表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

【3話 ソロ活はじめの一歩】

奇跡の更新

トロールとの闘いで気づかなかったが

俺が目を覚ましてこの世界に来た時は既に装備を見に纏っていた。


黒と深紅を基調にした軽装のフード付きロングコート

左腰には先ほど創られた片手剣

右足には小型のダガーナイフ

背中には折りたたみ式の短杖まである


「……これ、俺のゲーム装備じゃん」


俺がゲームで使っていた“あの構成”だった。

ソロプレイに特化した装備で、回避性能と汎用性を重視したスタイル


アサシン風の見た目は俺の趣味が反映されたものだった

(女性キャラクター用じゃないのが残念だが…)


ただおかしいのは、それを誰が装備させたのかだ。

目覚めた瞬間には、もうこの姿になっていたのだから

どうやら転生と同時に、この“冒険者スタイル”が自動で与えられたらしい。


「……まあ、これならしばらく困らなさそうだな」


そして次に俺の能力だ


《Noa-ノア-》


俺に宿ったこの力はどうやら空の設計図から

俺が創りたいと思ったものを創れるーー


らしいが


何を創りたいのか

どう使いたいのか


――この2つが、明確でなければならないようだ。


試しにゲームで使っていた装備を再現しようと試みたが結果、ただの外見だけの模造品だった

ゲームの世界にしか存在しないモンスター素材なんて、

この現実の理では機能しない、ただのガラクタだ


「なるほどな……素材じゃなくて、理屈か」


「生きた人間」や「魂のある生命」は創れない。

トロールを生き返らせようとしてみたが、失敗に終わった

おそらく、“実体化しない”ものはこのスキルでは創造できない。

ということはつまり時間や記憶の操作、精神干渉のようなことも不可だろう


「俺が創れた武器は、俺という“現実の存在”が前提にあったからこそ、か……」


ノアの力は万能ではない

だが逆に言えば


“俺が生きていて、望むことが明確なら”


――何だって作れる、これが俺の能力だ


なんにせよソロ活をする俺には充分すぎる脳力だが

使いこなすには実践しかない


ドリアードがこの世界には討伐依頼があるって言ってたのを俺は思い出した


「まずは、街を目指さなきゃな…」


そう言ったものの、肝心の街の目処は全くない

なんせこの世界に降り立ってまだ間もないので突然だ


周りに何かあるか確認してみたが

見渡す限り、森と丘と空だけで人の気配もない


地図もガイドも存在しないこの世界で、

いきなり徒歩で彷徨うのは、流石に非効率すぎる


「……よし、やってみるか」


俺は静かに、呼吸を整える。


《Noa -ノア-》


また、あの“空の設計図”が視界に浮かぶ。

今回は、明確にイメージする。


「この世界の構造……地形……都市の位置……」

「人の営みが存在していそうな場所……」


俺の意志が流れ込んでいく。

そして次の瞬間、光が集まり──


俺の手の中に、一枚の“地図”が現れた。

羊皮紙のような質感、温もりすら感じるそれは、

この世界の広域マップらしきものだった。


そこには、現在地を示す小さな光点と、

いくつかの街が記されている


が、まだこの世界に降り立って間もない俺の創造だ

細かい地形は書かれておらず、全体図のようマップだった


それでも都市の場所に印と街の名前が書かれている。

一番近いのは「フィリア」という街だ


距離は歩いて半日といったところだろうか

なんにせよ向かうしかない


「……よし、目的地決定だ」


地図をローブの内ポケットに滑り込ませ、

俺はフードを深く被り俺は足を進めた



俺は今とても困っている

目の前には失神して倒れた灰色の耳が映えたケモ耳の子ども


「どうするべきなんだ…」



時を遡ること1時間前


「フィリア」という街に向かっている途中

どこか遠くで悲鳴が聞こえた


??「うわあああぁぁぁ」


「……子どもの声?」


俺は思わず足を止める。


いやスルーするべきか?

