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061 ヴァルカの野望

 誘惑の女神イヴリスは唇をとがらせ、まゆをひそめた。


「ちぇっ、上手くいくと思ったんだけどなぁ」


 その言葉には、計画が狂った悔しさがにじんでいた。


 ヴァルカは落ち着いた声で返す。


「まさか、女神自ら手を下すとはな」


 イヴリスは挑発的に微笑んだ。


「暗黒舞踏会で★5(ファイブスター)の称号を持っていても、あなたに勝ち目はないわ」


 ヴァルカの魔力が全身に満ち、強い覚悟が宿る。


「手加減はしない。ロウィンは、俺が先にいただく」


 イヴリスは唇の端を上げる。


「ふふ、面白いわ。私も引く気はない」


 空気が張り詰め、室内の温度が変わる。

 二人の間に殺気が走った。


「何が始まるんだ……?」


 ロウィンは圧倒され、声を漏らす。


「外で待て。何があっても中に入るな」


 ヴァルカが命じると同時に、魔力が爆発した。



 時間が静かに流れる中、VIPルームの奥から衝撃音しょうげきおんが走る。

 

「――ああぁ……!」

「どうした、もう限界か?」

「……くっ……! ここまでとは……!」

「感じるか? これが俺の力だ」


 魔力の波動が壁越しに伝わり、ロウィンは胸の奥を締めつけられる思いだった。


「……どっちが勝つんだ……?」


 リリスとアルティアは、思わず顔を見合わせた。

 そのほほが赤く染まるのは、熱気のせいか――それとも、別の感情のせいか。


「ヴァルカなら、きっと大丈夫」


 リリスが声を潜めて言う。


 アルティアも真剣な眼差しで言う。


「女同士の誇りをけた戦いです。――私たちは、手を出せません」


 その言葉に、ロウィンは何も答えられなかった。



 しばらくすると、音がぴたりと止んだ。

 張り詰めていた空気が静寂せいじゃくに変わり、誰もが息を呑む。


 やがて、ドアがゆっくりと開く。

 白い光の中から、ヴァルカが姿を現した。


 イヴリスは床に倒れ込んでいた。 

 顔は紅潮こうちょうし、よだれがほほを伝って垂れ落ちている。

 全身から魔力の残滓ざんしが立ちのぼり、完全に力を使い果たしたことが分かる。


「今回の暗黒舞踏会の目的は……ロウィンだ!」


 闇の広間に、ヴァルカの声が突き抜けた。

 空気が張りつめ、場内の全員の視線が一点に集まる。


「皆が、お前の子供を望んでいる。その時空魔法を利用するためにな」


 ロウィンの胸の奥で、何かが音を立てて崩れる感覚がした。


「……どうして、こんなことになるんだ……」

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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