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ステータス・NULL  作者: 般若湯
見知らぬ世界
8/9

実践

「あ、おはよう」


 夜更かしの後、目を閉じたと思ったら、もう朝が来ていた。時間のほどが分からないくらい深く眠ったのは、小学生のころ遊び疲れ車で眠った以来だと思う。


「おはよう」


 #NULL!


 マイスマから、歯磨きだとか幾つか道具を貰い朝支度をしていく。一番驚いたのは、新しい服を用意してくれたことだ。深緑色のボタンもない上下に黒い革ジャン。レトロでシンプルなこの服装は現代人の俺にはかえって新しい。少し大人びすぎている気はするが。

 

「おお、すごい似合ってる!」


 と、お世辞をくれるマイスマもスカートを除けば同じ格好をしている。俺のついでに作ったのか……いや、皮なんて準備に時間のかかるものを使っているということは、俺の服が次いでなのだろう。俺のだけで、2,3着分の材料を使ったのではなかろうか。

 いつの間に作ったのか、という疑問もあるが……いつの間に測ったのだろうすごく……、


「サイズがピッタリだな」

「そうよかった。ご飯はどうする? スープのほうがいい、普通の朝ごはんがいい?」

「あぁ、いや体調不良の原因が分かるとかなり楽になったし、普通のでお願いします。これもプラシーボ効果なのかな」

「プラシーボ効果って?」

「病は気からってことだ、いや気は持ちようかな?」

「ふーん」


 #NULL!


 朝ご飯を食べて、今日も小屋前で訓練を始める。今日の朝ご飯は、結構豪華で、とれたての青野菜と兎ほどの何かの肉の丸焼き、そしてお酒だった。朝から酒かよと思ったが、一度熱してありアルコールは飛んでいた。

 それに、肉には紫色の香辛料が掛かっており、これはなんだと聞けば、木の革だそうだ。えぇ……。

 そして何より、朝ご飯全てに濃いマナが含まれていた。

 

 この世界の住人は飲食を行うことで多くのマナを取り込み、オドを作るらしい。そのオドのせいか少し小食な気がする。

 生き物っていうのは、基本的に体格が大きくなるほど食べる量は、体重比率で少なくなる。具体的な例とすれば、ネズミは自分の体重の3分の1ほど食べるが、像は25分の1ほどだという。一説では像と草食恐竜の食べる量はそう変わらないらしい。

 きっと、マイスマから見れば俺はよほどの大飯食らいだろう。非常に申し訳ない。


 とりあえず、身体強化さえできれば普通に動けるだろうから、全力で働かせえてもらおう。


 そしてやっと、身体強化の話になるが、方法としては血に乗せて全身の筋肉や臓器に巡らすらしい。基本無意識に行っていることで、マイスマも教え方に困っているようだった。


 俺の場合はマナが肺や消化器官で止まっているところだろう。下品な話だがこのままでは、下から出てくるマナをはっきりと感じ取ってしまう。今そのことに気付いたわけだが、それは何としても防がねば。


 さて、ひとまずの問題として、何故肺や消化器官でマナが止まっているのか。それはひとえに、機能外だからだろう。しかし、ここの人たちというか生き物達ができているのは、臓器のつくりが違うか、マナを操る息を出で無理やり通すか、他の物質とくっつけて通すかだ。


 この世界に来て初めて水を飲んだ時、小腸から全身に回っていった。そう、あの時は意識せずにできていたのだ。

 では、今とあの時では何が違うのか、それはもう無意識か否かだろう。マナによる吐き気もそうだ。深く意識し、拒絶するから問題があった。


 きっと、マナは別段害のあるものじゃないんだろう。俺がただ拒絶していただけであって。


 草むらの上で座禅を組む。やったことはないが、無になるのがきっと一番の解決法だろう。そもそも、体の外で動かすならまだしも、体内であれば人体の仕組みに則って勝手に動くはずだ。この考えも邪念だな。無になるんだ無に。


 #NULL!  


 ほどなくして、全身が浮くかのように軽くなる。勿論本当に浮くわけではないが、今まで感じていた体の重みがなくなり、全身の楔が外れたようだ。いや、それ以上に軽いかもしれない。

 向こうの世界から持ってきた腕時計を見れば一時間ほどたっていた。マイスマも暇だったようで、ナイフを砥石で研いでいた。山姥?


 できたという旨を伝えると教え甲斐がないと言われたが、マイスマがいてくれなければ、謎の何かに身を委ねるなんて確実にしなかっただろう。この感謝はキッチリと仕事をして返さねば。

 今は、驚くほど身も心も晴れやかだ。お酒を飲んでもここまで晴れやかにはならない。


「じゅあ、武技の実践もかねて狩に行こっか」


 マイスマは研いだばかりのナイフで日光を反射させながら、いつも通りニコニコとしながら話す。怖いんだが。

 どうやら、皮だの肉だの冬に備えていた貯蓄分が、誰かのせいでほとんどなくなったらしい。ひどいことをするやつがいたものだ。



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