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私のつづら。  作者: のん
9/20

険しきなりパンの道。


日本人はすぐに「道」にしたがるそうだ。

剣道、柔道、茶道、華道、武道‥言われてみれば確かにそうだ。


かくいう私は一時期、パン道を極めているの?と、思うくらい一時期パン作りにハマっていた。なにせつい最近引っ越すまでパン屋が遠い僻地に住んでいたのだ。


車で行くと都内なら三十分掛かる距離にあったパン屋。

そこのパン屋、愛想はどこかへ置いてきたおばちゃんが店番をしているのだが、「早くしろ」とばかりに選んでいる間中、不穏なオーラを漂わせるので落ち着かない。



それならどうするかって「自分で作る」一択だ。



作れるものは作るのが私‥。

天候によっては品物が届かず、パンと牛乳がすぐ売り切れてしまう僻地にいたので、それなら自前でどうにかするしかない。


幸い、周囲に人がまったくいない場所に住んでいたので、どれだけパンを捏ねても叩いても「虐待?」なんて疑われない。と、いう訳で小麦粉5キロ袋を4つ買って、毎日毎日まずはオーソドックスな丸パンを焼いた。


というか、パンって焼きたての匂いが最高だよね‥。

一次発酵、二次発酵と面倒だな〜と思うんだけど、あの焼きたての匂いを嗅ぐと、手間暇がどうでも良くなる。毎回焼きたてを食べて、「うむ、美味しい!天才!」と、自画自賛しておりました。


ベーっと一次発酵したパンの生地を手で平らに伸ばし、クルクルと巻いて、両端を摘んで離れないようにして二時発酵して焼くだけだったけど、食パンしか選択肢のなかった家族は大喜びで毎日ハムや卵を挟んで食べていた。



が、私は段々それ以外のパンも食べたくなり、ネットで検索して今度はベーグルを焼き始めた。こちらはあまり家族に好評頂けず、ただ私ばかりが美味しい思いをした。クランベリーを入れたベーグルは至高!お陰で体重もすくすく成長した。



そうして体重を横目に見つつ、メロンパン、アンパン、ミートパン、米粉のパンなど作って楽しんでいたが、ある日突然家族に、



「食パン食べたい」



と、言われ、なんだか食パンに負けた気分になった。

でも、私のパンも美味しいと思うんだけどな‥。と、自分で焼いたパンを見ながらアンニュイな気分になったもんだ‥。


そんな時、コロナが流行。

皆様、ステイホームになって何が流行ったか覚えてらっしゃいます?


そう、日本人一斉にパンを焼き始めたんですよ。


家にいるだけって退屈だもんね。

でも皆同じことするのもどうかな??って思うけど、美味しくて楽しくて、気も紛れるしね‥。お陰でいつも買っていた小麦のお値段がバカ高くなるし、入手できなくなるし、小麦粉を50キロ買っている人から分けてもらう始末‥。米粉もうどん粉も失くなって、私はパンを焼くのを諦めた。


しかし、諦めても挫けはしないのが私。



「パンがないならデュモラセモリナがあるじゃない」



ええ、とどのつまりパスタに使われる小麦粉です。

私は諦めの悪い女。そして何かを作っていないと死ぬ‥。前世はマグロだった父と母の血をこの時ばかりは感じたね。


ともかく粉を注文し、私が作ったのは「オレキエッテ」である。


ネットでイタリアで暮らす日本人女性が、耳たぶのようなショートパスタを実際にひょいひょいとスプーンで粉の塊を掬って伸ばしながら作り、茹でたパスタにトマトソースと絡めてチーズを振りかけて食べる‥なんてのを見たら、


「よし!!作るか!!!」


と、なるのが私です。

前世はマンボウのくせに食いしん坊万歳!私の行動は早かった。

粉を混ぜ、ピカピカに磨いたテーブルの上でネットを凝視しつつ、見様見真似で作ってみれば、意外にイケる!やれば出来るではないか‥と、調子に乗って相当作ってしまったが後悔はない。


かくて生パスタを作れる!という確信を得た私は、コロナ禍だというのにあれこれ作っては楽しんだ。


‥まぁ、そうでもしないと職場に行けば、いつ感染するかわからない状況だったので現実逃避していたというのもある。なにはともあれ、暗くなりがちな状況で小麦は私を救ってくれた。有難う小麦。



やがてコロナの対処法を学び、少しずつ皆が外へ出れば、小麦粉も戻ってきた。



おかえり小麦。

さてパンでも焼こうかね‥と、思ったが、粉を混ぜる機械が壊れて困っていたご婦人に機械ごと譲ったので、ボウルで手捏ねするしかない。



私は時として諦めの早い女。



今は美味しい食パンをスーパーで買い、「かつてはパン道を極めた事もあってねぇ‥」なんて言いつつ、バターたっぷり蜂蜜たっぷりのパンを有り難く頂戴している。うん、多分、いつか、パン道をまた極める予定‥‥‥です。





なんだかんだと一時はエッセイ部門で4位になりました〜〜。

わ〜〜い!お読み頂きありがとうございます!(^^)

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