表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/742

014 告白の瞬間

 勇者たちとの戦いを終え、ダークエルフ部隊の指揮官シルヴァーナは冥界へと戻っていた。

 ロウィンとの出会いから数ヶ月が過ぎ、その記憶は色褪せるどころか、胸の内で日増しに強くなっていった。


 彼との戦闘は、単なる任務ではなかった。ロウィンの判断力、周囲への洞察、隙を見せぬ立ち回り──その姿は、シルヴァーナの心に強烈な印象を刻み込んだ。

 剣を交えたあのとき、何度も彼の目を見た。その眼差しの奥に潜むものに、意識が引き寄せられていくのを自覚していた。

 

 戦いの終わり際、彼が何気なく放った言葉は、深く胸に残っている。


「俺の知っている女性に、どこか似てるんだ」


 その言葉を聞いたとき、シルヴァーナは息を詰めた。

 誰かの面影を重ねていたのか、それともただの感想だったのか。意味を測りかねたまま、彼の次のひと言が心を揺らした。


「シルヴァーナ、だよな?」


 名前を口にされたというだけで、心の奥が熱くなった。戦場の喧騒けんそうの中で交わされた短い会話だったが、その記憶は鮮明に残り続けていた。


 やがて、シルヴァーナは決意した。ロウィンにもう一度会いたい。その気持ちが、命令や立場を超えて心の中心にあった。

 彼がどれほど変わっていたとしても、自分の目で確かめたい──そう願った。


「また会えるなら、それだけでいい」


 ロウィンが、かつてとは違う人格でゲームの世界に入り込んでいることは知っていた。

 けれど、それでも構わなかった。たとえ遠く離れていても、彼を理解したいと思った。再会を信じ、歩き出す決意を胸に刻んだ。



 数日後。シルヴァーナは人間界の街に降り立った。

 そこには予想とは違う、穏やかな日常が広がっていた。ロウィンが見せた戦闘時の鋭さとはまるで対照的な、静かな世界だった。


 戸惑いを覚えながらも、シルヴァーナは彼を探して歩き出す。

 そして──見つけた。


 彼は街中で誰かと話していた。歩く姿も、声のトーンも、以前の戦場で見せた顔とは少し違っていた。


「ロウィン……」


 思わず呼びかけていた。彼が振り向き、こちらを見る。

 その目にわずかに驚きが走り、すぐに落ち着いた表情へと戻る。


「シルヴァーナか。どうしてここに?」


 短い問いかけ。それだけで、胸が熱くなった。彼の声が、確かに自分を見ていると伝えてくる。


「話があるの。あのときのこと、そして……私の気持ちについて」


 そう伝えると、ロウィンは少しだけ間を空けてから応じた。


「わかった。少しだけ待ってくれ」


 彼が話していたのは、人間界の勇者たちだった。仲間として情報を共有している様子がうかがえる。

 それを確認し、彼とともに人気の少ない場所へと歩く。


 道を進むあいだ、シルヴァーナの鼓動は早まっていた。もう後戻りはできなかった。


 立ち止まり、ひと呼吸おいて彼の方を向く。


「……会いたかったの」


 短く、でもすべてを込めて伝えた。ロウィンは言葉を返さず、それを受け止めるように視線を向けてきた。


 少し沈黙が流れ、彼が口を開く。


「俺は……お前を傷つけたくない」


 シルヴァーナは驚いた。思わず呼吸が浅くなる。彼の中にある何かを、直感的に感じ取った。


「私が望んでいるのは、あなたと向き合うことだけ」


 彼の痛みを、自分も抱えていきたいと思った。


「だから……一緒にいてほしい」


 それは、長く心に秘めていた想いだった。飾らず、誤魔化さず、すべての言葉をそのまま差し出すように、シルヴァーナは伝えた。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


 「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたなら、ぜひブックマークや評価での応援をお願いします。とても励みになります!


 これからも、心に残る物語を届けられるよう精一杯書いていきます。

 どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