臨時メンバー・JKAV女優の高梨天夏
TRK26のことは、当然俺もよく知っている。クラスの女子がストリッパーとしてステージに上がっていると聞いて、観に行かないなど男じゃねェ! ……って豪語をすると、女子の一部……いや、大多数からイヤ~な目で見られるんだが……そんなことはどーでもいい。俺には天夏がいるからな。
「よーよー、天夏。次の撮影ってどーなってるん?」
「あー、それがさー、事務所のほーがドタバタしててねー」
高梨天夏――知り合ったのは最近のことだ。ぶっちゃけ、彼女のAVデビューがキッカケである。学生しながらそういう仕事ってことについては賛否両論あるけどよー、俺としては全然オッケー。っつーか、法的にも義務教育を終えたら成人って二〇八〇年の法改正で引き下げられたし、それを意識してか、法に違反しないバイトなら校則的にも自己責任で認められてる。だから、誰にも責められる筋合いはない。だったら……同級生が頑張ってるんだぜ? 応援するのが当然だろう。
ってかさー……やっぱ女子は痴女に限る! 女のコはエロい方が可愛いからな! 娼婦は観音様とはよく言ったもんだぜ。男たちが生来悩まされ続ける乾きを癒してくれる女神……それが、痴女ってもんだ。
と、いうことで……同じ学校の女子がAVデビューしたって聞いて、そりゃーもーすぐさま買ったさ! ディスク版で! 写真の方は、まー……撮影を意識してかハデハデなメイクしてたんで、普段の方がむしろ清純派に見えてくる。そんな彼女に、パッケージ渡してサインお願いして、それに応じてもらって……それからずっとファンってことだ。
その天夏が……何とTRKにデビューするって言うんだから、俺だって大喜びに決まってんだろ! なのに、肝心の天夏があまり乗り気ではない。
「ぅ、うーん……ステージに立てるのはいいんだけどねー……。ほら、実際欠員も出てるわけだし」
確かに、天夏が活躍できるようになったのは歓迎するが、代わりに活躍できなくなった女のコもいる。エロい女のコがひとり減ってしまったということだ。これは悲しい。
けれど。
「一先ず、天夏がデビューできたことに関しては嬉しいぞ」
劇場に出れなくても他で活動してるかもしれないし。彼女からエロさが消えていなければ。
来る者と去る者――俺があまりに色んなことに想いを馳せていたからか、天夏は少し気不味そうに訂正する。
「ああ、いやー、デビューっつーても臨時メンバーっつーか……一ヶ月限定なんだよねー」
「だったら、いまのうちにヤってみたいことヤっといた方がいいに決まってるだろ」
後でこんなことシてみたかったのにー、とかなったらもったいない。そんな当然の話なのだが、天夏は少し驚いた顔を見せて――そして、微笑んだ。
「アンタってホント前向きねー」
その顔は、やはりどことなく色っぽい。
「ヤリたくなったか?」
「……ちょっとはね。けど、まだまだー。もっといい男になりなー」
「っかー、相変わらず手厳しいぜ」
しかし……いつかはヤッてみてぇ。こんな……セックスを楽しんでるいい女とよっ!
***
そんなわけでやってきたのはいつもの劇場。俺のイチオシはやっぱり|Schooling High!?《スクハイ》 だ。もちろん、同年代だから親近感がある……ってのもひとつの理由だが、やっぱり痴女は若い方がいい。……ってロリじゃねーぞ。だってよー、女だってある程度歳いったらエロくなる、なんて当然のことだ。俺だってひと回りふた回り上の女の人とは何度もヤッてる。
だからこそ、その年代に至らずともすでにエロいってことは……それはもう、天性の痴女って感じだろ。俺はそういう痴女を応援したいんだ。若さゆえに恥じらってる女のコがいるなら、俺は背中を押してやりたいね。エロいことは悪くない、むしろ可愛いって。……まあ、俺のストライクゾーンに入るには、少なくとも成人してもらわなくちゃぁならねぇが。それに、何をエロいと感じるかは人それぞれだしな。おっぱいポロンとイク人から、素肌にタオル巻いてドキドキする人もいる。正直俺は……おっぱいが見てぇ。可愛い乳首を隠したままの着エロってジャンルは、残念ながら俺にはまったく刺さらない。だとしても、女のコ本人がエロいと感じていて、それに恥ずかしがりながらも挑戦してみようとするのなら、誰でも平等に応援したいんだよ、俺は。子供も大人もお姉さんでも。
さて、悲しいことに今回TRKにて欠員が出たのはスクハイのひとりである。五人の中のひとりが……これは大打撃だ。それでも、俺は前向きに考えたい。五人もいると……ファンも多くてチケットが取りにくいんだよ! 各々のファンクラブ会員が優遇されるってことは、五人ユニットなら五人分のファンたちが入れ食い状態だ。それがひとつ減ったのである。
もしかすると、今回俺がチケット当選したのはそのおかげかもしれない。天夏が出演するスクハイの公演日に。
|Schooling High!?《スクハイ》 は名前の通り、学生らしさを売りにしている。制服はブレザーだったりセーラー服だったり、ときにはスクール水着なこともあるが、今日は普段の天夏に近いブレザーだ。
四人のメンバーが唄って踊って脱いでいく。彼女たちは既存メンバーだし、振り付けにも慣れたものだ。
しかし、その後ろでギターを弾いている天夏は何もかもが勝手が違う。一番が終わった後の間奏部分で堂々とギターを下ろし……大急ぎで上着を脱ぎ始めた。ブラウスまで含めて。生演奏しているのは天夏だけだから、そのギターが止まったところで、伴奏すべてが止まることはない。
天夏の胸は、やはり結構な逸品だ。白いブラジャーにかかるストラップ……うーん、焦らしてくれるぜ!
