。
~10分後~
・・・来ない。もう約束から5分過ぎてる・・・・・しょうがないからあたしは連太の家に行った。
ピーンポーン。 ・・・出て来ない。あたしはドアノブを引いてみた。
ガチャ。開いてる。部屋の中はベットとソファー、ガラスのテーブルだけ。
まったく生活感が感じられない。でも広さはウチと同じはずなのに、こっちのほうが広く感じられる。
家具が少ないからだろう。どこか寂しさも感じられる。すると、トイレから蓮太が出てきた。
そして連太がこっちに気付き、ビックリした表情をしたけどすぐに優しい表情に変えた。
「かわいいドロボーが来たね」
「ケチャップ返して。あたしも使うの。」
「あー、はいはい」
「はいは、一回!」
「はぁ~い」
なんかバカにされてるようでムカついたけど、この会話が今までの人生で一番と言っていいほど、楽しかった。