時空魔法の蓄積障害──宇宙崩壊はすでに始まっている
冥界───。
「緊急搬送だ! アイルの魂を救う。猶予は20秒! 準備は整ったか!」
シルヴァーナの声が、冷たい闇を裂く。
「……ねぇ、僕の声、届いてる? このままだと、光は終わりを迎え、闇の時代になるよ」
グレイスフルが震える声でアイルに呼びかける。
かつての第一創世神としての責務を感じる。
「……肉まん、もう……喰えへんのか?」
か細い声が静寂を突き抜ける。
軽口を零すその声は、紛れもなくアイルらしい。
「待て、今だ! 魂の周波数が安定した! 復元作業に入る!」
ロウィンの鋭い声が、クロエを奮い立たせる。
「わ、分かったわ、パパ……! 時空領域展開──!」
クロエが声を張り上げる。
瞬間、冥界の闇に幾千もの七色の術式が刻まれ、空間が光に揺れる。
魂は光の器に吸い込まれる。
透明な糸のように手元へと流れ、少しずつ形を取り戻す。
だが、決定的な代償があった。
「だめだ、記憶が消えていく……復元は『時を巻き戻す行為』と同じ」
ロウィンの叫びが響く。
日常の小さな思い出、愛着のある物の名、誰かの笑顔。
さらにアイルの姿が少女へと変わっていく。
そして、冥界の空に巨大な時空大渦が発生した。
全員が窓の外を見る。
「何が起きているの……?」
シルヴァーナが驚きの声を上げた。
「恐らくだが、これまで時空魔法を使いすぎた後遺症だと思う。最初から分かっていたことなのに、世界どころか、宇宙への影響が大きいレベルだ」
ロウィンが下を向いて、意見を述べた。
「急いで避難しないと!」
クロエが術式を維持したまま後ずさる。
七色の紋様が揺らぎ、安定していた光が不規則に跳ねた。
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