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【5話 はじめてのとうばつ】

異世界転生してから0日目

28歳ソロの人くん


慣れない地でこれからはじめての討伐依頼へ出かけます

果たして無事に成功できるのか…ドキドキです

(天の声:はじめてのお使い風ナレーション)


ソロの人「おいコラ!!やれるわっ!!」


なんちゃって…笑

何となくまとまったのでこれも出しちゃいますが

ペースに期待はしないでください

依頼票に書かれていた内容は


----------

依頼優先度A

早めの討伐依頼希望


フィリアの森に現れる小型魔獣の討伐


街から近い森で確認

複数の魔獣で行動しているのを確認


旅人や商人を襲います

魔獣の正体は不明

また奇怪な動きをするため討伐時は注意


報酬:銀貨三十五枚


----------



奇怪な動きをするという点は気になるが

小型魔獣なら俺にとってはちょうどいい腕試しだ


森へ足を踏み入れると、すぐに空気が変わった


街に来る時は、街へ向かうという目標や《Noa-ノア-》を使いこなすために目の前に出てくる野獣やモンスターを狩るのに夢中で、ただの通り道としか思ってなかったが――


「確かに奇妙な森だな…」


昼間なのに木々が鬱蒼と茂って、光は地面にほとんど届かない。湿った空気が肌にまとわりつき、鳥の鳴き声さえ妙に遠い。


「……ドワーフのおっさんが"危険"だと言ってた理由も分かる」


警戒を強めながら進むと、カサリと枝の折れる音。


「ここら辺が目撃情報だったが…」


その瞬間、前方の木陰から小型の獣人のような魔獣がぞろぞろと姿を現した。


一見オークのようだが、頭に生えた長い牛の角、鋭い牙、黄色くギラつく目――鬼のような顔つきだ。


「出たなっ…!!」


そう言って俺が剣を構えると――

魔獣たちも、拾った枝や石を片手に、全員で同じ構えをとった。


「……は?」


さらに一歩踏み込む。

すると奴らも、まったく同じ間合いで一歩前に。


剣を高く掲げれば、十体全員が同じタイミングで振り上げる。

まるで合わせ鏡のようだ。


「なるほど…奇怪な動きというのはコレのことか」


俺が小声で呟くと、

魔獣たちは一斉に「グギャァ!」と声を上げ、

合いの手のように応じる



だが、笑っていられない

俺が一歩踏み込むと、奴らも一歩踏み込む

斬りかかれば同じように斬りかかり、回避すれば全員で回避――群れ全体が俺の動きをトレースしてくる


「……くそ、群れ全員で動くからタイミングが狂う…ちょっと厄介だな」


心臓の鼓動が早まる。

だが同時に、こんな動きをする敵を相手にできるのは――面白いじゃん。


剣を一体に振り下ろしても、残りが同じ動作で反撃してくる。


数の暴力と連動――

これじゃ普通の冒険者じゃ一網打尽にされるだろう。


俺はニヤリと笑い言う


「よし、俺の動きをトレースするなら…《Noa -ノア-》」


《Noa -ノア-》を発動


自分の分身――幻影(デコイ)を一体生み出した

案の定、魔獣たちは一斉にそちらを注視している


俺は生み出したデコイに意志を持たせて動かした


「これぞオタ芸じゃあああ!!うりゃおい!うりゃおい!」


デコイは、俺が昔推していたアイドル「チェリーバスケット」のライブで踊っていたヲタ芸を全力で披露する。


両手をぶんぶん振り回し、光のないサイリウムを掲げるかのように跳ね回る姿に――


すると――


魔獣たちは全員で「グゥ…ギャ…ググゥ!」と奇妙な鳴き声を合わせながら、完璧にシンクロして踊り始めた。


「……おぉ!!」


揃ってオタ芸ダンスしている姿に感動しつつ、ここぞというタイミングを見極める。


「ラストスパートだ!!!…

