表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

216/290

216 仮面の微笑(ほほえみ)

リルヴァナが連れてきた恋人との出会いが、静かに新たな波乱はらんまくを開ける――。

リルヴァナからの連絡を受けた時、シルヴァーナはすでに心の中である程度ていど予測よそくを立ていた。

リルヴァナが「紹介したい」と言った男性――シルヴァン。

アーリエルの警告けいこくを思い出しつつ、彼女はわずかな違和感いわかんを覚えながらも、表面上はおだやかに返事をした。


「わかったわ、リルヴァナ。連れていらっしゃい。」


数日後、リルヴァナとシルヴァンはシルヴァーナの居城きょじょうを訪れた。

シルヴァンは従者じゅうしゃともない、豪華ごうか貢物みつぎものたずさえていた。

シルヴァーナはそれらをながめながら、心の中では冷笑れいしょうかべつつも、落ち着いた表情でシルヴァンに挨拶あいさつをする。


「初めまして、シルヴァーナです。リルヴァナとは親しい友人なんですよ。」


シルヴァンは微笑ほほえみながら丁寧ていねいこたえた。


「おはつにおにかかります。シルヴァンともうします。リルヴァナさんとは、お付き合いさせていただいております。」


リルヴァナは顔を赤らめ、少しれたようにシルヴァンのとなりに立つ。

シルヴァーナはその様子に一瞥いちべつを送りつつ、やわらかく微笑ほほえむが、その視線しせんは確かにシルヴァンをとらえていた。

――何かが引っかかる。彼の言動には、わずかながら作為さくい気配けはいがある。


アーリエルの言葉が脳裏のうりよみがえる。


「シルヴァンは《異世界連邦サテライト》の者よ。この世界を監視かんしするために送りこまれた可能性が高い。目的は――あなたに近づくこと。」


リルヴァナがシルヴァンを紹介している間も、シルヴァーナは彼の仕草しぐさ視線しせん、言葉の端々までを見逃みのがさず、観察し続けた。

やがて、確信かくしんに近い直感ちょっかんが胸に落ちる。


シルヴァーナはリルヴァナに向かって静かに言った。


「リルヴァナ、今すぐかくれて。」


リルヴァナはその声の緊張きんちょう敏感びんかんさっし、すぐに身を引いた。

シルヴァーナはゆっくりと立ち上がり、シルヴァンの方へとあゆる。


「あなたがリルヴァナに近づいた理由――見抜みぬいているわ。」


シルヴァンは一瞬いっしゅんおどろいたように目を見開いたが、すぐに感情を消し、軽く口元をほころばせた。


「……見破みやぶられたか。やはり、ただ者ではないようだ。」


その言葉にシルヴァーナは反応せず、ただじっと彼を見据みすえていた。

アーリエルの警告けいこくと、彼女自身の直感――すべてが一致いっちしていた。


シルヴァンは《異世界連邦サテライト》の暗殺者あんさつしゃ

リルヴァナを利用し、シルヴァーナを仕留しとめるために接近せっきんしてきたのだ。


わながあることは、最初から覚悟かくごしていた。だから、心配していない。」


シルヴァーナの声は冷たく、らぎがない。

その言葉に対し、シルヴァンは挑発的ちょうはつてきみをかべた。


「なら――試してみるか。」


その刹那せつな、空間がわずかにゆがむ。

アーリエルが姿を現し、ゆっくりと歩み出る。

彼女は深く息を吸い、金色の瞳を開いた。


「絶対服従 《デス・イコノグラフィ》。命令にしたがわなければ、強制的きょうせいてきに命をうばう。」


アーリエルのロイヤルスキルが発動すると、空気が一変いっぺんする。

その意志いしはの内面に深く食いこみ、逃れることのできない支配が始まった。


命令をこばめば、命がけずられる。

したがうまで、痛みと死のかげがつきまとう。

――それは、相手にとって最もおそるべき呪縛じゅばく


シルヴァンとその従者は身体からだ硬直こうちょくさせ、やがてくずれるように意識を失った。

だが数秒後、ゆっくりと立ち上がり、無言むごんでアーリエルの前にひざまづく。


アーリエルは冷やかに見下ろし、金色のひとみを細めた。


「すべてを話せ。」


苦悶くもんの表情を浮かべながら、シルヴァンはふるえる声で語り始めた。


「私はアザロスと『アンノウン』の戦いを、連邦れんぽうめい監視かんししていた。

《異世界連邦サテライト》は、どちらが勝っても疲弊ひへいした勢力せいりょくを利用するつもりだった。シルヴァーナたちの勝利を確認した後、リルヴァナに接近せっきんし、暗殺あんさつ計画けいかくりはじめた。最終的には、連邦の大部隊をこの世界に送りこみ、侵攻しんこうを開始する算段さんだんだった……。」


リルヴァナはその言葉にくちびるみ、しずかに涙を流した。


「……初めて好きになった人だったのに。」


その声に、シルヴァーナは一瞬いっしゅんだけ視線を向けた。

だが、彼女の表情はれず、その瞳はまっすぐ未来を見つめていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