まあ、手間がかかるのはここだけだ。ブラジャー自体はストラップをくぐらせることもできるし、スカートやパンツに至っては何の制限も受けない。けれど、今日は――抽選に外れて泣く泣く動画配信で観ていたこれまでのとはちょっと違う。二番のサビだってのに……どーも 脱ぐペースが速ぇ。TRKの楽曲は大サビに向けて全裸になる流れが多い。実際、他のメンバーはまだ下着で踊っている。そんな中、天夏だけがマッパになって……いや、ファンとしては嬉しいんだけど……どうした、天夏!?
その答えは――これか――ッ! 大サビに向けてのギターソロ――ここを、まさかの……!
天夏が『盆』に立っている。
客席中央の一番目立つ舞台に、天夏が――全裸ギターソロ――!
これは……歴史に残るぞ……!? 本舞台とをつなぐ花道の方ではそんな天夏の伴奏に合わせて四人の女の子たちがブラを……そして、パンツをヌギヌギしている。けれど……こんな勇姿、片時だって目を離せるはずがねぇ! 左の乳首をストラップが優しく撫で、右の乳首を激しく揺らし、それに……股間のヘアまでふわりと――女のコが一番可愛い姿を、一番輝く場所で――ッ!
大サビは、もちろん全員全裸で。だが、俺の中では最高潮を超えてしまった気がする。ギターを奏で続ける天夏はいまも裸のままだ。けれど――俺は、どうしてもその裸体に先程の光景が重なってしまう。天夏の晴れ舞台――紛れもなく、主役を飾っていたあのワンシーンを。
カーテンコール――TRKにはゲストが呼ばれることも少なくない。が、閉幕の挨拶に立つのは原則として正規メンバーだけだ。その理由としては諸説ある。
先ず、従来のカーテンコールは――例えストリップ劇場であっても衣装を着て行われるものだったらしい。せっかく裸になれる女のコがこれだけいるのに、裸で並ばずに何ともったいないことか――それは、この光景を目の当たりにしているからこそなお思う。TRKは数人グループで登場することが多いが、その全員が全裸で並ぶと――こんな圧倒的な迫力は、女湯でもなければ拝めねぇ。
つまり――ゲストのギャラは演目だけであり、出番が終わった後まで裸につき合う義理はない、ということ。俺は、この線は薄いと思っている。だってよー、こんな痴女グループを作っちまうプロデューサーだぜ? 全裸に対するこだわりだって相当なモンのはずだろ。なのに、そんなところでケチケチするわけがねぇ。
だから――もうひとつの事情ってやつを、俺は推したいね。それは――
――おおおおお……ッ!?
会場中が盛り上がるのも無理はない。だってよぉ……普段はつき合うことのないカーテンコールに……天夏が立ってやがるんだから……! 慧ちゃんとルミノちゃんと手をつないで――全裸で――! うんうん、天夏だってAV女優だぜ? ストリッパーたちと並んだって見劣りしねぇ。
けれども……だからこそ、天夏の……いや、劇場としての本気っぷりが窺える。今日の天夏はゲストじゃねぇ。期間限定であっても、あくまで正規メンバーと同じように扱ってくれてるんだと。
けれど……だからこそ……つまり……!
「プロデューサー!」
天夏が叫ぶ。“続く演目”を迎える拍手の中で。
「私も――」
その目に決意の火が灯っていたこと――
そして、仲間たちの眼差しに支えられていること――
だから――それは、彼女たちの――他でもない天夏の意思に違いない。
「――私も、まな板ショー、やりたい!」
おおおおおおおお――ッ!
これに喜ばない観客がいようものか! もちろん、ここにいる連中はみんなTRKのファンである。けれども――やっぱセックスはしてぇだろ! それも……今日を逃したら二度と抱けないかもしれない女のコだとしたら!
こんな形で出演要請したのは、不退転の決意の現れだろう。ギリギリまで迷っていたのは運営側か、本人か――それはわからない。けれど――この熱気を冷ますなんてエンターテイナーがやることじゃねぇよな!?
『それでは――』
続くアナウンスは、誰の望みも裏切らない。
『――本日のSchooling High with Amaka……高梨天夏さんも含めてまな板ショーを開催します!』
おおおおおおおお――ッ!
――ゲストがカーテンコールに並ばない理由――推測されるもうひとつの事情は――この先は、脱ぐだけでは済まないからだ。ただ裸になって踊るだけの見世物ではなく――客を共に壇上に乗せて、触れ合う――裸の男女が――つまり、セックスである。ここに比喩や誇張はない。TRKのプロデューサーは――そこまでできる女のコを集めたのだ。
天夏は――綺麗に撮ってくれるAVならばいい。けれど、ガチンコでぶつかり合うまな板ショーには気後れしていた。だからこそ、あんなに可愛くてギターも上手いのに、このグループに入らなかったのであって。
けれど、今日は――きっと、色々と思うところがあったのだろう。メンバーとしての期間も残り少なくなってきたということも。だから――ついに――!
これに、男たちは――そりゃー新メンバーとヤれると思えば盛り上がらないはずがない。だが、俺には俺の悲願がある。あの、高梨天夏と――短い間だけど、デビューから追ってきた高梨天夏と――ヤりたい……!
俺の視線は一直線に――他の四人のメンバーにブレることはない。だからか――壇上に佇む幸運の女神が、俺に柔らかく微笑んでくれた気がした。