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【エピローグ(今)】──君へ
再び、本を手に取る。
この物語は、あの頃の“君”に向けた贈り物。
それは、図書室のあの文庫の背表紙と、君の名前が書かれた図書カードから始まった。
もし、君がこのページをめくりながら、
ふと「どこかで読んだことがある」と感じたなら──それは偶然じゃない。
ページの角、三角に折られた跡。
誰かがそっと指を置いた“しるし”。
それは、君だけが気づくために、残されたものかもしれない。
* * *
あの日の夏、
僕たちは同じ物語の風景を見ていた。
でも、それを言葉にできず、胸にしまい込んだまま、大人になった。
いまなら言える。
君が先に借りたあの本を、僕が読んだこと──それが、僕の世界をどれだけ変えたか。
そして、君がいたから、僕は物語を書けた。
To the girl who once borrowed the book before me.
ありがとう。
君の“しるし”があったから、僕は今でも、物語を旅している。