タイガー!ファイヤー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」


サイリウムをまさに上に掲げたようなポーズで止まった瞬間


「――今だ」


背後に回り込み、《零創断ヌル・エッジ》を抜く。

透明な刃が閃き、魔獣の急所を正確に切り裂いていく。


「一閃、二閃、三閃……これでラストだ」


その場にいた十体が崩れ落ちる。


俺は剣を下ろし、息を整えた。


すると…腰に差していた依頼票が光りはじめ、

それと同時に懐の《登録書》が淡く光り、文字が浮かび上がる


討伐数:10/10

依頼進行度:達成



依頼票を広げると表面がじわりと光を帯び、赤い【未達成】の印がゆっくりと黒く塗りつぶされ、代わりに金色の【達成済み】の刻印が浮かび上がった。


「……おお、クエストクリア演出かよ、あっつ!!」


ゲームだったら絶対、ファンファーレ鳴るやつだな……

そう思いながら、俺は依頼票を握りしめた。


〜♪〜♪


(想像に任せるけど、きっとファンファーレも流れてるはずだ)



「クエストクリアしたし、帰るか」


森を振り返えり帰ろうとしたところ、

倒した魔獣たちのそばに、奇妙な袋が落ちているのに気づく。


「…なんだ?これ?」


小さな布製を拾うと袋には見慣れない紋章が刺繍されていた。


紐で閉じられていた袋を開けてみると、中には黒く光る宝石のような石が入っていた。


近づくと、石が微かに脈打つように光り、ほんのり暖かい。


「…これは…石?」


――その瞬間

パリッ、と軽い音がして、石は手のひらで粉々に砕け散った。

残ったのは、かすかな光の残滓だけ。

形はもう、どこにもない。



「触った瞬間に粉々になった…」


これは何の石なんだ?原石?魔法石?

バフみたいな効果でもあったのか?


周囲を見ると他に落ちているものはなかった。

どうやら倒した魔獣たちの中でこの石を持っていたのは一体だけのようだ。


「…誰かが、これを仕込んでたってことか…?もしくは魔獣が自ら力を手にするために持っていたのか?」


なんにせよ違和感があるのは間違いない…

俺は森を後にして、街へ戻る足を早めた。


「調べる必要がありそうだ…」


森の出口に差し掛かると、昼の光は少し落ち着き、辺りは夕暮れになっていた。


その瞬間、異世界転生してから出ていたアドレナリンが切れ、今までに感じたことのない疲労が一気に押し寄せる。


「やばい…疲れた…」


転生してからここまで、ずっと突っ走ってきた。

飲まず食わずで、やっと一息つける。


「活動時間の限界だ…」


思わず、かつての自室でベッドがすぐ横にあった配置を思い出す。


PCでゲームをし、活動時間の限界が来たら、すぐに寝っ転がることができたあの配置は今でも神だった――


そんなことを考えながら、気づいたら建物にたどり着いていた


ケモ耳のカウンター職員がにこやかに出迎えてくれる。


「あっ!!ソロの人さん!無事に討伐したんですね!

依頼票の本紙が討伐完了になってたので、帰ってくるの待ってましたよ!おめでとうございます!!」


俺に色々教えてくれたケモ耳のカウンター職員は

ニコニコしながら俺を暖かく迎えてくれた。


「ありがとう…無事終わ…」


そう言いかけた瞬間、全身の力が抜け、膝がガクッと折れた。目の前がふわりと白くなり――気づけば床に倒れ込んでいた。


バタン


「きゃああっ!!ソロの人さん?!」


周りの声に、俺はもう反応できない。疲労がすべてを包み込み、そのまま深い眠りに落ちていった。


何はともあれ…


はじめてのとうばつ、無事に完遂(?)⭐︎


この後、俺はケモ耳のカウンター職員に膝枕をされていたことを覚えていないことに、深い絶望を抱いたのである。

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