【22話 リュミエールの森へようこそ】
仕事が忙しすぎる、なんなんだ本当に。
そして誤字報告や、リアクションくれた人ありがとう。
どんどんください、あなた方の助けがめちゃくちゃ助かります。
22話から先の23話がちょっとまとまらないので…
頑張ってまとめます
◇
目を覚ましたとき、まず気づいたのは――
身体が、ちゃんと“重い”ということだった。
起き上がろうとして、軽く伸びをする。
ちゃんと力が戻ってきているのが分かった。
「だいぶ楽になったな」
枝で組まれた床に足を下ろした、その瞬間。
「おはようございます、ソロの人」
柔らかな声とともに、やってきたのはエリルだった。
「2日ほど、深く眠っていました」
「2日……」
短く息を吐く。
それだけ休んで、ようやく“普通”に近づいた感じか。
「結界は無事に修復されましたよ。」
そう言ってエリルは俺の腕を見る。
そこには、以前はめられていた蔦状の腕輪――
“監視の蔓環”が、まだ淡く光っていた。
「目覚めたあなたに、正式な手続きを」
エリルは静かに告げる。
「あなたを、リミュエールの森の“訪問者”として迎え入れます」
そう言って、蔦環にそっと触れた。
光がほどけるように消え、
腕輪は、音もなく霧散した。
「監視は解除しました。
ソロの人、改めてリミュエールの森へようこそ」
「……信用してくれたってことでいいのか?」
「ええ」
エリルは微笑む。
「今のあなたを縛る理由はありません。
それに――」
一瞬、意味ありげに視線を向ける。
「縛れる存在でもありませんから」
「……それ、褒めてないよな」
「ふふ」
◇
それからの数日は、驚くほど穏やかだった。
改めて訪問者として受け入れられてからは
リミュエールを歩いているだけでそこに住む精霊やエルフたちから声をかけられる
「お前、今日はどこ行くんだ?」
「ソロさん、あっちでルロ爺が呼んでたよ!」
「ソロ〜!今日はうちでご飯食べていきなよ!」
結界を破った初日には考えられない光景だ。
「ソロー、こっちこっちー!」
あれからリィナはすっかり心を開いてくれていた。
リィナに手を引かれ、枝の回廊を駆ける。
足元はしっかりとした木の床なのに、どこか弾むような感触がある。
「走ると落ちるよー! ……あ、でもソロなら落ちても大丈夫かも!」
「大丈夫じゃねぇよ」
思わずツッコミを入れると、精霊たちが一斉に笑った。
「ふふふ、ソロって案外普通だよね」
「もっと怖い人かと思ってた!」
「俺そんなに怖いか…?」
「だって結界破った人だもん、悪い人だと思うよね!」
「思う!!」
「…ゔっ。」
「でもすごく優しい!」
笑顔で即答する精霊たちに返す言葉が見つからず、頭を掻く。
そんな俺の少し遅れて後ろを飛んでいるのはあの時助けたカリーナだ。
カリーナが様子を見ながら俺に話しかける。
「……あの、ソロさん…」
「ん?」
「ありがとう。……本当に」
小さな声だったけど、はっきり聞こえた。
「私、あの時……消えるんだって、思ってた。
とにかく苦しくて……リィナの泣き声だけが聞こえて来て…真っ暗な中で私消えるんだって」
視線を逸らす精霊の肩が、小さく震える。
「こうやっていまここにいるのが奇跡だと思う…
戻ってこれて、本当に嬉しい…」
胸の奥が、きゅっと締まった。
「……リィナと約束したからな、お前を助けるって。
だからそんなに感謝しなく良い、お前の気持ちはもう充分伝わってる。それにさんはいらない、ソロで良い」
それだけ言うと、
カリーナはぱっと顔を上げ、満面の笑みを浮かべた。
「…うん!!」
その瞬間、リィナが割り込んでくる。
「ねえねえ! ソロも精霊にならない!?」
「そしたらずっと一緒だよ!!」
「…なれねぇだろ。」
「えー! なんでー!」
精霊たちは不満そうに頬を膨らませた。
◇
夜になると、森は別の顔を見せる。
淡く光る胞子が宙を舞い、
枝と枝をつなぐ広場には、柔らかな光が満ちていた。
精霊たちは輪になって浮かび、
俺はその真ん中で、どっかりと腰を下ろす。
「これどうぞ!」
渡されたのは、光を帯びた果実。
「……食えるのか?」
「食べられる! ちょっと不思議だけど!」
恐る恐る口に入れると、
甘さの奥に、ひんやりとした感覚が広がった。
「……うまいな」
「でしょー!」
得意げな精霊たち。
その少し離れた場所で、サリアが静かに立っていた。
弓を肩に掛け、周囲を警戒しながらも――表情は柔らかい。
「……こんな森の夜は、久しぶりです」
