教授は紅茶が好き - 紅茶の分水嶺
教授の研究室では、今日も紅茶の香りが漂っていた。
助手がカップを持ち上げ、湯気と共に立ち上る香りに鼻を近づけながら、ふと口を開いた。
「教授、紅茶って、いろいろな産地や製法があると聞きますけど、その分水嶺みたいな瞬間って、どこにあるんですか?」
教授は目を輝かせながら、すぐに応えた。「おお、紅茶の分水嶺か!実に面白い質問だね!」と、彼は楽しげにカップをテーブルに置き、話し始めた。
「紅茶の歴史には、いくつかの重要な転機があるんだが、一番大きな分水嶺はやはり19世紀のインド植民地時代だ。元々、中国から輸入されていた紅茶が、イギリスによってインドやセイロン(現在のスリランカ)で栽培されるようになったのが大きな変化の瞬間だ。それまでは中国の紅茶が世界の主流だったが、イギリスがインドでの栽培を推し進めたことで、世界の紅茶市場が一変したんだよ。」
助手は少し驚いた様子で頷く。「インドですか…そんなに影響が大きかったんですね。」
「そうとも!」教授はますます熱を帯びた声で続ける。「インドではアッサム種という茶葉が発見され、それがイギリスの紅茶文化をさらに深めた。アッサムの濃厚でコクのある風味が、ミルクと合うためにイギリスでは爆発的に人気を博したんだ。そこに加えて、セイロンの高地で栽培された紅茶も加わり、現在のように多様な紅茶のスタイルが生まれることになった。」
助手は紅茶を一口飲みながら、「なるほど、じゃあ中国からインドへのシフトが、紅茶の分水嶺なんですね。でも、その後はどうなんですか?さらに変化があったんですか?」
教授は微笑んで「もちろんだ。ティーバッグの登場が次の分水嶺と言えるだろうね。20世紀にアメリカで生まれたティーバッグは、紅茶を手軽に飲めるようにした革命的な発明だった。それまでの紅茶は、葉を丁寧に淹れることが主流だったが、ティーバッグは忙しい現代人にピッタリだった。これで紅茶はさらに大衆化して、今では世界中で愛される飲み物になったんだ。」
助手は感心しながら、「確かにティーバッグは便利ですね。でも、教授はいつもリーフティーですよね?」
教授は頷いて、「ああ、私は伝統を重んじる。紅茶の本来の豊かな風味や香りを楽しむには、やはりリーフティーが最適だからね。でも、分水嶺という意味では、ティーバッグが紅茶文化の大きな転換点だったことは間違いない。便利さと質のバランス、これも一つの調和だよ。」
助手は笑顔で「なるほど、紅茶にもそんな深い歴史があるんですね。分水嶺を超えたたびに、新しい調和が生まれるってことですね。」
教授は満足そうに紅茶をすすりながら、「そうだよ、紅茶も人生も調和が大事なんだ。」
---
助手が少し照れ笑いを浮かべながらバッグから小さな箱を取り出す。「そういえば教授、先日イギリスに行ったお土産です。」助手は教授にその箱を渡す。
教授はそれを手に取り、ちらりと箱を覗く。「ふむ、これは…ティーバッグかね?」教授の声に少し呆れが混じる。
助手が苦笑いしながら「はい、イギリスですし、紅茶といえばこれかと思いまして…」
教授は箱をそっとテーブルに置き、じっと助手を見つめる。「君は私の話を本当に聞いていたのかね?」助手は思わず背筋を伸ばす。
教授は静かに続ける。「ティーバッグは確かに便利だ。忙しい現代人にとっては、手軽に紅茶を楽しめる手段かもしれない。しかし、ティーバッグには限界がある。茶葉が細かく砕かれ、その香りや味わいが圧縮されることで、本来の豊かさが失われてしまうんだ。紅茶の葉が水の中でゆったりと開き、香りがゆっくりと広がる。その瞬間こそ、紅茶を楽しむ者にとっての醍醐味だ。」
助手は恥ずかしそうに「すみません、教授。やっぱりリーフティーにはかなわないんですね…」
教授は笑顔を見せ、「悪くはないさ。ティーバッグもその場に応じた役割を果たす。だが、時間があるときはぜひリーフティーを試してごらん。香りの広がりや味の奥深さ、すべてが段違いだからね。」
助手は真剣な表情で頷き、「次からはリーフティーをちゃんと選びます…」
教授は満足げにカップを持ち上げ、再び香りを楽しみながら「良い選択だよ。紅茶も、人生も、手間を惜しまずに取り組むことが肝心だ。」
本作品は「<a href="https://ncode.syosetu.com/n3987iq/">教授は紅茶が好き</a>」の教授と助手に出演頂きました。
☆☆☆☆☆&ブックマークしてもらえると嬉しいです!
つまらないと思った方は☆
お前の割に頑張ったと思った方は☆☆
普通と思った方は☆☆☆
やるじゃんと思った方は☆☆☆☆
面白いと思った方は☆☆☆☆☆
是非ご協力お願いいたします!