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そしてヨーロッパ  作者: 船木千滉
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第4話 「ビートルズの故郷」(その1)

いよいよA&Bの本社へ乗り込んだ弘明、出迎えの秘書についていくと……。

「おい、秘書が迎えに来るって――」


 9月25日火曜日午前9時半、A&B本社の1階ロビーに立つ弘明に、受付で来意を告げた古賀は興奮気味にそう言った。古賀にしては珍しく緊張した面持ちで、視線を浮かしたまま更に言葉を継いだ。


「俺もここへ何回も来たが、お迎えなんて初めてや」

 と呟きながら、エレベーターホールを見やっていた。


 19世紀初めに設立された英国最大の船会社A&Bは、明治時代に日本への定期船を就航させ、以来今日まで社船のコンテナ船や客船が欧州とアジアを結んでいる。


 本社は扶桑と同じ旧市街地にあり地下鉄で3駅の距離。バッキンガム宮殿に面した一等地にあり、復古調のゴシック建築で威厳ある外観に伝統的な内装が施されていた。


 待つこと5分、女性秘書の出迎えを受けた二人は、厚い絨毯が敷かれたホールからエレベーターに乗った。


 途中、ケージの階層表示に注目していた古賀は、最上階まで行くと分かると、どんぐり眼を弘明に向けた。


(えらいこっちゃ……)

 と、強張る表情の古賀に対して、弘明は無表情のまま突っ立っていた。

 だが内心はビクビクしているのだろう、顔は蝋人形の様に真白だった。


 ケージが止まり、おもむろにドアが開き、ロビーの奥には観音開きのドア。

 シックなツーピースの秘書がドアを引き傍らに立つ。


 軽く腰を折って手を差し伸べると、

「Here you are……」

 と、二人を部屋の中へ誘った。


 言われた古賀は小顔に大柄な体を恐縮させて前へ進み、後へ弘明が続く。部屋に入るとオーバルテーブルが鎮座ましましていた。


 すでに大勢が坐り、突き刺さる視線を嫌った弘明が背後の窓を見ると、見覚えのある建物が……。


(あれは……バッキンガム宮殿?)

 豪勢な借景に驚く弘明だが、隣に立つ古賀の動きがいかにも鈍い。


「コ」の字に座った全員が注目する中、古賀がなんとか挨拶すると全員が立ち上がった。手前の男が古賀に歩み依り、知り合いなのであろう握手を交わす。 


 二人が案内された席へつくと再び全員が坐り、まずはテーブル奥の男が口火を切った。


 名刺交換は省かれ、さっそく会議が始まり、司会者から本船の状況説明。

 凡そ10分、A&B社側の情報共有が行われると、いよいよ弘明の出番。


 改めて古賀と弘明の紹介があり、そして質疑応答に入っていくのだった。


(つづく)


今週もよろしくお願いします! 船木

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