「サリアは座らないのか?」
「…私は護衛中ですので」
そう言いながらも、精霊たちが差し出した果実は、ちゃんと受け取っていた。
◇
その夜、俺はサリアの護衛に同行した。
弓を背負うサリアと少し距離を取って歩いていると
サリアが森を見渡しながら呟いた。
「……本当に、森が落ち着いています」
「そんなに違うのか?」
「えぇ。とても良い空気です。」
「…エリルの言っていた、循が戻ったってやつか?」
「そうですね。あなたのおかげです、感謝していますよ。」
あまりにもストレートなお礼に俺は照れくさくなった。
(俺は、そんな立派なことをしたつもりはないんだけどな)
「…でも元はといえば俺が結界を…」
「それはそうです。」
相変わらず…ピシャリというなぁ…泣
「…スンマセン」
サリアは少し笑い、俺を見る。
「それでもあなたがいたからリミュエールの森は守られた。私の第二の故郷が無くならずに済んだのは紛れもなくあなたのおかげですよ。」
「…それほどでも////」
俺の渾身のしんちゃんギャグを無視してサリアは続ける。
「…そろそろ旅立たれるのですか?」
「…まぁ、そうだな。」
短い沈黙。
そして、彼女は意を決したように言った。
「……もしよければ。
私も、ついて行ってもよろしいでしょうか」
え?
え?
ええええええええええ?
思わず俺は足を止めた。
サリアは視線を逸らしながら、それでも言葉を続ける。
「私は……あなたに命を救われました。
命を救ってくれたということはそんな簡単なことではありません。私はあなたに返し切れないほどの恩がある、ということです。
…エリル様から聞きました。創を担うあなたのこれからの旅路はきっと争いが耐えないと。
あなたに救われたこの命、あなたを守る護衛として捧げても良い。あなたを守れるのなら……パーティという形で…」
その瞬間、
俺の脳裏に、あの記憶がフラッシュバックした。
『正直100%信じるは難しいわ』
ズキン。
分かってる…
おそらくサリアの気持ちは真実でしかないことは分かっている。
きっと何があっても俺に全力でついてきてくれるだろう…
頭では分かっているんだ。
でも…それを俺は自分の心で信じることがやっぱり出来なかった。
「……ごめん」
俺は、静かに首を振った。
「仲間は、作らないって決めてるんだ。
おれはソロの人だからな…!」
俺が笑って言うとサリアの表情が、ほんの一瞬だけ揺れた。
「……そう、ですか」
「それにサリアはリミュエールにとって大切な護衛だ。
サリアがいなくなれば誰がリミュエールを護衛をするんだ?俺にとっても"此処"は帰れる居場所になったんだ。
俺の命よりも俺が帰ってこれる場所をサリアが守ってくれていた方が嬉しい」
サリアが優しく笑う。
「分かりました。
……無粋なことを言いましたね」
深く一礼する。
「あなたがいてくれたから、私も、精霊たちも、救われました。あなたのいうとおり、私はあなたの帰る場所であるリミュエールを守ります」
「……ありがとう、サリア」
◇
別れの前、エリルが俺を呼び止めた。
「これを」
差し出されたのは、深い灰色のマントだった。
光を吸うような布地で、羽織ると気配が一段薄くなるのを感じる。
「あなたの存在は、すでに世界に知られています」
「はぁ……」
「このマントは、“観測を鈍らせる”霊装です。
完全ではありませんが、目立ちはしないでしょう」
「まじ?!?!助かる!!」
エリルは笑って続けた。
「次の行き先は決まっているのですか?」
「行き先はまだ決まってないんだ。
昨日俺が作った地図を見たら新しいエリアが出ていたんだ。」
そう言って、マントの胸元に手を入れ、地図を取り出そうとした――その時。
ぽとっ。
足元に、何かが落ちた。
「……ん?」
乾いた音。
薄い紙の感触。
拾い上げてみると、それは――四つ折りにされた、小さな紙片だった。
「なんだ、これ……?」
首を傾げながら広げる。
瞬間。
「あ」
思わず、声が漏れた。
そこに描かれていたのは、見覚えのある紋章。
淡い金色で刻まれた、王国の証。
「……エリシオン王国の……通行証……?」
そうだった!!!!
完全に、忘れていた!!!
エリルが、その紙を見て目を瞬かせる。
「それは……」
そして、次の瞬間。
ほんのわずか、驚いたように目を見開いた。
「……あなた。
エリシオン王国の《盟友証》を授かっているのですか?」
「……え? そんな大層な名前だったの、これ?
