【2話 それは突然に】
本当にゆ〜くり更新していきます
ーそれは、ある日突然やってきた
その日はとにかく運が悪かった
朝から雨が降っていて目覚めも最悪だった
「頭いてぇ…これだから雨の日は嫌いだ」
偏頭痛にうんざりする朝から始まった
雨のせいで通勤電車はいつもよりも遅れて出社ギリギリ
食堂のランチメニューは苦手な酢豚
コーヒーを買いに行けば俺の注文番号は忘れられるし最悪だ
仕事は定時で終わる予定が、山田太郎のせいで謎の残業
「いやマジで……今日はとことんツイてないな」
帰りに寄ったコンビニでは、弁当コーナーがごっそり空っぽ。
絶望しながら、冷えた缶ビールとスナック菓子だけ買い、コンビニを出た
「クエスト消化でもして、ストレス発散しよう……」
自分にそう言い聞かせる。
ここまで不運が続くと、逆に笑えてくる。
その日の最悪はここからだ
スーツが濡れないよう、水たまりを避けて歩いていた──ただ、それだけだったのに。
「よっと──」
プップー!!!
目の前に、車のクラクションと眩しいヘッドライト。
思わず目を見開いた、その瞬間──
バァン!!!
衝撃と痛み。
けど、どこがどう痛いのかすら分からない。
頭? いや、身体が動かない。感覚もない。
やけに冷たいな。……あぁ、水たまりか。避けた意味、なかったな……
『救急車!!!』
『誰か止血できるものを持ってませんかっ!!!』
周囲の人々の声が、遠くでこもって聞こえる。
視界の端に誰かが動いてるけど、スローモーションみたいにゆっくりに見える。
「……これ、もしかして……死んだ?」
いや、まだ意識はある。けど──
この流れ、なんかよくある転生ものっぽくないか?
(転生するならせめて、MMORPGの世界に……)
そう願いながら、うっすら目を開ける。
目の前には、傘も差さずに立ってる人たちが俺に何かを叫んでる。
でも、その声はもう聞こえない。
……あれ? まだ現実?
てか、転生してねぇじゃん。
やっぱあれは“なろう小説”の中だけの話か
現実は、都合よくはいかないってことか……はは。
「……俺も、なりたかったな。なろう系主人公に──」
◇
――そこからの記憶は、まったくない。
気づいた時には、俺はとんでもなく巨大な木の前に立っていた。
見上げるほど高く、幹は大人十人がかりでも抱えきれない太さ。
まるで古代樹、その言葉がふさわしい神々しさだった。
木のまわりは浅く広がる2センチほどの水辺に囲まれていて、
そのまた周囲には草木が青々と茂り、生命力に満ちていた。
枝葉の隙間から差し込む光が、水面に反射してキラキラと輝く。
――そこは、まさに神秘的な空間だった。
「俺、転生したのか?」
ここが“現実”の世界ではないことは、なんとなくわかっていた。
というか、理解する前に感覚が納得していた。
……この世界はどんな場所なんだ?
もし仮に、転生した先がMMORPGみたいな世界だとしたら、
何よりも大事なのは……!
「そう!キャラクリである!!(ドヤァ)」
※キャラクリとは、キャラクタークリエイションの略で、自分の分身となるキャラをカスタマイズする工程です(AI豆知識)
大切な息子の感覚ありを見ると性別は男…
くそっ!
耳を触った感じエルフではない…
くそっ!
くそくそくそっ!!
装備は何もなし、というか死んだ時のスーツ姿のまま…
MMORPGというゲームは女性キャラクターの方が装備が凝っていて、組み合わせパターンも多い
自分好みの女性にカスタマイズできる点も含めて
圧倒的に女性キャラでプレイをする人が多いのだ
かくゆう俺もそのうちの1人である
ネカマが許容される世界だっつうのに・・・
なんで俺は 俺のまま で転生しちまったんだ・・・
「あぁ"ー!もう!!
せめてキャラクリだけはさせてくれよ!!!」
髪をくしゃくしゃにかき乱し、頭を抱えて叫んだそのときだった。
『何か問題がありましたか?』
「っっ?!?!?!?!」
誰だ!?
