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063 アリアの瞳に映る未来

 デビュタントダンスが終わると、舞踏会の空気はたちまち自由になった。貴族たちは種族や身分の垣根を越え、純粋にダンスを楽しみ始める。


 そんな中、ロウィンの前に現れたのは、彼の運命を象徴しょうちょうする令嬢たちだった。


 最初に姿を見せたのは、神族のカリナ。光沢ある白の衣をまとい、背中に流れる銀髪が、彼女の完璧なまでの気品を際立たせる。


 柔らかな声で、彼女は言った。


「今夜の舞踏会は見事ですね。……あなた様と踊ることは、私たち神族の義務ですから」


 彼女の手を取った途端、ロウィンは神聖な威圧感に包まれた。全身の不純物が即座にはらわれる感覚は、束の間の安らぎであると同時に、息苦しさも伴っていた。


 続いて前に進み出たのは、魔族の令嬢ゼフィラ。深紅のドレスに黒髪、赤い瞳が妖しく輝く。彼女は挑発的な笑みを浮かべた。


「あなたと踊りたくて、身体がうずきますわ。さあ、全てを忘れて、私だけを見て」


 その手から伝わる濃密な魔力に、ロウィンは思わずたじろいだ。彼の全身を護るヴァルカの魔法障壁さえきしませるほどの強烈な情熱と独占欲。とんでもない女だが、この危険なダンスが、かえってロウィンの闘志をかき立てた。


 人間界から来た勇者令嬢ハナコも、優雅に歩み寄る。鮮やかな緑のドレスが、彼女の力強さを際立たせていた。その瞳は戦場の全てを見通す冷静さを帯びている。


「一緒に踊れば、この空気も変わるかもね。……ねぇ、あの魔族の娘の踊り方、どう思う?」


 ロウィンはその知的な視線に、不思議な安心感を覚える。彼女の手は心地よく、ロウィンが背負う重荷を理解してくれる、「同志」としての確かな信頼感が生まれた。


 そして、最後にロウィンと対面したのが、転生令嬢のアリアだった。漆黒のドレスに身を包み、時の流れの先を見つめる瞳には、不思議な力と抑制された悲壮な決意が宿っていた。


「ロウィン様、あなたと踊れるなんて光栄です」


 その微笑みは、これまでにない温もりを彼の胸に灯す。ロウィンは、抗えない予感に突き動かされた。


「君のことが、どうしても気になる」


 アリアは静かにうなずき、ささやいた。


「あなたが背負っている運命……。この世界が迎える結末。私の話を聞いてください」


 その瞬間、会場が闇に沈み、音楽が止まる。ざわめく中、アリアだけが動じず、彼を見つめ続けた。


「怖がらないで」


「何が起こっている……?」


 戸惑うロウィンに、彼女はそっと告げる。


「あなたを守り、そして、共に戦う。それが私の転生した意味だから」


 その瞳の奥には、揺るぎない覚悟があった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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