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学校一の美少女は学校一嫌いな奴だった  作者: 夏斗輝明
第一章:『3年1組』
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第二話:学校一嫌いなやつ①

 あれは高校に入学して半年ほど経ち、皆の制服が冬服に切り替わった頃だった。


 その日は午後から生物の授業があり、座学ではなく、実験室での授業だった。



 内容は濃度の計算をして、指定された濃度の食塩水を作る。そしてその食塩水を火にかけ、蒸発させるというものだった。



なんとも小学生じみた実験だなと思ったことをよく覚えている。実験では6人1班になり行うこととなっていた。


「じゃあ、自分の班とテーブル確認してください」

そう生物の教師が生徒に呼びかけ、班分けの紙を黒板に貼った。




 クラスのみんなは楽しみを待っていたかのように黒板にぞろぞろと集まってきた。

 晴輝は唯一の友達である伊織とは違うクラスだったため、正直なところ班分けなどどうでもよかった。


しかし、授業に参加しない訳にも行かないため、自分の班がどこか見に行く。

班分けなどどうでもいいと思っていた晴輝は紙を見た瞬間、その考えを改めた。



 晴輝の班の名簿欄に『岡村玲奈』と書かれていた。




 玲奈と同じクラスだということは晴輝も分かっていた。しかし、喋り相手が極端に少ない晴輝にとっては周りの男子と違って、『岡村さんと同じ班になりたいなー』とは思っていなかった。


 しかし、同じ班になれたことは話すことはないだろうが、一人の男としては嬉しかった。


「マジかよ・・」


そう思ったのも束の間、よく名簿を見ると、玲奈と同じ班になれたことの嬉しさの倍の不安が晴輝を襲った。



(男子、俺しかいないのかよ・・)






 チャイムもなり、班ごとに実験室特有背もたれのない木製の椅子に着席した。実験室の机を6人で囲むように座るため、必ず誰かの目の前に座らなければならない。


 女子5人と男子1人の班で席の場所で色々気を使うのも使われるのも面倒うだったため、晴輝は授業が始まる前に、窓側の席に一番についた。



 始業チャイムがなると同時に彼女らが席に着いてきた。特に迷うことなく、椅子に座っていく。

 最も気にしていた玲奈は晴輝の目の前に座ってきた。


「よ、よろしく」


 なぜこの時、こんな言葉が出たか分からない。いつもは何も喋らずに黒板を見つめているだけなのに。



おそらく玲奈と同じ班になれたこと、そして目の前にその人がくれたことが他のクラスメイトと同じように多少なりとも嬉しかったのだろう。


「んー」


そんなことを思っていた晴輝に葉っぱをかけるように玲奈は晴輝の顔を見ることなく返事をした。


少しそっけないと感じたが、この手の美人はこんなものだろうと少し落胆したが、授業の主幹である実験の説明を聞いた。


 説明の後は皆で必要物品を用意し、濃度の計算を班で行う。問題は『10%の食塩水と5%の食塩水をいくらか混ぜて、7%の食塩水、300mlを作りたい。10%の食塩水、5%の食塩水をどれだけ混ぜればできるか。』というものだった。


答えは簡単。連立方程式を使えば、10%が120ml、5%が180mlになる。



「んー、これわかんないな。連立方程式ってどうやるんだっけ」



岡村はこの問題に苦戦しているみたいだ。俺はもう終わったし、他の人らももう少しかかりそうだ。どうせ喋るのもこれっきりだろうしな。



「岡村さん、これは・・」

「え、なに?」

「いや、分からなそうだったから。俺、もう終わったし」

「は?無理なんだけど。教えてもらうとか」

「え・・」




学年1の美女と呼び声高い彼女と話せる最初で最後のチャンスだと思っていたのもあるが、それ以上に親切心で教えてあげようとした。


しかし、無情にもその玲奈への晴輝の親切心は一瞬にして消え去った。


「ねえねえ、これ、一緒に考えよ?」


玲奈は隣の女子に笑顔で助けを求めた。「私も分かんないけど一緒に考えよー」と隣の女子も岡村に笑いかける。



(なんなんだよ)


俺は問題解けてたし、普通に教えてあげようとしただけなのに。


(ふざけんなよ。美人が性格悪いってマジなのかよ)




周りの班の女子からクスクスと嘲笑うかのような声が聞こえて、恥をかかされた。

さらに晴輝は玲奈とはもう関わりたくないと強く思った。


(もう話したくもない)



—————————————————————————————



「おい晴、聞いてんのか?」


伊織にそう呼びかけられ、我に返る。


「俺は誰と一緒でも関係ないよ」と言い、その苦々しい出来事を思い出していた。

いかがだったでしょうか。感想など、さまざまな意見が頂ければ幸いです。

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