とにかくそれが大問題!
女性が旅行に行くとなれば、まず問題は、生理の予定日と、日程との調整である。
旅行に限らず、イベント行事ともなれば、その日、生理であるかないかは最重要事項なのである。
そんなに大事な生理のことをうやむやにはできない。
こうして突然異世界なぞに連れて来られてしまったからには、女性として、生理のとき、どうするかは、とってもとっても大切なことなのである。
もう更年期で、生理の来ない町子を除いての話だが。
「お任せください」
侍女カリーナは、にっこり笑って、続けた。
「聖女さま方の、ご滞在中のデリケートな部分に関しては、この侍女カリーナが一任されております!」
ドンと、胸を叩く、頼れるカリーナだった。
「おおっ!!」
と、思わず拍手する、サキ、エリ、マチこと町子の三人だった。
「さっきおトイレいったとき、サニタリーBOXが見当たらなかったから、不安だったのよね……」
と、OLのエリ。
「うんうん、で、生理中はどうすればいいんですか?」
と、JKのサキ。
「まず、生理中は、みなさんに、特別なショーツを、履いてもらいます」
「異世界にもサニタリーショーツがあるのね…もしかして、そのショーツに魔法がかかっているとか?!」
と、エリ。
「いいえ、特別血液などを吸いやすい素材で大事なところはできていますが、魔法はかかっておりません。魔法はーーみなさんが個々人でかけていただくのです!」
三人は、顔を見合わせた。
「……この世界の人たちはどうかしらないけど、私たち、魔法なんて使えないわよ……」
と、三人を代表して町子。
うんうん、と頷き合うサキとエリ。
「大丈夫です!魔力とは、個々人に宿るものではなく、大気中に粒子のように漂っていて、私たちは呪文を唱えることで、魔法を、発動させることができるのです!」
「……本当に、私たちにも魔法が使えるの……?」
「もちろんです!」
エリの不安げな声を、カリーナが打ち消した。
「まず、私が見本を見せますね!」
と、いうと、カリーナは、紅茶の入ったポッドを持ち上げた。
そして、中の紅茶を、自分の白い袖に垂らした。
にっこりと、紅茶のシミのできた袖を三人の前に掲げると、
「クリーン!!」
と、呪文を唱えた。
途端に、袖のシミから蒸気のようなものが立ち昇り、見ると、シミは跡形もなく消えていた。
「このようになります」
まるで、実演販売を、見ているようなあざやかさだった。
「生理中は、定期的にクリーンを唱える事によって、デリケートゾーンを清潔に保つことができるのです!」
サキ、エリ、マチの三人も、自分たちの服の袖に、カップから紅茶を、たらしてみた。
「意識を、シミに集中させて下さいーー」
と、カリーナ。
「クリーン!」
「クリーン!」
「クリーン!」
と、三人が口々に呪文を唱えると、あら不思議、三人の袖のシミは、シュン!シュン!シュン!と消えてしまったのである!!
「おおおおおーーー!魔法、使えた!やっぱここ異世界だったー!!」
サキの雄叫びとともに、ここでようやく、三人の異世界生活は、スタートしたのであった。