【21話 《創》の復活】
とりあえずリミュエール終わりそうだ…
待ってくださってる皆様ありがとうございます
ブクマとかポイントとか頂いてなかったら投げ出していたよ…。
◇
「……創、って」
「あなたが行ったのは“治癒”ではありません。
命を戻したのでもない。
命を――創り直した これが正しい」
《再命》で“命の軌道”を戻し、
《純命》で“命そのもの”を清め、上書きした…??
俺はそんなつもりで……
「……いやいやいや、待て。俺はただソロ活がしたかっただけなんだけど…」
思わず口から漏れた。
「こんな能力、もらった覚えない。
俺が“創”とか言われても……」
エリルは首を傾げる。
「本当に覚えはない?」
「……」
俺は思い出す。
転生直後に出会った存在。
「ドリアードだ。
最初に会ったんだよ。水に囲まれた草原の中で……」
その瞬間。
エリルの表情が、初めて大きく揺れた。
目を見開き、息を呑む。
「……ドリアード……?」
「知ってるのか?」
「……当然です。
ドリアードは、理《創》の起源とされる存在。
このリミュエールに残された歴史書の記しにおいては、創という理が成立する以前に観測された唯一の存在とされています。創=ドリアードは私たちの生みの親と言ってもいい存在です。」
エリルは言葉を選ぶように、ゆっくり続けた。
「起源源となるドリアード様より受け継がれた能力…となると…つまり、あなたは……創世に関わる者に“選ばれた”ことになりますね。」
俺は頭を抱えたくなった。
ドリアードオオオオ!!!!
なんちゅうものを俺によこしたんだ。
「選ばれたって……。
いや、俺、ただソロで――」
呟きが、情けないほど小さくなる。
「ただソロ活をしたかっただけなんだよ……」
エリルが、ふっと笑った。
森が笑ったみたいに、やわらかく。
「そうでしょうね。
欲深い者は、初めから自分で名乗ります。
あなたは違う。だからこそ――選ばれた」
「嬉しくねぇ……」
「ふふ」
エリルは肩をすくめる。
「これからは忙しくなりますよ、ソロの人」
「……嫌な予感しかしない」
「ええ。嫌な予感は当たります」
即答された。
エリルは窓――いや、葉のカーテンの向こうの森を見下ろす。
「ルグナたちは塵となり、土へ還りました。
ですが――あなたが放った《純命》は、森だけでなく……
遠くの霊脈にも届いたはずです」
「……つまり」
「観測されました」
短い言葉が、重い。
「魔族も、人も、理に関わる者も。
あらゆるものが“創の揺らぎ”を嗅ぎつけたでしょう」
俺の喉が鳴る。
「……俺の存在が、知られたってこと?」
「はい」
エリルは、今度は優しく、しかし逃げ道のない声で言った。
「あなたはもう、ただの旅人ではありません。
“創世を担う者”として、世界に名前を刻みました」
胸の奥が、またズキリと痛んだ。
《ルミア》の消耗が、遅れて押し寄せてくる。
「今頃、消えていた"創"が復活したと騒ぎになっているでしょうね」
俺は苦笑するしかなかった。
「…ははは」
こんなはずじゃなかった。
奇跡的に異世界転生出来た。
やり残したMMORPGをやるように
リアル冒険ゲーをやりたかった
それだけだったのに…
俺がため息をつくとエリルはくすりと笑った。
「あなたはここでゆっくり休んでいてください。
私は"あなたが壊した"結界の最後の仕上げをして来ます」
(ギクッ)
「…あの〜俺もお手伝いとかしましょうか…?」
エリルは、ほんの一瞬だけこちらを見た。
その視線は優しい――が、逃げ場はなかった。
「……あなたは今、立っているだけで奇跡です」
「え?」
「《純命》は、理《創》の直接行使。
創り、上書きし、世界に干渉する力です。
その代償は――消耗などという生易しいものではありません」
エリルは一歩近づき、そっと俺の胸に手を当てた。
「今のあなたは、“燃え尽きる寸前の灯”。
ここで無理をすれば、次は命を繋げません」
「……まじか」
軽く言ったつもりだったが、喉が乾く。
確かに、身体の奥がずっと軋んでいる。
「ルミアは、便利な力ではありません」
エリルは静かに告げた。
「使うたびに、“あなた自身の存在”を削ります。
回復には時間が必要ですし、連続使用は――死に直結する」
「……ソロ活向けじゃねえな……」
思わず本音が漏れた。
エリルは、くすっと笑った。
「ええ。真逆です」
そのまま、少し真面目な声になる。
「だから今は、休みなさい。
結界の修復は“循”の仕事。創の出番ではありません」
「……創と循、役割分担あるんだな」
「あります。
創は“始める力”。
循は“保つ力”。」
エリルは窓の外を見つめた。
「あなたが創り直した命を、
この森が、世界が、これから循らせていく」
少し間を置いて、こちらを振り返る。
「それが――共存です」
俺は、ベッドに腰を下ろした。
「……なんかさ」
「はい」
「世界救うとか、王国作るとか、正直興味ないんだよ」
エリルは驚かなかった。
「知っています」
「一人で、好きなとこ行って、好きなことして、
ゲームみたいに冒険したかっただけなんだ」
エリルは微笑んだ。
「それでいいのです」
「え?」
「創を持つ者が、最初から世界を背負う必要はありません。
……ただ」
一拍、間を置く。
「世界は、あなたを放っておかないでしょう」
「………」
「ですが」
エリルは、どこか楽しそうに言った。
「逃げるか、関わるか、選ぶのはあなたです。
創は“命令”ではなく、“可能性”ですから」
そう言って、踵を返す。
「では、私は行ってきます」
「…迷惑かけてすみません」
「いいえ。森が完全に安定するまで、少し時間が要ります」
歩き出す直前、ふと思い出したように振り返った。
「ソロの人」
「ん?」
「次に《ルミア》を使うときは――
必ず誰かを頼りなさい」
その瞳が、少しだけ厳しくなる。
「あなたは、もう一人で完結する存在ではありません。
…それとあなたはもう充分私たちを守ってくれました。
あなたのおかげで助かった命もたくさんある。
もう謝らないでください」
そう言い残し、エリルの姿は葉の向こうへ溶けていった。
◇
静かになった部屋で、俺は天井――いや、枝の組まれた空間を見上げる。
「……ソロ活、難易度上がりすぎだろ……」
身体の奥が、ずしりと重い。
《ルミア》は確かにすごい。
でも――命を創るってのは、こんなに重いのか。
「誰かを頼る、か…」
そう呟いて目を閉じる。
誰かを頼る…俺が…?
『みんなお爺ちゃんやお婆ちゃんになってもここに集まろうね!』
そう言っていた奴らは俺の目の前から消えていった
「…無理だろ」
ドリアードはなんで俺にこの能力を渡したんだ…
(……選ぶなら、ちゃんと説明しろよ……)
文句を言う気力もなく、
俺の意識は、ゆっくりと深い眠りに沈んでいった。




