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【23話 ソロ活は誰に頼ればいい】

ま、ま、まとまった…!!!

でもこの先はストックがないのでここからまた追われる…

ゆーっくり更新しますのでご了承ください



リミュエールの森の境界は、音もなくほどけた。


枝が絡まり合っていた道が、まるで「もういい」と言うように静かに開き、

淡い光に満ちていた森の気配が、ゆっくりと背後へ薄れていく。


振り返ると――

精霊たちが、枝の上や空中に集まっていた。


「ソローー!!」

「また来てねーー!!」


リィナとカリーナが、身振り手振りで全力アピールしている。

他の精霊たちも、光の粒を散らしながら手を振っていた。


「……あぁ、また来る」


小さく手を振り返す。


少し離れた場所で、サリアが弓を持ったまま静かに立っていた。


言葉はない。

ただ、一礼。


……それだけで、十分だった。


『行きなさい、ソロの人』


風に乗って届くのは、エリルの声。


見えないはずなのに、ちゃんと“そこにいる”と分かる。


「さすがにあったかすぎるだろ……」


そう呟いて、俺はマントを羽織った。


その瞬間、空気が一段、薄くなる。

自分の輪郭が、世界から少しだけ“外れる”感覚。


(これが……観測を鈍らせるってやつか)


一歩、前へ踏み出す。


森の匂いが、ふっと途切れた。


光を含んでいた空気が消え、

足裏に伝わる感触が変わる。


――柔らかな苔ではない。

踏み慣れた、“ただの土”。


思わず振り返る。


そこに森はなかった。


……いや、正確には“在る”のに、見えない。


霧のように、光の膜のように。

「ここから先は違う」と告げる境界だけが残っている。


「……結界の外、か」


精霊の声も、あの森特有のざわめきも、もう届かない。


――ここから先は、外の世界だ。



道中、何度か魔獣に襲われながらも、俺は進み続けた。


そして――

リミュエールの森を離れて、三日目。


街道を外れ、森沿いの丘陵を歩いていた。


本来なら、人の往来があるはずの街道。

だが――そこに“人が通った痕跡”が、まるで残っていなかった。


エリシオン王国のような国も存在するこの世界で、街道が放置されているとは考えにくい。

車のない世界なら、主な移動手段は荷馬車や牛車のはずだ。


ならば――


轍の跡や、踏み固められた土。

そういった“往来の痕跡”があって当然だ。


「……なのに、何もない」


あり得るか?


街道として整備されているこの道で。


しかも――


一日目、二日目には遭遇していた魔獣の気配すら、完全に消えている。


「……静かすぎる」


代わりに目につくのは――


腐り落ちた木々。

黒ずんだ土。

枯れ果てた草。


「……どっかで見たな、この感じ」


胸の奥で、蒼輝の羅針が微かに震える。


人でもない。

獣でもない。


――濁った“何か”。


(……ルグナか)


エリルの言葉が蘇る。


『森の外縁には、まだ偵察が残っている可能性があります』


マントで気配は薄められている。

だが――消えてはいない。


「バレてたら、普通に面倒だな……」


ため息が漏れる。


めんどくさいが、旅を邪魔されるのはごめんだ。


俺は足を止め、ゆっくりと周囲を見渡した。


風が、止まっている。


さっきまで感じていた微かな草の揺れも、虫の羽音も――

全部、消えていた。


「……出てこいよ」


わざと声に出す。


数秒の静寂。


――ザリッ。


背後の土が、わずかに擦れる音。


同時に、気配が“浮いた”。


「……感知しているのか」


低い声。


振り返ると、そこには――


黒いローブ。

歪んだ仮面。


そして、あの嫌な“濁り”。


「やっぱり来たな……」


黒い靄が、地面から滲み出る。


仮面の魔族――ルグナ。


「……見つけたぞ」


低い声が、耳にまとわりつく。


仮面の奥で、赤い光が揺れる。


「我々は、魔へ至る者。

貴様のような“創”に触れた存在は――見逃せない」


(……やっぱバレてるか)


マント越しでも、完全には隠せないらしい。


「で?また精霊でも攫いに来たのか?」


「違う」


即答だった。


「今回は――貴様だ」


空気が、重く沈む。


次の瞬間。


ズッ――!!


地面に、黒い紋様が走る。


「《堕環-だかん-》――顕現-けんげん-」


足元から、じわりと黒が広がる。

森の時より規模は小さいが、確実に“侵食”してくる。


「……ちっ」


後ろに跳ぶ。


同時に、黒い靄が槍のように突き出された。


バシュッ!!


「っ!!あっぶね…!」


ギリギリで躱す。

だが、地面に突き刺さったそれは、じゅわりと腐食を広げていた。


(…直撃したら普通に終わるやつだな、これ)


腐食を見る俺にルグナが続けて言った。


「逃げるか?」


「いや?」


俺は肩を回しながら、ため息をついた。


「ちょっと試したいことがあってさ」


「……ほう?」


ルグナが、わずかに首を傾げる。


「この前は、ほぼ暴発だったからな」


軽口を叩きながらも、意識は集中していた。


――あのときとは違う。


純命ルミア》の“感覚”が、残っている。


「……いける」


胸の奥に、意識を落とす。


蒼輝の羅針が、静かに応じた。


「……《Noa -ノア-》」


空気が、わずかに軋む。


「――《純命ルミア》」


瞬間。


白金の光が、俺の周囲にだけ展開された。


ドンッ――!!


衝撃のように空気が弾ける。


ルグナの黒が、焼かれるように消えていく。


「なっ……!?」


「これが――」


前より、明確に“扱える”。


「こう使うもんだろ」


光が収束し――


一点に叩き込まれる。


轟音。


完全な浄化じゃない。

だが、確実に――押し返している。


「使い方……ちょっと分かってきたかもな」


俺は、片手を前に出す。


「――行け」


シュンッ――!!


一直線に放たれた光が、

ルグナの肩を掠めた。


「ぐっ……!?」


仮面が、わずかにひび割れる。


そこから――黒ではなく、

灰のようなものが、ぱらりと落ちた。


「……くそ、外したか。」


ただし。


(……っ……)


ドクン、と胸が痛む。


息が、浅い。


(やっぱ代償エグいな……)


ルグナは一歩後退した。


「……危険だな」


声に、初めて警戒が混じる。


「…だが、消えたと言われていた"創"の存在が確認された以上、ここでお前は殺さなければならない」


「…そんなに俺って危険な存在か?」


俺は軽く笑う。


だが、内心は余裕ゼロだ。


(長引かせたら負ける)


その時――


エリルの言葉が、ふと蘇る。


『次に《ルミア》を使うときは――必ず誰かを頼りなさい』


(……誰かって)


周りを見る。


誰もいない。


「……いや無理だろ」


思わず、半笑いが漏れた。


「ソロ活してるやつに、誰頼れって言うんだよ」


「……何を言っている?」


ルグナが訝しむ。


「いや、こっちの話」


息を吐く。


覚悟を決めるしかない。


「一人でやるしかねぇだろ」


もう一度、構える。


光が、揺れる。


「来いよ、なり損ない」


「……いいだろう」


黒い靄が、再び膨れ上がる。


白と黒が、ぶつかる寸前――


(……短期決戦だ)


心臓の鼓動が、強く鳴った。

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