058 堕落の宴、暗黒舞踏会への招待状
ダークエルフ王国――
深く沈む闇と冷気が満ちる王城の一室に、一通の黒い封筒が届けられた。
その封筒には、金糸でこう記されていた。
「堕落の宴、暗黒舞踏会」
ロウィンは封を切り、中から手紙を取り出す。
優美な筆跡で、綴られていた。
「貴殿を“暗黒舞踏会”へとご招待申し上げます。
神族、魔族、冥族、そして人間――
あらゆる種族が一堂に会す、特別な夜。
この世の果てなき欲望と快楽を、心ゆくまでご堪能ください」
「仮面をご着用の上、ご来場を。
貴殿の存在は、すでに知られております。
皆が、貴方の参加を心よりお待ち申し上げております――」
読み終えたロウィンは、静かに額へ手を当てる。
それを見たシルヴァーナが、ためらいがちに口を開いた。
「それって……いやらしいパーティじゃないの?」
ロウィンはしばらく考え、ゆっくりと頷いた。
「たぶん、そうだ。でも、ただの快楽じゃ終わらない気がする」
ヴァルカの目が鋭く光った。
「陰謀の匂いがするな」
ルミエールが楽しげに笑う。
「ふふ、ロウィンもついに“大人の世界”デビューね」
ザルクスは腕を組み、渋い顔で呟いた。
「婚約中であることを承知のうえでの招待状か……参加しないという選択もあるぞ」
ロウィンは視線を落とし、黙ったまま思案する。
――行くべきか、それとも避けるべきか。
その葛藤を、皆が感じ取っていた。
だが、ヴァルカは軽く笑い、ロウィンの肩を叩いた。
「心配すんな。一緒に行きゃ、罠なんざ怖くねぇ」
シルヴァーナも真剣な表情で言った。
「私も行くわ。一人でなんて、危険すぎる」
ロウィンは目を見開いた。
「シルヴァーナ、それは……」
「あなたの婚約者として、見過ごせないの」
彼女の意思は揺るがなかった。
しかし、ザルクスは険しい表情を崩さぬまま、口を開いた。
「……シルヴァーナはダメだ」
その一言には、彼自身の過去にまつわる苦い経験が滲んでいた。
ルミエールは口元に微笑を浮かべた。
「ザルクスが初参加のとき、色々とあったのよね」
彼は咳き込み、顔を真っ赤に染めた。
「……それ以上言うな」
ロウィンは顔を上げ、皆を見渡す。
「どうすればいい?」
ヴァルカが、力強く背中を押した。
「気楽に行け。お前が楽しむことも、大事だ」
しばし沈黙が流れ――ロウィンはそっと首を縦に振った。
「……なら、行こう」
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