声は、確かに聞こえた。でも、どこにも姿が見えない。
慌てて周囲を見回す。
「誰だっ!?!?!どこにいるんだ??!」
『あなたの目の前です』
目の前?
そこにあるのはさっきから見上げていた、巨大な古代樹。
まさか……
「……お前か?」
『はい。そうです』
「なんだ、木か……って納得できるか!!」
『まぁ、そうですよね』
「いや、そっちが納得するのかよ…」
生きていた中で木と喋る、なんて当然経験はない。
が、この神秘的な空間では、なぜかすんなりと受け入れてしまう自分がいた。
「ところでお前、いやお前は失礼か・・・
なんて呼べばいいんだ?」
『名前を聞かれるのは久しぶりですね、ふふ。
……私は、ドリアードと申します』
「俺はそうだな……あさ……」
――ごめん、もうインできないと思う
頭の中に、遠い記憶がよぎる。
「……いや、“ソロの人”って呼んでくれ」
『ソロの人……それが、あなたの名前なのですね?』
「名前と言うには微妙だけど、これが落ち着く」
ドリアードは何か言いたげだったが、俺が先に問いかけた。
「ドリアード。ここはどこなんだ?」
『どこ……それは、難しい質問ですね』
「難しい?」
『はい。ここは何処か――それを私が知ることはできません。
選ばれし者が、望んだ世界に導かれるだけです』
「……選ばれし者?」
『生命を終えた者は、最後の瞬間にチャンスを得ます。
そのチャンスを選び取った者が、望む世界へと導かれるのです。
それが、選ばれし者――ソロの人、あなたのことです』
その言葉を聞いた瞬間、俺は確信した。
――俺はやっぱり、死んだんだ。
「なるほどな…」
『あなたは自分の死に驚かないのですね』
俺がすんなりと自分の死を受け入れたことに驚いているようだった
「いや……ここに来るまでの記憶は曖昧だけど、
最期に何が起きたかは覚えてる。だから、理解はできる」
『そうですか。多くの人は死を受け入れられず、
泣き叫び、心を失ってしまいます。
心を失った者はこの世界では生きていけず、塵となって消えてしまうのです』
「心を失う、か……」
『……』
「でも、本来はそれが普通だよな。
死んだことで、やり残したことや後悔があれば、すんなり受け入れられない。
毎日をちゃんと生きてた人ほど、充実していたのだから、当然死を受け入れるのは難しいんだと思う」
『ではあなたは元いた世界で充実していなかったということですか?』
「まぁ、そうだな笑」
苦笑いしながら目線を落とす俺に、ドリアードが続けた。
『なるほど。だからあなたの望む世界が、ここなのですね』
「ん???」
『あなたが望んだ世界は――
ドラゴンや野獣、スライムなどの未知のモンスターが 渦巻き、
魔法族、ケモノ族、エルフ、ゴブリン……さまざまな種族が共存する混沌の世界。
王族によって統治される一方で、
反乱軍や族同士のナワバリ争い、略奪者による騒乱も絶えません。
討伐部隊やクエスト依頼などもありますが、手柄を横取りする盗賊も多く、
治安は“まずまず”……というところでしょうか。
……そして、この世界は今もなお未解明。
未知があふれる、無限の冒険世界です』
……情報量が多すぎて、しばらく固まってた。
「…さすがに盛り込みすぎたか?」
自分の願った世界の盛り込み度に若干引きつつ笑っている俺にドリアードはひと息置いて、優しく言った。
『未知の世界とは、つまり“冒険し続けられる世界”。
元の世界を充実していなかったと感じていたあなたには、きっと相応しい場所です』
「……俺に相応しい世界、か」
『ソロの人』
「ん?どうした、ドリアード」
『あなたに――
この世界を生き抜くための能力を、一つだけ授けましょう』
おおぉぉぉぉお!?
来た……来たぞこの展開!!!!
