019 絶望の光
ロウィン、シルヴァーナ、レイナ、かなえは、「世界統一国家ノヴァ・ユニオン」の最新鋭艦隊「ノヴァ・レギオン」が人間界と異世界ラグナヴィアをつなぐゲートを通過する様子を、複雑な思いで見つめていた。
しかし間もなく艦隊は戻ってきた。異世界で遭遇したサイバードラゴン族と機械生命体の干渉を受け、オーバーライド能力によって操られてしまったのだ。その《ノヴァ・レギオン》は、人間界の都市や軍拠点を次々と破壊していく。
最初の標的となったのは、世界統一国家 《ノヴァ・ユニオン》の象徴、巨大都市ニュー・アルカディア。中央政府ビルや軍司令部、通信施設が容赦なく撃ち抜かれ、防衛網はほとんど機能しなかった。都市は瞬く間に瓦礫と炎に沈み、人々の心は絶望に包まれる。
その混乱の中、呼ばれたのは天才ハッカー、ミユ・ナハラだった。彼女は独自のウイルスで艦隊システムを奪い、強引に停止させる。しかし代償として炉心が暴走、艦隊は大爆発を起こす。
遠くの地平線に広がる煙と炎を前に、ロウィンたちは壊滅したニュー・アルカディアへ急ぐ途中だった。だが彼らの視界に飛び込んできたのは、冥界から現れた魔王軍艦隊。
空は暗雲に覆われ、冥王ハルバス・ドラウグスが開いた冥界の扉から瘴気が流れ込む。魔王軍の猛攻は熾烈を極め、防衛軍も都市防壁も一瞬で沈黙した。街は蹂躙され、人々の叫びが虚空にこだまする。
「……ニュー・アルカディアが……」
ロウィンは言葉を失い、ただ目の前の惨状を見つめるしかなかった。
「冥界の力? だから何だ」
シルヴァーナは声を鋭くし、余計な感情を抑えた。
「脅威なら、叩き潰すだけのことよ」
レイナは怒りを燃やし、拳を握りしめた。
「無差別に破壊する魔物たち……もう黙って見ていられません!」
かなえは恐怖に胸を押さえつつも、涙を堪えて声を振り絞る。
「……私たちがやらなきゃ、もっと犠牲が出る!」
その時、突風と轟音が空を裂いた。群星のように光を放ちながら《ルミナドラゴン戦団》が舞い降りる。
先頭に立つのは竜王アルテウス、その背にサラの姿。揺るぎない決意を宿した瞳が闇を射抜く。続いてダリウス、アリスティアが降下し、戦場にその足を踏み入れた。
アルテウスが大地を震わせる着地を決めると、サラは軽やかに飛び降りる。駆け寄ったレイナが肩を叩き、笑みを浮かべた。
「来てくれた、これで反撃できる!」
「遅れてすまないニャ」
サラは小さく微笑んだ。
かなえも駆け寄り、まっすぐな瞳で言う。
「私たちの力を合わせて……絶対に勝とう!」
沈黙していたロウィンが静かに口を開く。
「希望はここにある!」
ロウィンは仲間たちを見渡し、拳を握りしめる。
「人間界の勇者も動き出している。俺たちが力を束ねるんだ!」
サラは小さく頷き、遠くに迫る巨大な影を見据える。
「戦力が増えるのはありがたい」
冷静に呟くシルヴァーナの声にも、わずかに熱が宿っていた。
再び風が荒れ、空の彼方から低くうねる響きが近づいてきた。
空気そのものが重く沈み、不穏な気配が辺りを包む。
冥界の力を得た魔王軍艦隊――その全貌が迫りつつあった。
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