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017未来を守る者たち

 勇者養成RPG「吾輩は異世界から来たニャン娘なり!」をプレイしていたロウィンとシルヴァーナ。

 だが突如、ゲーム内で想定外のイベントが発生し、二人はタイムリープに巻き込まれた。

 そこは100年前の人間界。勇者サラたちが「神の勇者」として戦乱に終止符を打とうとしていた。


 戦況は終息へと向かっていたが、冥王ハルバス・ドラウグスは、敗北した魔王アスタロスの魂を奪い取った。

 それを利用し、再び多元世界に戦乱を広げようとしている。各地で不穏な動きが活発化しつつあった。


 ロウィンとシルヴァーナは、今後どう動くべきかを話し合っていた。

 世間では「人間界の勇者が異世界ラグナヴィアへ侵攻する」という噂が流れていたが、それは真実とはかけ離れていた。


 実際には、統一国家 《ノヴァ・ユニオン》が誇る艦隊 《ノヴァ・レギオン》が、ラグナヴィアの資源と特異種族を狙い、侵略作戦を進めていた。

 同時に――冥王軍と魔王軍は密約を交わしていた。

 その内容は、魔王アスタロスの魂を返す代わりに、魔王軍の領土を譲り渡すというものだった。


 ロウィンとシルヴァーナは、未来の知識をこの時代のサラたちに伝えるべきか悩んでいた。


「私たちが動けば、今の世界に影響を与えるかもしれない。そう考えると、踏み出すのが怖いの」


 シルヴァーナは遠くの空を見つめながら、過去の世界でロウィンと静かに暮らすという選択も頭に浮かべていた。

 彼と共にいられるだけで、心は穏やかだった。


 ロウィンはしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。


「俺たちで冥王軍の企みを止めよう。サラと力を合わせて」


 その言葉に、シルヴァーナは小さく息を飲んだ。


「でも、本当にそれが正しいの?  サラに任せる方がいいんじゃない?」


「任せきりじゃ戦争は防げない」


 ロウィンは目を閉じ、言葉を続けた。


「冥王軍が動き続ければ、いずれまた火がつく。止められるのは、今この時しかない」


 シルヴァーナは表情を曇らせながら問いかけた。


「もし私たちが過去に干渉して、もっと大きな災いを生んだら……」


「それでも、目の前の戦火を見過ごすわけにはいかない」


 ロウィンの声には、強い意志がこもっていた。


 シルヴァーナはしばらく無言で立ち尽くした。やがて、ゆっくりと口を開く。


「……わかった。あなたがそう言うなら、信じる」


 その声は穏やかだったが、揺るぎなかった。


「いま動かなければ、未来は変えられないものね」


 ロウィンは微かに笑い、そっと彼女の肩に触れた。


「ありがとう、シルヴァーナ」


 彼女は照れたように笑みを浮かべた。


「でも、一つだけ気になるの。冥王軍と魔王軍が本格的に動き出したら、人間界を守れる手立てってあるの?」


 ロウィンは少し間を置き、短く答えた。


「まずはサラに会って、すべてを話そう。彼女たちの力を借りれば、準備が進められるはずだ」


 シルヴァーナは大きく息を吐き、うなずいた。


「それなら、連絡を取って作戦を立てるべきね」


 ロウィンもうなずき、歩を進めた。


「時間は限られてる。急ごう」


 言葉数は少なかったが、二人の中ではすでに動く決意が固まっていた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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