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婚約破棄?しますか?しませんか?


「あいっつ、今回もほんっと、いっけすかなかったぁ!」


 三間続きの貴賓室の真ん中の部屋、マチの部屋に、マチ、サキ、エリ、カリーナと戻ってくるなり、ソファにどかっと座り込み、もとJKにして賢者のサキが、喚いた。


「それにしても、カリーナさんとあの王子様が婚約関係にあるって…本当なの?」


 と、少し遠慮がちに、もと公務員にして現聖女のエリがカリーナに尋ねた。


「残念ながら、真実にございます。元々家門同士の決めたこと、政略結婚にすぎませんが…」


 と、カリーナは答えた。


「あんな顔と身分だけが取り柄の王子様と婚約なんて、カリーナさんが気の毒だわ!」


 歯に衣着せずに勇者マチは憤慨しながら言った。


「…でも、カリーナさんはこの王宮で働く侍女さんで、あっちは一応王子様でしょ?身分の差とかなくないの?」


 と、サキ。


「カリーナさんは、父親が爵位を持ってるって言ってたじゃない。それに、王宮の侍女さんてのは、下働きの下女とは違うのよ。貴族のお嬢様のいわば行儀見習い的なものなのよ。結構いいところのお嬢様なんじゃない?カリーナさんてば?」


 カリーナは、コクンと頷くと、


「父は公爵位を賜っております」


「あら、びっくり!」


 と、マチ。


「爵位とかよくわかんないんすけど、けっこー上のほうの貴族だったりします?」


 と、サキ。


「たしか、貴族としては、一番上の爵位よね」


 と、エリ。


「わぁ、そうなんだ、ごめんね、そうとは知らず、なんかフランクな話し方しちゃって、アタシー」


 と、サキがいうと、


「確かに父は公爵ではありますが、今の私は御三方様に仕えるただの侍女(メイド)です」


 表情をキリッと引き締めて、カリーナは言った。


「どうぞ、気兼ねなくお話かけ下さいませ」


「でもコージー王子様〜と婚約だなんて、カリーナさんは納得してるの?」


 と、マチはそこを突っ込みたいのであった。


「カリーナさんくらい可愛くて有能で胸も大きければ、他にもっといいご縁もあるんじゃな〜い?」


「相手は一応王子様っすよ、玉の輿と言えば言えるんじゃないっすか?」


 と、マチのカリーナに対してというよりも独り言のようなセリフに、サキは異議というほどでもない、異論をとなえるのであった。


「だいたい、コージー王子って、第一王子、第一王子って偉ぶってるけど、皇太子殿下とは呼ばれてなかったじゃない、そこのところは、どうなってるの?」


「……さすが、マチ様は鋭くていらっしゃいます。この国には、コージー王子殿下の上に、姉君様がいらっしゃいまして、そちらのお方が、次期女王と決まっているのです!」


「ええっ?!それじゃますますカリーナさんにあの王子と結婚する『(うま)み』なんて、なくなくない?」


 ぶっちゃけた発言をするサキであった。


「婚約破棄しちゃえー!!」


 カリーナは、何も答えなかった。ただ、少し寂しげに微笑んだ。


「率直に聞くけど、あの手の身分があって、顔がいいだけの男は女にだらしないと相場は決まっているもんだけど、そこのところはどうなの?カリーナさん。腹を割って話していただけないかしら?」


 あくまでそのへんのところを突っ込むのをやめないマチに、カリーナも観念したのか、


「おっしゃるとおり、コージー王子殿下は、私という婚約者がいながら、他の貴族令嬢にも馴れ馴れしく話かけたり、もっと身分の低い者たちに対しては、大っぴらに口説く、という態度を取っていました……」


「いました?過去形なのね?」


「……しかも私に対しては、どうせ結婚する仲なんだから、キスくらいいいだろうとか、それ以上の行為を求めて来ることもございました……」


「卑劣なやつ!クズね!……でも、そこも過去形なのねん?いまは改心したということなのかしらん?」


 マチの問いに、カリーナはふるふると首を横に振った。


「魔女王の呪いのせいで、殿下はそういったた行動を慎むようになられたのです」


「ええっ?!それってなんかおかしくなくなくない?魔女王の呪いって、女性が絶対に妊娠できないってやつなんでしょ?だったら、こういっちゃなんだけだ、したいほーだい、ヤリ放題じゃね?」


「サキさん、……言葉を選んで。そんなおっしゃり方は…ちょっと、はしたないわ……」


 あけすけなサキの台詞を、それまで黙っていたエリが、顔を赤らめつつ、たしなめた。


「あはっ、エリさん、純情!」


 まぜっ返す、サキ。


「もうっ!カリーナさんも困ってるじゃない!」


 エリの言う通り、カリーナの頬も赤らんでいる。


「でも、ぶっちゃけ、サキさんのいう通りじゃないかと思うんだけど、違うの?カリーナさん?」


 見た目は少女、中身はBBAのマチには、さすがに恥じらいというものは存在しないのであった。


「……魔女王の呪いは……強力かつ、平等なのであります……」


「どゆこと?」


 恥じらう乙女のカリーナさんは、可愛いわね〜なんて思いつつ、マチは尋ねた。


「女性には、排卵が起こらない呪い、そして男性には、なんと、EDの呪いがかかっているのです!!」


「ED?!」


 と、オウムかえしたサキは、エリとマチに向き直って、


「それってなんですか?」


 と、無邪気に問いかけたのであった。


「男性性機能不全よ」


 と、マチは答えた。


「すみません、もうちょっとわかりやすくお願いします!」


 サキにはピンとこないらしかったので、マチはぶっちゃけにぶっちゃけた。


「つーまーりー、男性の大事なところが大きくも硬くもならなくて、性行為をしようにもできない状態のことを、EDというのよっ!!」


「ひょっ!」


 サキの喉から変な声がもれた。ようやく理解をしたらしくーーここにいたって、ポッと顔を赤らめた。


「ははーん、なるほどね……」


 恥じらいなどウン十年前になくしたマチは、一人したり顔だ。


「それで王子殿下におわしましては、あんなに不機嫌だったのね〜溜まってんのね〜でもどうしようもないのね〜」


 顎に手をやり、うんうん頷いた。


「魔女王の呪い、かくたるや!徹底してるのねん!」


 見かけは少女でも、中身はBBAなマチは、少し言い回しが古臭かったりもするのであった。

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