053 勇者、大人の階段を上る
<ルミエール>
『ヒーローズ・カレッジ』からの帰り道――。
シルヴァーナは、自己紹介の件でロウィンに平謝りしていた。
そのとき、彼が微笑みながら言った。
「可愛い」
胸の奥に温かさが広がり、素直に喜ぶ自分を感じる。
自分をさらけ出す心地よさを味わうのは、これが初めてだった。
――その夜。
シルヴァーナは胸の高鳴りでなかなか眠れずにいた。
新しい一歩を踏み出す決意が、心を震わせる。
そっとロウィンの寝室に向かい、ベッドに忍び込む。
驚かせようとしたその瞬間、耳に届いたのは予想外の声。
「遅いじゃない」
――ベッドに寝転ぶ母、ルミエールがそこにいた。
無防備な姿に、思わず息を呑む。
「母上! いつ戻ってきたのですか?」
「さっきよ。婚約おめでとう」
その言葉に、頬が赤くなる。
「え、ええっ!? どうしてそれを……!」
ルミエールは優しく見つめ、くすりと笑った。
「ロウィンからも聞いているわ。……まだまだ子供ね」
「そ、それは……急なことだったから……」
動揺を隠せないシルヴァーナに、ルミエールは柔らかく言う。
「二人の関係を応援しているわ。ロウィンも素敵な人だから、安心していいのよ」
すると、扉が開き、ロウィンが部屋に入ってきた。
「どうして何も身に着けていないんだ?」
慌てたシルヴァーナは必死に姿勢を正す。
「えっと……その……」
ルミエールはにやりと笑う。
「シルヴァーナはロウィンに会いに来たんでしょ?」
ロウィンは胸の高鳴りを隠せずに呟いた。
「嬉しいよ」
二人が見つめ合うと、ルミエールは転移魔法で姿を消した。
夜の時間がゆっくりと流れる。
シルヴァーナは少し大人びた表情で告げる。
「ロウィンと、もっと心を通わせたい――」
その瞳に込められた想いは、言葉以上に真っ直ぐで、深く確かなものだった。
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