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060 誘惑の試練、勇者の堕ちる先
<イヴリス>
ロウィンがVIPルームの扉を開けると、心臓が跳ね上がった。
目の前に立っていたのは、間違いなくシルヴァーナ。
だが、どこか現実感を欠いている。
「……ようやく来てくれたのね」
甘く囁く声に、ロウィンの足元がふわりと浮いた。
「どうしてここに?」
疑念が頭の中で渦巻く。
「あなたに会いたかったからよ」
頭がぼんやりして、視界がぼやける。
「……こんなにも惹かれてしまうなんて」
差し出された手に、ロウィンはつい応じてしまった。
唇が触れ、低く甘い声が胸の奥まで届いた。
「あなたの心は、もう私のもの」
その瞬間、ロウィンの感覚は闇の奥へ沈んでいった。
「しっかりしろ!」
霧の中からヴァルカたちが現れ、ロウィンを引き戻す。
「一体、何が……?」
シルヴァーナの姿は消え、代わりにイヴリス――誘惑の女神が立っていた。
微笑みには無限の魅力が込められ、ロウィンの全身に鳥肌が走った。
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