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学校一の美少女は学校一嫌いな奴だった  作者: 夏斗輝明
第二章:暑い熱い夏休み
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第八話:事件と事故

 勉強合宿から時は過ぎ、日を重ねるごとに気温が上がっていく7月下旬。暑さにより家を出た瞬間から汗が溢れてくるのに、学校に着いても室温が28℃以下にはできない。


それなのに職員室は確実にそれ以下になるように冷房を稼働させている。そんな職員室を妬ましく思った者は少なくないはずだ。


 そんな季節になった今日は期末試験最終日。その最後のテスト、現代文を解き終わった晴輝は隣でペンを走らせている女子のことを考えていた。


 ゴールデンウィークのコンビニの一件により、岡村との距離が縮まったものだと思っていた。

 進級してから何度か席替えをしたが、出席番号順の時は隣となる。そんな時はコンビニの時のような笑顔とまではないにしろ、話ができる。みんなには冷たいけど、俺には・・と密かに考えていた。


 そんな期待も3日と立たず晴輝の中では消えてしまっていた。岡村とは合宿以来、見事に一言も言葉を交わしていない。いつも通りのクールというか、人を寄せ付けない雰囲気を放っているように思える。


 テスト終了時間の10分前になっても、頭を抱えて解答用紙と睨み合っている岡村を横目で無意識に見ていた。


(当の本人は、最後の漢字問題で苦戦中ってところか)



 長いテストが終わり、教室中が「終わったー」と安堵に包まれたあと、「夏休みどこ行く?」と終業式もまだだが、夏休みを楽しみにする声が止まなかった。


「晴、ちょっと話があるんだけど」


教室がお疲れ様ムードに包まれる中、伊織が思い詰めた表情で話しかけてきた。


「どうした?」

「ここじゃあれだから、移動しよ」


やけに深刻そうな顔をされ、こちらも不安になる。


「お、おう」


 俺たちは3年生がいる棟とは反対のところまできた。人混みがなくなったところで伊織が立ち止まり、小さくつぶやいた。


「晴、ごめん。俺、彼女できた」

「へぇー・・・」


(え?)

「はっ⁉︎彼女?いや、お前くらいならいてもおかしくないけど。てか、誰?どいつ?タメ?」


「えっと、伊藤さん・・」


(伊藤?あ、あの岡村とずっと一緒にいる伊藤未来か)


「いつから付き合ったんだ?」


質問攻めになっているが、衝撃が強過ぎて気になることは全部聞いてしまっていた。


「前からちょくちょく電話とかはしてたんだけど、テスト前くらいにその・・俺から告白して、付き合うことになったって感じかな」


少し恥じらいながらも嬉しそうにしている伊織はいつものテンションの高いやつとは思えなかった。


「なにモジモジしながら言ってんだよ。こっちが恥ずかしくなるだろ。てか、なんで俺にそんな改まって言うんだ?」

「だから、その・・これからは未来と登下校することが増えるかもしれないから言った次第であります」


(しれっと下の名前で呼んでる)


「そういうことな。別にいいのに。てか、朝からバイクで迎えに行かなくて済むから俺的には得かもな」


「それは本当か?俺がいなくて寂しんじゃないのか?」

と言い、伊織はいつもみたくからかってくる。


「うるせぇ。まあ、なんだ。おめでたいことだから今度、ラーメンくらい奢らせろよ」


「おう、サンキューな」とにっこりと笑いかけてきた。



 どこか喪失感を抱えながら、一人で駅までの道を歩く。

 学校と駅のちょうど中間くらいの距離で、担任がホームルームで言っていたことをふと思い出した。


『今配った進路希望調査の紙は週明けに集めるので、必ず持ってくるように』


「うわ、机の中に忘れた」

今日は金曜日。土日も部活で学校は開いているが、今取りに行かないとさらに面倒になるのは明白だ。


(はぁ)


 教室に着き、机の中に目当てのものがあることを確認できた。

だがすぐに帰る気にもなれず、席について進路希望調査票に名前だけを書き込んで、ボーっとしていた。


(伊織があの伊藤さんとねー)


 伊藤未来は岡村ほどではないが、かなりモテる方である。彼女は元気で少し天然なところが人気らしい。もちろん、話したことはないが。


「あんた、何してんの」


急に後ろから声がして、ビクッと体が震え上がる。

気を抜いていた。このパターンは何度目だろうか。


「岡村こそ何してんだよ」

「あたしは、進路希望調査票忘れて取りにきたの」

「そうか。俺もなんだ」

「へぇ」


そう無愛想に返事をされた後、なぜか数秒沈黙の時間ができてしまった。

無言に耐えかねて帰ろうと立とうとした瞬間、岡村が重い口を開いた。


「・・ねぇ、一ノ瀬って、悩みとかあるの」


(ん?)


「質問の意味が分からないんだけど」

「だから、悩みとかあるのかって聞いてるの。勉強の事とか人間関係のこととかで」

「まだ意味分からないけど、そうだな。どこの公立大学に行けばいいのか、とかかな?」


「・・何それ、つまんない。もういい」


そう言葉を吐き捨て、岡村は教室から出て行ってしまった。


(なんなんだよ)


急に入ってきて、意味わからない質問して、勝手にキレて、意味がわからない。

その時、晴輝の脳裏にあの時の映像がフラッシュバックされた。


『は?無理なんだけど』


(くそっ)


 廊下に出て、遠くなっていく岡村の背中を追いかける。


「おい、待てよ。なんだよ勝手にキレて。こっちは気分悪いんだよ」

「うるさいな。あんたみたいに、悩みがない奴なんてもういいって言ってんの!」

「だから、意味分かんねぇって言ってんだろっ!」


 様々な出来事が重なって、どうしても口が悪くなってしまう。だが着火剤になったのは、間違いなくこいつだ。

 階段を下ろうとするところで追いつき、岡村の腕を引っ張る。


「やめて!離して!」

「こっちだけ気分悪くさせられるとか有り得ないから。ちゃんと説明しろよ」


暴れる岡村は思いっきり腕を振り解いた。その拍子に掴んでいたものを離してしまった。


(この女、いい加減に・・)


「あ・・」

「えっ・・」


 この時、晴輝の目に映ったものは全てスローモーションに見えた。

 腕を振り解いたせいで体勢を崩したらしい。岡村がこちらを見ながら階段の方に倒れていく。倒れていくその目は、『悲しい目』をしているように見えた。このままでは確実に大怪我をしてしまう。


「危ない!」


岡村の伸ばした手を握るが倒れていく勢いに勝てない。岡村を引き寄せ、下敷きになるように倒れていく。


 その瞬間、激痛が背中と後頭部に走る。


 勢いよく階段から落ちてしまった。数秒後、勢いが止まったが痛みは治らない。


「ねぇ!あんた大丈夫⁉︎ねぇってばっ!」


 徐々に視界が狭まり、聴覚が薄れていく。

 何か岡村が言っているようだが、よく聞こえない。

岡村の顔が近くにある。こう見るとやっぱりこいつは人並み以上には可愛いのかもしれない。


だけど、性格は最悪。キレ症だし、こいつのせいで階段から落ちて、このざまだ。


薄れていく意識の中で思った。


(でも、無事みたいでよかった・・・)


そして晴輝は完全に意識を失った。


第二章の第一話、いかがだったでしょうか。感想やコメントなど頂けると嬉しいです。

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