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何色ですか?

 まず断言しよう、人あるところに文化あり。人あるところに食生活あり。人あるところに食文化ありなのである!

 誰が流行らせたのかもう定かではないが、異世界は飯マズ、は、設定的にありえない!

 現にマチ、サキ、エリの召喚されたこのイスワール王国の食文化は、とりあえずこの王宮内においてだけに限って言えば、どれもこれも、勇者、賢者、聖女をもてなすのにふさわしい絶品ぞろいだった。

 特にスイーツ!フルーツをどっさり使った、ケーキ、タルト、スコーン、などは、見た目の()えだけではなく、思わず顔がにやけてしまうほどの超絶品揃いなのであった。


「いくら若返ったし、糖尿病の心配もなくなったとはいえ、さすがに食べすぎかしら…今度は太っちゃう心配が()りそう…」


 マチはお腹をさすりながらつぶやいた。


 材料に使われているフルーツの中には、見たことのない物もあったため、つい物珍しさも手伝って、あれもこれもと手を出してしまったのである。


 と、ちょうどそのとき、退出していた侍女カリーナが、ポットなどの茶道具を乗せたワゴンを押して戻ってきた。


「こちらは消化に良いハーブティーになります。お砂糖なしがオススメですが、いかがなさいますか?」


 と、カリーナ。


「さすが気が利いてるわね、カリーナさん。私はお砂糖なしで平気よ」


 マチはカップに注がれる爽やかな香りのハーブティーの立てる湯気を眺めながら、答えた。


 サキもエリもそれにならった。


「……それでは、先ほどのお話の続きをさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 テーブルについている3人に、スカートの裾を少し持ち上げて会釈しながら、カリーナは言った。


「えっと…確か大きな魔法を使うには、代償に自分の体力が削られるって意味の内容だったかしら…?」


 マチの発言に、カリーナは、小さく拍手した。


「そうでございます。本来魔力の源は、大気中に漂っているのですが、それを魔法として使いこなすためには、術式、呪文などの『きっかけ』が必要なのであります。いうなれば、火を起こすためには、そこに火薬だけがあっても、ダメで、火薬に刺激を与えることによって、火が起こるように、術式、呪文という『きっかけ』がなければ、火は点かないのです」


「マッチがあっても、マッチをこすらなければ火はつかないっていう理屈よね?」


 マチが言うと、カリーナはわが意を得たりとばかりにうなずいたが、JKのサキは、


「マッチって、なんですか?」


 と、マジ顔で尋ねたのであった。マッチを知らない若い世代に説明すると長くなるので、わからない読者はググることをオススメする。


「ーーとにかく、火をつけることはできても、火を燃やしつづけたり、火を大きくするには、油が別途必要なように、大きな火球を作ったりするには、別途エネルギーが必要なのです。そしてそれは、本来であれば、魔法を使う本人の体力から削られるのです」


「へー」


 と、サキーーついさきほど魔法使いである賢者であることが確定したばかりーーは、神妙な面持ちで、そうつぶやいたが、どこまで理解が追いついているのかは、微妙だな、と、その表情から、こっそりマチは思ったりしたのだった。


「うーん、大きな魔法を使うと使った本人が疲れてしまう、消耗してしまうというのはわかったけど、カリーナさん、さっき賢者に関しては別みたいなこと言い残さなかった?」


 と、マチ。


 カリーナは大きく頷いて。


「賢者様におかれましては、魔法を使うためのエネルギーを、あらゆる生き物、植物、大地、大自然などから自らの内にとりこみ、放出することができる、といわれております」


 カリーナは、じっとサキの目を見て言った。

 サキはそれを無言で見返して……数刻ののち、


「なーんだ、わかったわかった。アタシは自分の体力の心配なしに魔法が使えるってことじゃん、だよね?だよね?」


 と、顔をパッと明るくさせて言った。


 カリーナは、それに反し、がっくりと肩を落とした。


「……左様でございます。しかし、それは、サキ様の身に限って安全という意味にしかならないのです……」


「へ……?どゆこと?どゆこと?」


 カリーナはため息混じりに答えた。


「もし、一歩間違えば、サキ様は、身近にいる方のエネルギーを奪って、魔法を放出してしまうかもしれないのです」


「……え?」


「エネルギーを取り込む対象をコントロールする術を学ばなければ、たとえばマチ様がサキ様のすぐ横にいた場合、サキ様はマチ様の生命力を根こそぎ奪って魔力にしてしまう可能性があるのです!」


 カリーナは、サキの目から、視線をそらさない。


「え、え、ええっ?!それって超ヤバない?それじゃアタシ、怖くて魔法なんて使えないよっ!!」


「怖がるくらいがちょうどいいのです。さっきのように、気軽に使ったことのない魔法を使おうとすることこそが危険なのです」


 カリーナはキリッと言い放った。


 ここにきて、ようやく魔法のなんたるかを理解したらしいサキは、深く深くため息をついた。

 

 そんなサキに、カリーナは口調を変え、


「賢者様には、エネルギーを吸収する目標を取捨選択する才能も合わせ持っているはずです。学べば良いのです。小さな魔法から、コツコツと」


「……コツコツかぁ」


 サキはまた深くため息をついた。


 しばらく、お茶会の席に沈黙が流れた。


「……ねぇ、カリーナさん、ひとつだけ教えてくれる?」


 沈黙を破ったのは、ほかならぬサキだった。


「なんでございましょう?」


 カリーナは、慈愛に近い笑みを浮かべて、返した。


 サキは、キリッとした表情で、言った。


「カリーナさんのショーツ、何色?あと、ブラはどんなのつけてるの?」


 沈黙が、流れた。


 長い長い沈黙が、流れた。


「さっき、直接聞いてくれたら教えてくれるっていったよね?よね?」


 サキは人差し指を口元にあて、可愛らしげに首をかしげて追い討ちをかけた。


 カリーナはそのしなやかな指で、眉根を揉んだ。そして、大きな大きなため息混じりに答えた。


「上下とも、黒です。魔法についても正しく理解していただけたようで、嬉しく思います。それでは私は一旦退出いたします。お夕食のお時間まで、皆様ごゆるりとおくつろぎ下さいませ…」


 そう言い残すと、万能侍女カリーナは心なしか肩を落とし気味に、そそくさと退出したのであった。


「やったー!やっぱりこの世界にもブラジャーはあったんだ!あとで用意してもらおっと!あっ……!カリーナさんになんカップかも聞いておけばよかった!いいか、また後で聞こうっと♪」


 はしゃぐサキを尻目に、マチとエリもさきほどのカリーナのように、眉根を揉んで、大きなため息をついたのであった。


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