イリスからもらったやつなんだけど……通行証って言われただけで」
エリルは一拍、言葉を失い――
次に、深くため息をついた。
「……あなたって人は」
「な、なに?」
「それがあれば、本来は結界を壊す必要などありませんでした。」
「……え?」
「その通行証は、エリシオン王国が正式に“友と認めた存在”の証。
森の結界は、王国の友誼を拒みません」
エリルは静かに続ける。
「それを広げ、示すだけで……
あなたは正面から、堂々とリミュエールへ入れたのです」
「…………」
数秒、沈黙。
そして――
「……あはは」
乾いた笑いが、口から漏れた。
「すっかり忘れてた……」
エリルは、半眼になった。
「こんな大切なものをあなたは……」
「いや、弁解させてくれ。
森に入ったらループして道に迷ったんだ。
食料もあいにく忘れてたし…あのままだったら確実に飢え死にしてた。死なないために近くに王国があるのならそこへ行くのは当然だろう??」
「そうだとしても結界を壊したりはしません」
即答だった。
「はい、すみません…」
エリルは追い打ちをかけるように畳みかける
「使わない通行証は、ただの紙屑です」
「はい…おっしゃる通りです…」
エリルは額に手を当て、やれやれと首を振る。
「まったく……」
そう言いながら、彼女は懐から小さな装飾具を取り出した。
掌に収まる、葉と水晶で作られた小さな筒。
中央には、淡く脈打つ光が宿っている。
「これは《盟証封納》
重要な証や契約物を、霊的に保護する入れ物です」
「…つまり?霊具????」
「えぇ、そうです。」
「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
SSRアイテム!!!!!!!!!!」
叫ぶ俺を見てエリルは冷ややかな目で見る
「…ハイ、スミマセン」
「通行証を入れておきなさい。
これに入れておけば同盟国である国についた時に霊具についている精霊が光って教えてくれるでしょう。」
「何から何まで、すみません」
俺がぺこぺこ謝っていると、エリルは小さく笑った。
「まったく……本当に冒険者なのでしょうか」
「いえ」
彼女は首を振る。
「あなたらしい、と言うべきでしょう」
◇
「それで」
エリルは、改めて問いかける。
「次の行き先は?」
俺は、ようやく地図を広げた。
羊皮紙に描かれた世界。
その端に、以前はなかった印が浮かび上がっている。
「……ここだな」
指差した先。
そこは、山と都市が重なる場所。
王国名が記されている。
「――霧都ヴァルグレイア」
エリルは、驚いたような顔をして俺に言う。
「次の行き先について私もそちらを薦めようとしておりました。」
「霧都ヴァルグレイアを?」
「えぇ、常に霧に包まれた学術と時計塔の王国。
学者が多く、この世界のさまざまな情報が集まる場所と言ってもいいでしょう。ドリアードのことやあなたの持つ力についても何かわかるかもしれません…それに」
エリルは続ける。
「…霧に包まれたこの国は正体を隠すには最適でしょう。
“創”の揺らぎが最も誤魔化しやすい場所でもあります」
「…なるほど。」
情報の集まる国…
確かに俺の持つ力が四柱の理と呼ばれる創なのかどうか、そもそも四柱の理ってなんなのか、ドリアードは何者なのか…知りたいことは山ほどある。
ソロ活に特化した能力かと思えば、蓋を開けるとこんな大層な能力で世界の理だとかなんとか言われても俺に全く喜べないし、重荷なだけだ。
世界を救うつもりはない。
ただやり残したゲームをやるようなそんな感覚で始めたんだ。
今はこの能力を別のものに変えたい。
そう、正直に言えば煩わしいとさえ思っている。
ゲームの世界で初期ガチャがハズれて良いスタートが切れないのであればリセマラをするように、能力を変えてもらいたい。
…そう、リセマラだ!!!!!!
なんで俺は気づけなかったんだ?
能力を変更できる可能性を!!!
「…よし、リセマラしよう。
そのためにはまずドリアードとの接触だ。
霧都ヴァルグレイアで情報を集める。」
※ リセマラとは、ソーシャルゲームでゲーム開始時に好みのレアキャラクターやレアアイテムを入手するために、アプリのインストールとアンインストールを繰り返す行為を指します。この行為は「リセットマラソン」の略称です。(AI豆知識)
情報を操る学者が渦巻く都市――
霧都ヴァルグレイア。
円滑なソロ活をするためには能力のリセマラだ。
そう意気込んで俺は向かった。