「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
『………………』
取り乱した。(ごめん)
「すみません、興奮しました」
『構いません。それほど喜んでいただけるのは光栄です。
――では、何か希望はありますか?』
「そうだな……俺は“ソロ活”をするつもりだから、
一人でも生き抜ける力がほしい」
『一人で生きていける能力、ですね。……では、これを』
ふわりと俺の目の前に現れたのは、
魂のように淡く光る、丸い球体だった。
触れようとするも、指先はすり抜けてしまう。
「これが……能力?」
『はい。――目を閉じてください』
言われるがまま、俺は静かに目を閉じた。
ーーーー・・・・
◇
ドリアードから「目を閉じて」と言われて、どれくらい経ったのかは分からない。
でも、確かに何かが変わった。
俺の世界が、少しだけ違う空気を纏っていた。
目を開けたその瞬間、
目の前に飛び込んできた光景はーー
「トロールだあああああああああっ!!!!!!」
なんだあれ?!
あれ絶対3メートルは余裕で超えてるだろっ!!
お世辞にも「いい顔色ですね⭐︎」なんて言えない、灰緑色の肌。
だけど、その濁った目だけは、ピタリと俺を捉えて離さなかった。
そして極めつけは——あの腕。
丸太だ。まるごと1本、人間を潰すために存在してるような凶器。
あんなのに殴られたら……間違いなく死ぬ!!!!
転生して数分で死亡とか、シャレにならない!!
俺の異世界ライフ、初日で終了なんて——そんなのはごめんだ!!!
「おいドリアード!!こんなスタート聞いてないぞ!!」
迫りくるトロール。
樹々をなぎ倒しながら、まるで獣みたいに突進してくる。
「……あいつ、でかいくせに、なんであんなスピードで走れんだよっ!!」
思わず叫びながらも、足は必死に動かしていた。
けれど、そのときだった。
俺の脳裏に、ドリアードのあの言葉がよみがえる。
ーーあなたに――この世界を生き抜くための能力を、一つだけ授けましょうーー
その瞬間だった。
理由もなく、ただ直感で、俺の中にひとつの言葉が浮かんだ。
「……《Noa-ノア-》」
その言葉が漏れた瞬間、俺の周囲の空気が、ピキンと弾けた
地面の下から、無数の光の粒が舞い上がり、俺の周囲に浮かび始める。
視界に現れたのは、何も存在しない“空の設計図”。
「……創れ。俺だけの、武器を」
光がひとつに集まり、そこに“形”が宿る。
俺の手に現れたのは、まるで炎を宿したような、大ぶりの片手剣だった。
トロールが迫る。
巨体を揺らし、地響きを鳴らしながら、腕を振り上げて突進してくる。
逃げていたはずの俺の身体が、自然とトロールに向き直り、俺は剣を構えた。
「来いよ、怪物……!」
斬撃。
風すら裂くような一閃が、空気を震わせ、トロールの胸元を縦に切り裂いた。
「っらああああああああっ!!!」
ドォンッ……!
地響きを残して、トロールの巨体が地面に崩れ落ちた。
静寂が戻る。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
俺は剣を肩に担ぎながら、その光景に――ただ、息を呑んだ。
倒れているのは、さっきまで俺が“死を覚悟”した怪物だ
「……マジかよ、俺……やったのか……」
言葉が漏れた瞬間、膝がガクンと震えた
全身に残る恐怖と興奮が、ようやく追いついてきたらしい
けど、それでも剣は――しっかりと、俺の手の中にあった。
「これが……《Noa-ノア-》……」
俺だけの、力。
俺だけの、世界で生きていくための能力。
「……ソロ活、始まったばっかだってのに……ハードモードすぎるだろ」
冗談のように笑いながら、俺は空を仰いだ。
森の木々の隙間から、やけに青い空が見える。
「だけど…転生したならこうでなきゃな」
俺は背中に剣を背負い、トロールの亡骸を背後に歩き出した。
俺の“異世界ソロ活”の第一歩がここから始まる
「ノア」設定まとめでっす
※こうしてメモしておかないと忘れちまうよ…
名前:Noa -ノア-
分類:創造系ユニークスキル(世界に一つだけ)
効果(案)
①無から有を創造する。物質、空間、概念すら作れる可能性あり。
②「素材不要」で建物・兵士・道具などを創り出す。
③ただし、創造には“意志”や“イメージ”が必要。
④成長型スキルで、使うほど範囲・精度・規模が拡大していくイメージ