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009 ゲームの中の真実

 アナザー・エデンを倒した後、ロウィン、エリス、マリスの三人は「はじまりの町」に戻ることに決めた。時空の歪みが消え、世界は少しずつ安定を取り戻し、三人の心にもようやく一息つける時間が訪れる。


 町に戻った三人は、平穏を感じながら歩いていたが、町の空気にはどこか張り詰めた緊張感が漂っていた。通りを歩く人々の表情に、普段とは異なる何かを感じ取る。


「町の雰囲気が変わった気がする」


 エリスが広場に足を踏み入れた瞬間、口にした。


「確かに、いつもと違うな」


 ロウィンも周囲を見渡しながら答える。


「何かあったのかな?」


 マリスが警戒した。


 三人は町の中心部に向かって歩き続けた。広場には市場が開かれていたが、いつもよりも人々が集まり、熱心に話し合っている様子が見て取れる。商人たちの声が遠くから聞こえてくるが、その内容が普段と異なっていることに気づく。


「聞いたか?」と、商人の一人が声をかけてきた。


「魔王が倒されたって噂が広まってるんだ」


「本当なのか?」


 ロウィンはその言葉に耳を傾け、エリスとマリスも立ち止まった。


 商人は続ける。


「最初は信じられなかった。でも、どうやら本当らしい」


「魔王を倒した人物は?」


ロウィンが尋ねると、商人は少し考え込んでから答えた。


「勇者サラのパーティーらしい」


 ロウィン、エリス、マリスは商人の話を聞き、しばらく黙って考え込んでいた。サラが魔王を倒した後、神々との謁見を果たし、人間界に戻ったという話は確かに驚くべきものだった。


「サラが魔王を倒した後、神々と謁見を?」


「それ、伝説の話じゃないの?」


 エリスとマリスは眉をひそめながら、互いに顔を見合わせた。


「でも、町のみんながこんなに騒いでいるってことは、何か本当にあったのかもしれないわ」


 ロウィンは再び考え込む。タイムリーパーとして未来を見てきた彼は、アナザー・エデンを倒し、時間の歪みを修復した。しかし、サラという人物が何者なのか、なぜその伝説が生まれたのか、未だに謎が多い。


 そのとき、ロウィンの胸に強い予感が走る。視界がぼやけ、歪みを感じる。それはまるで、ゲーム内のイベントが始まるような感覚だった。


「ロウィン、どうしたの?」


 エリスが心配そうに声をかけるが、ロウィンはその声に反応せず、視界がさらに歪むのを感じた。周囲が回り、地面が揺れる。そして—


 ピッ!


 ロウィンは目を閉じ、意識が遠のいていった。


 目を開けたとき、周囲はまったく異なる風景に変わっていた。目の前に広がるのは、見たことのない古い町並みだ。建物は木造で、道は石畳で覆われている。


「ここは……?」


 ロウィンが呟きながら立ち上がると、周囲の人々が彼を見て驚き、声を上げた。その服装は、現代のものではない。


「異世界から来たのか?」


 誰かが驚きの声を上げる。


 ロウィンは状況を理解しようと固まったが、次第に自分が過去の世界に飛ばされたことに気づく。彼は「ゲームの中の世界」として知っていた時代に、実際に入り込んでしまったのだ。


「100年前の世界……?」


 ロウィンはその言葉をみしめるように言った。


 サラの名前を聞いたときの予感が、ついに現実となった。彼が立っている場所は、ゲーム内で知っていた「サラと仲間たちの冒険」の時代そのものであり、現実の歴史がゲームの物語と重なったのだ。


 その時、エリスとマリスも目を覚ました。二人はロウィンと同様、周囲を見回し、困惑の表情を浮かべている。


「どういうこと……?」


 エリスが問いかける。


「何が起こったの?」


 マリスも目を見開いた。


 ロウィンは二人を見て、驚きの表情を浮かべた。なぜなら、二人の姿がゲーム内で見たエリスとマリスとは異なっていたからだ。ゲーム内でのエリスは冷静で落ち着いたキャラクターだったが、今の彼女は恐怖と混乱に包まれている。マリスも、ゲーム内で抱えていた暗い過去とは打って変わり、少し柔らかい印象を与えていた。


「エリス、マリス……?」


 ロウィンは驚きと疑念が入り混じった表情で二人の名前を呼ぶ。


 二人は目を合わせ、戸惑いながら頷いた。


「……ロウィン、覚えてない?」


 エリスが震える声で言った。


「私たちは、ゲームの中に閉じ込められていたんだ。最初は記憶をリセットして、みんなのことを忘れて……」


「でも、今は全部思い出した」

 

 マリスが続け、驚きと共に過去の記憶が蘇っていく様子が浮かんでいた。


「ゲームの外に出て、やっと本当に自分たちが誰で、何をしていたのかを思い出したの」


 ロウィンもその言葉を聞いて、少しずつ記憶が戻ってくるのを感じていた。彼が最初にゲームに入ったとき、選んだのは「記憶のリセット」だった。ゲーム内では過去の記憶を持たず、ただ冒険を重ね、仲間と共に戦ってきた。しかし、今、現実に戻ったことで、その記憶が一気に蘇ったのだ。


「そうだ……俺は、記憶をリセットして、この世界に入った」


「でも、今ようやくすべてがつながった」


 エリスとマリスは静かに頷いた。その時、三人の前には、ゲームの中で経験した冒険と戦いが重なり、あらゆる出来事が一つの大きな歴史としてつながった感覚が広がった。


「人間界の100年前の世界、サラの時代……これが、俺たちの本当の歴史なんだ」

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


 「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたなら、ぜひブックマークや評価での応援をお願いします。とても励みになります!


 これからも、心に残る物語を届けられるよう精一杯書いていきます。

 どうぞよろしくお願いいたします!

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