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ステータス・NULL  作者: 般若湯
見知らぬ世界
4/9

異世界

 そのこじつけとは、なんであろう異世界である。異世界転移である

 異世界であれば大気の成分が違うのもこともあり得るだろう。酸素があるだけ儲けものである。

 異世界であれば身長含め普通の基準も違うだろう。脱没個性である。

 そして、きっと文明レベルも違うのだろう。一概に上も下もないだろうが、色々と不便しそうである。


 ただ、そんなことはこの際どうだっていい。もっと切羽詰まったことがある。それはマイスマとの体格差である。いや、この世界の人々との体格差だろう。

 動物がそれぞれその大きさであるにはそれ相応の理由がある。不要に大きかったり小さかったりすればいろいろと問題が起こる。

 例えば巨人症である。巨人症を患った人達は自重に内臓が耐えきれず、若くして亡くなるという。

 きっとこの世界は元居た世界に比べ重力が重たいのだろう。それ故に、マイスマ達は重力に合わせてあの大きさなのだろう。

 

 これまでの話はあくまで仮説だ。いや、最早妄想の域だろう。しかし、これを否定はできない。もし正解なのだとしたら、きっとそう遠くないうちに内臓が潰れて死んでしまうかもしれない。緊急事態である。


 #NULL!


 あらかた掃除も終わり、箒を杖代わりにしてボーっと考え事をしていると……。


 「ただいま!」


 マイスマが帰ってきた。マイスマの手には綴り紐で結んだだけの一冊の本が握られていた。動物の革で出来た表紙には『マナ・オドの不循環』と書かれている。


 確か、マナとは大自然を流れる力のことで、日本では龍脈や地脈などというものだ。そして、オドとは生物の体の中を流れる力で、生体エネルギーの様なものだ。

 ただし、どちらもファンタジー用語として扱われるのが主であるが。


 マイスマもその認識であっていると答えてくれた。スッと受け入れそうになったが、要はは魔法である。異世界疑惑がどんどん強くなる。というかほぼ確定的だと思うが、何事も疑心的で悪いことはないだろう。

 批判的思考という奴である。


 そして、この息苦しさの正体とは、マナが原因であるとのことだ。

 マイスマの話を纏めると、生まれて間もない赤子によく起きることだそうだ。

 まだ胎児のころは赤子は母親のオドに包まれて過ごす。しかし、生まれたとたん、母親のオドとは違う空気、基マナにさらされる。

 基本的にすぐに適応するかそうでなくても、しばらくすればすぐに慣れるそうだ。

 しかし、ごくまれに強く拒否感を示す子がいるらしい。そういう赤子は、生まれても産声を上げることもなく、呼吸をせずそのまま死んでしまうらしい。


 この本には、それに対する対処法も書かれているらしいのだが、何せ相手は生まれて間もない赤子である。成功率はあまり思わしくないようだ。

 

「でも、これは赤ちゃんだから起きることであって、どうしてミキくんが発病するのかは分かんない。似てるだけでもしかしたら違う病気なのかもしれないけど」


 マイスマそういい悩んでいる様子だ。そりゃそうだ、赤子の病気を成人男性が患っていたら困惑もするだろう。

 これは、話すしかあるまい。今俺が置かれている状況の仮説を。


 #NULL!


「つまり、異世界から来たからマナに触れるのが初めてってこと?」

「まあそうだな。色々と面白可笑しい話だが、それ以外に説明のしようもないからな」

「ふーん、でもちょっと納得したかも。私を見て驚かなかった人なんて初めてだったもん。オドに触れるのも初めてなんでしょ?」


 ああ、と口で答えながら首をかしげる。そういえば、色々考えていたせいで後送りになったが、一つ気になっていたことがあるのを思い出した。

 マイスマは、「こうやってちゃんと人に触れるなんて、すごい久しぶりだった」と言っていた。掃き掃除をしているときに窓の外も視界に入ったが、木々が広がり一本の細道があるのみだった。


 書物を借りてくると行って帰ってくるまで、調子の優れない俺がたっぷりと長考するだけの時間はあった。その時はさほど気にもならなかったが、今考えると他の人と離れて住んでいるのかもしれない。

 それも、悪い意味で。


 異世界だから一人で生きていける……というわけでもないだろう。

 小屋にある物は品質のよさそうなものから、即興で作っただけの様なものまである。これらすべてがマイスマ一人で作ったわけではあるまい。きっと誰かの手を借りているはずだ。逆説的にいえば誰かの手を借りなきゃいけない状態なわけだ。

 それなのに、何故こうして一人で生活しているのか。


 考えたって仕方がないのは分かっているのだが、聞いていいものか迷っている。

 いや、聞くしかあるまい。打算的ではあるが、できうる限りマイスマに世話になるつもりだ。そうしなければ生きていけるかも怪しい状態なのだ。

 もちろんそれ相応のお礼はするつもりなのだが、そうなるとこれに関して触れないわけにもいかないだろう。

 

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