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私のつづら。  作者: のん
14/20

お弁当とバナナ。


高校はお弁当だった。

なにせ近所のスーパーが遠い。購買でパンも売っていたけれど、万年金欠。


そうなればお弁当である。

とはいえ、高校生当時の私はやたらと眠くて母に叩き起こされてもすぐには起きられない。それでもなんとかお弁当用のおかずをしょぼしょぼの目で詰めて学校へ行っていた。‥高校生くらいのお年頃ってなんであんなに眠いんでしょうね。夜十時には寝ていたいい子だったのに、ともかく寝ても寝ても寝たりなかった。



そんなある朝、起きたらお弁当が布に包まれている。



「あれ?お弁当‥」

「あんたがいつまでも寝てたからお父さんが詰めてくれてたよ!」

「え?!お父さんが???」



自分の皿を下げないあの父が、私のお弁当を詰める?やっておいてもらってなんだけど、私は「珍しいな」と、思いつつお弁当をリュックにしまって学校へ行った。


そうして待ちに待ったお昼ご飯!

お弁当を開けて早速ネギと鶏肉の塩炒めを食べると、なんだか甘い。


ん‥?お肉が甘い?


塩と砂糖を間違えたのかな?と、思いつつもう一つネギと一緒に鶏肉を箸で摘むと、お肉の下に羊羹がぎっしり詰まっている。


羊羹が、詰まってる‥?一つ摘んで食べれば、当然だけど甘い。

それを見た友達が私のお弁当をまじまじと見て、


「なんで羊羹が入ってるの?」

「わかんない‥。もしかしたらお父さんの仕業かも」

「え?!お父さん?」

「お父さんが今朝お弁当を詰めてくれたから‥」

「‥あんた、自分のお弁当くらい自分で詰めなよ」


仰る通りです。

でもまさか羊羹を入れられると思わなかった。

友達には「面白いお父さんだね」と、笑われつつのお弁当タイム。まぁ、楽しかったしいっか‥。なんて思ってたら、翌日も父がお弁当を詰めてくれた。


しかも今度はニヤニヤしている。

‥絶対、今回も何かしたな。しかし私は「‥ありがとう」と、お礼を言って学校へ持っていった。今回は自信作なのかもしれない。



お昼にお弁当箱の蓋を開ければ、ご飯のスペースの横にレーズンパンがギュッと詰められていた。そして、そのレーズンパンの間にご丁寧にバナナとクリーム。


うん、ご飯からバナナの香りしかしない。

バナナって強い。おかずと一緒に果物を入れるのは危険だな。


もしゃもしゃとバナナとクリームの挟まったレーズンパンを先に食べていれば、友達が私のお弁当をまじまじと見てから顔を上げ、


「もしかして、またお父さん?」

「そのお父さん。今日のおかず餃子なのに、バナナの香りがする‥」

「また朝寝てたの?自分でやればいいのに!」

「‥いや、ちゃんと今日は起きたのに既に詰められていたの。やる気満々だったんだよ」


心なしかバナナ味の餃子を食べる私を爆笑する友達。

父にクレームを入れると、味をしめたらしい。それ以降時々お肉の横に餡子を詰めたり、梅干しの代わりに赤いチョコを入れられた。調子づかせるきっかけを作ってしまったと後悔したが、早起きできない私を妹と母に「早く起きればいいだけだ」と、突っ込まれた。いや、止めてくれよ。


だけど細かいこたぁ気にしない私は、それを普通に食べていた。前世はマンボウで本当に良かった。貴族だったら卒倒してたね。



時々、びっくり弁当箱な日々を過ごしていたが、お金もなければ遊ぶ場所も全然ないド田舎。カラオケもコンビニも映画館もゲーセンも一軒もない地域で、何を楽しめばいい?



食である。

田舎あるあるだが、田舎の民ほど食に拘りが強いと思う。

遊びも大してないなら、三食食べるご飯に自ずと力が入る。遊べる場所がなければ、飲んで食べてが最高の娯楽になるのだ(多分)



「と、いう訳でお弁当パーティーしよう」



私が提案すれば、いつも「はいはい」と流す友人達が「何をするんだ?」と、食いついてくれた。優しい、マジで有り難う。


「サンドイッチパーティーしたい。パンは焼いてくるからハムとか卵ペーストとか各々作って持ち寄って食べよう!」

「いいね。私、卵ペースト担当」

「じゃ、私ツナ担当」


皆個性的な性格をしているのに、そんな時だけ決まるのは早かった。

翌日、各々が持ち寄った具材で焼いてきたパンに挟んで、お弁当ならぬサンドイッチパーティーを教室で開くと、他の子達が「何してるの?」と興味津々で聞いてきた。ええ、パーティーです。


前世が貴族だった故のパーティーは楽しく、ほどよく注目も浴びてお年頃の私達は味を占めた。そうして、次はソーメンパーティーを開催。


麺つゆ担当、麺担当、具材担当。


それぞれお椀を持ち寄り、「この具材入れるのいいね」などと食べて楽しむ。学校へ勉学?いいや、我々は食を楽しむ為に学校へきているのだ。大いにソーメンを平らげ満足したソーメンパーティー。



その後も家庭科室を借りて、焼きそばを作ったり、お肉を焼いたりしてたけど、かなり楽しいお弁当生活だった。今はお弁当とは無縁の生活だけど、「果物はお弁当箱に一緒に入れてはいけない」とバナナを食べる度に思い出すのであった‥。




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