表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第3話:『お化けレンガ屋敷』と『猫もどき』

 『お化けレンガ屋敷』


 そう呼ばれる隣の家を、私はぼんやりと眺めていた。


 その名称に違和感はない。生い茂る樹々と苔むした廃墟は、昼間なのに薄暗く、陰々とした雰囲気をかもし出している。


 しかし、人の侵入を拒んでいるようで、それでいてどこか惹かれるものもあって、私は正直、嫌いじゃないと思った。

 

 そんなもの思いにふけっていると、ふと視線のすみに、庭を横ぎる『何か』が映った。


あの動きは……猫だ!


 私は反射的に猫へと向かう。空き家だと聞いたからだろうか、人様の庭に入り込むのに罪悪感は薄かった。

姿勢を低くしてゆっくりと近づき、猫へとそっと手を伸ばす。

しかし……


「え……?」


 私はピタリと手を止めた。その猫の背中に、小さな翅のようなものが見えたのだ。トンボの翅のような、透明で細長いものが耳の後ろあたりから伸びている。


 猫じゃない……! そう思ったとたん、足が震えた。心臓の音が頭に響く。


 謎の生物は頭をプルプルと振ると、こちらに気づいたのだろう、私へと顔を向けた。

何気に可愛らしかったが、金色の瞳が爛々と光り輝いていて『ソレ』が『可愛い猫ちゃん』などではないことを物語っていた。


猫のようだが猫じゃない。猫もどきだ。

そしてその猫もどきは、こともあろうに私の胸元に跳び込んできたのだ。


「わぁあっ!」


 私はみっともなく叫んで『猫もどき』を振り払った。そいつはそれこそ猫のように、クルリと身を捻って着地する。


見るとその口元には、なぜか私がつけていたはずのペンダントがあった。


「え? あ! 私のペンダント!」


 自分の胸元を確かめてみると、ペンダントが消えている。それはブドウ粒くらいの緑の石で、人からもらった大切なものだった。

 猫もどきはさっさと身をひるがえし、敷地の奥へとぽてぽて歩いていく。


「返して!」


 私は猫もどきの後を追った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