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067 大ハーレムの宴、暗黒舞踏会の終幕

挿絵(By みてみん)

<シルヴァーナ>



 ロウィンの瞳が、黄金の光を宿した。


「打ち合わせ通りに行くぞ」


 その声には、絶対の確信があった。


 シルヴァーナは魔力の波を読み取り、静かにうなずく。


「了解。全力で支援するわ」


 ヴァルカは高らかに笑い、闘志を隠さない。


「覚悟しておけ。誰も、止められはしない」


 リリスはわずかに指先を動かし、黒い魔力の糸を張る。


「供給ライン、確立。魔力はいつでも流せる」


 アルティアが薄い光の魔力をまとい、ふわりと宙へ浮かび上がる。


「ロウィン様の指示に従います」


 アリアは胸の奥で息を整えた。


(――やらせはしない!)


 


 ディナーの終盤、舞踏会の音楽が静まっていく。

 貴族たちは最後のダンスを終え、シャンデリアの光の下で余韻よいんに浸った。


 その中央に立ったのは、主催者アズラ・ダルファリア卿。

 黒いローブに包まれた上級魔族が、角を光に反射させて微笑む。


「皆様、本日はご来場、誠にありがとうございます!」


 芝居がかった声が響き、観客席がざわめいた。


「暗黒舞踏会の開催を心より光栄に思います。今宵こよいの宴が終わることを惜しむ声が、私には聞こえる……さあ――最後のダンスを!」


 会場が沸き、拍手と歓声が渦を巻く。

 だが、その歓喜は一瞬で凍りつくことになる。


「イッツ・ショータイム!」


 アズラが両腕を広げると、床一面に魔法陣が出現した。

 赤黒い光が交差し、ロウィンの足元を取り囲む。


 観客たちは最初、それを演出と思った。

 だが――息が詰まる。


 温度が下がり、空間がきしむ。

 空気が、異常だった。


 ロウィンが詠唱えいしょうを放った。


千年ミレニアム魔法マジック


 金色の光が放たれ、会場全体を包み込む。

 時間が狂い、壁も床も揺らぎ始めた。

 宙には巨大な時計盤が浮かび、針は止まったまま微動だにしない。


 魔法陣の動きが止まり、世界が沈黙した。

 声も、風も、光さえも――動かない。


「……なに? 体が……動かん!」

「魔力が……消えたのか!?」


 天界の神々、魔族、冥族、人間。

 全ての存在が、ひとりの男の魔法に支配されていた。


 リリスとアルティアが同時に手を掲げた。


「――魔力解放!」


 ダークエルフ王国の貯蔵魔力が奔流ほんりゅうとなり、ロウィンたちの陣へと流れ込む。

 その光が天井を貫き、神秘的な白い輝きを放つ。


 シルヴァーナは瞳を閉じ、息を深く吸いこむ。

 そして――詠唱えいしょうを始めた。



『支配と法の神、ゼウス!』


 雷鳴がとどろき、金の鎖が空を裂いた。


「愚かな者どもよ――貴様らの思い通りにはさせん!」



『人間界の大英雄、アレクサンドリア!』


 聖剣が現れ、刃先が光をきらめかせる。


「さあ、どうする? これ以上の猶予ゆうよはないぞ!」



『魔王アスタロス!』


 咆哮ほうこうが会場を満たし、空気が震動した。


「我が領土を奪うつもりか……全てを滅ぼしてくれる!」



『冥王、ハルバス・ドラウグス!』


 黒い霧が噴き上がり、闇が会場をおおう。


「わらわのいない間に――何を企んでおる!」



 観客たちは息を呑み、誰一人として身じろぎすらできない。


 シルヴァーナが命ずる。


「会場を封鎖ふうさ――誰一人、逃がすな」


 ヴァルカの背から紅蓮ぐれんの光がぜる。


「闘神アグリオン・ラグナス、顕現けんげん!」


 肉体が膨張ぼうちょうし、血潮のような闘気があふれ出した。

 闘神の視線が神々を貫いた。


「何かあれば、全滅させるぞ」


 その一言が放たれた瞬間――

 ロウィンとその仲間たちの存在が、この夜の秩序そのものを、塗り替えた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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