この世界で不用意に首を突っ込むのは、命取りだ。

そう考えていた次の瞬間、地面を揺らす重い足音と、低い咆哮が森を震わせた。


「……嫌な予感しかしないな」


俺は音のする方向へ駆け出した。


そこには、ケモ耳の小さな子どもが

灰色の耳が恐怖でピンと立ち、恐怖で固まっていた。


その前に立ちはだかっているのは

2メートル半はあろうかというオーガ。


大木のような腕で棍棒を振り上げ、

今にも振り下ろそうとしていた。


「間に合え……!Noa-ノア-!!!」


俺は即座に《Noa-ノア-》を起動する。

思い描いたのは、踏み込んだ瞬間に風を集め、爆発的な推進力を生む加速ブーツ。

靴底から巻き上がった風が足に絡みつき、ふくらはぎを押し出す感覚が走る。


瞬間、俺の体は地面を蹴った途端に矢のように飛び出した。

迫りくるオーガの棍棒が空を裂く前に、ケモ耳の子を抱きかかえ、勢いのまま横へ跳び込む。


ケモ耳の子供をそっと下ろし振り返ると、オーガが棍棒を振り下ろし、さっきまで俺たちがいた地面が粉々に砕けていた。


砂煙の向こう、その獣じみた瞳がこちらを睨みつけている——。


俺はゆっくりと腰の片手剣を抜く。


「Noa-ノア-…」


《Noa-ノア-》を再び起動し、目を瞑り鮮明に剣身に風をまとわせるイメージを描く。

刃が淡い光を帯び、風鳴りが低く響き始めた。


砂煙の中からオーガの巨影が揺れ、次の一歩で全身を現す。

その瞬間、俺は一気に踏み込み、風を裂く勢いで剣を振るった。


「——吹き飛べっ!!!!」


風圧が刃と一体化し、斜めに振り抜いた一撃はオーガの肩口を深く裂き、巨体をよろめかせた。


だがオーガは倒れない。

怒りの唸り声と共に、血走った眼で再び俺に狙う


背後から、怯えた小さな息遣いが聞こえる。

どっちにしろ手を出してしまった以上は逃げることはできない

俺は何故かこの状況に高揚感を感じていた


「…さすが、モンスターなだけあるな」


足元の風が螺旋を描き、砂粒を巻き上げていく。

再び目を瞑り、頭の中で、形のない“無”を研ぎ澄ませていく。


「―― 《零創断 -Null Edge-》ルヌ・エッジ」


音が消えた。

全ての色が淡く褪せ、世界が一瞬だけ静止する。

手の中に現れたのは、光も闇も映さない無色の刃。


次の瞬間、俺は一歩で間合いを詰め、

真横から閃光のような斬撃を放つ。


風も、砂も、空気すらも切り裂く無音の一閃。

オーガは動きを止めたまま、その巨体に細い切断線が走る


巨躯が音を立てて崩れ落ち、砂煙が再び舞い上がる。

刃は霧のように消え、俺の呼吸だけが残った。


振り返ると、ケモ耳の少女が目を見開き、固まったまま俺を見ていた。


?「……あ、な……」


何か言おうとした瞬間…


バタン


ふらり、と身体が傾いてそのままケモ耳の子どもは倒れ込んだ


:

これが約1時間前の出来事だ



あのオーガとの戦闘から、もう1時間が経っている。

失神して倒れたケモ耳の子どもはまだ目を覚まさない。


ボロボロのマントに破れかけた服。

擦れて傷だらけのブーツ。

年は――たぶん10歳前後。

どうやって生き延びてきたのか、逆に不思議になるくらいの姿だ。


「……どうするべきなんだ」


助けはした

命も守った


ここから抱えて街までいくのか?

誰かを抱えて行動すれば、速度も自由も、そして生存率も落ちる


脳裏に、あの日の出来事が浮かぶ


ーごめん、100%信用することは難しいー


俺は深く息を吐いた


「Noa-ノア-」


頭の中で「安全を確保できるモノ」を鮮明に思い描く


ドリアードがこの世界には"魔法族"がいると言っていた

魔術が使えるなら身を隠せるシールドもあるはずだ

その場に溶け込み身を隠せるシールド


手のひらに集中すると、微かな光が指先から広がった。

外敵や視線から完全に守れる透明な魔術のシールドは倒れている子供を覆った


呼吸は落ち着いている。



「あとは…」


俺は手のひらを空に向け

《Noa -ノア-》を使い光る救難信号を出した


シールドの中にいる限り、森の獣も、人の目も、危険な存在も届かない、救難信号も出した


「これで誰か助けもくるだろ…悪いな。」


最後に子どもの呼吸が落ち着いてるのを確認して

俺はそのままフィリアへ歩き出した

《零創断 -Null Edge-》ルヌエッジの設定まとめメモ


《Noa-ノア-》の力で、“存在する前の無”を刃として具現化する必殺の一閃。

この刃は物質だけでなく「形を持つ概念」すら切断できるが、莫大な集中力とイメージが必要。

主に決定打や止めの一撃として使用。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