エックス、カリバー!!
本当に、発光現象ばかりで、もううんざりであった。
しかしーー
「カリーナさん、これ、抜けないわよ?!なんかめっちゃグラグラはしてるんだけど、抜けないわよ?!」
「マチさま!その聖剣に名前を付けるのでございます!その呼び名に応えて、聖剣は覚醒するのですっ!」
「名前?ーーそんなもの、急にいわれてもーー前もって言っておいて欲しかったわぁ。ええと、どうしよう。しかたないわん、ここは、やっぱり、あの伝説の聖剣の名を借りてーー」
マチこと、町子は、叫んだ。
「エックス、カリバー!!!!」
するりと、聖剣は、台座から、抜けた。あんまり簡単に抜けたものだから、拍子抜けして、マチは、とっとっとっと、よろけそうになったほどだ。
しかし、そこはさすが若返った体。マチはバランスをとり、鮮やかに身を翻し、パッと、片手で聖剣を頭上に掲げた。
「ドヤっ!」
マチが決めポーズを取ると、万能侍女のカリーナ、元JKのサキ、元公務員のエリの三人から、パチパチパチっと拍手があがった。
「エックス・カリバー!素敵な響きですね!」
と、カリーナが褒め称える。
「そう?円卓の騎士アーサー王物語の、聖剣エクスカリバーから、そのままパクっただけだけど、他に思いつかなかったのよ……!」
「???ーーエックス・カリバーでは、ないのでございますか?」
「いやね、カリーナさん、エックス・カリバーじゃなくて、エクスカリバーよ!」
「……でも、マチさま、エックス・カリバーって、おっしゃって、ましたよ?たぶん、その名前で、所有者登録されてしまったのではないかと、思われます」
「所有者登録?!」
「ーーはい。その聖剣に向かって、『エクスカリバー』と、呼びかけてみて下さいませ」
カリーナの言葉に従って、マチは素直に、
「エクスカリバー?」
と、呼びかけてみた。
何も起こらなかった。
「ではーー次に、『エックス・カリバー』と呼びかけてみて下さい」
「エックス・カリバー」
マチがつぶやくと、
「わたしの名はエックス・カリバー」
という《声》が、マチの頭の中で響いた。
「うわ?!ひえっ?!」
あやうく聖剣を取り落とすところだったマチは、あたふたしながら、なんとか足の上に剣を落とすことを免れた。
「しゃ、喋った?!」
「主よ、長い長い間、あなたを待ち続けておりました。ーーわたしの名は、エックス・カリバー……」
なおも、聖剣は《声》を発し続けた。
「聖剣は、意志を持ち、己の認めた主人との意思の疎通が可能ーー勇者にまつわる伝説の通りでございます!」
カリーナは、感嘆した様子だった。両手を胸の前で組み合わせて、涙を流さんばかりだ。
「ーーマチねーさん、アタシの耳には、何も聞こえないっスよ?」
と、怪訝そうに、サチが言った。
「ええっ?!そうなの?!もしかして、カリーナさんにもエリさんにも聞こえなかったの?」
「はい」
と、カリーナとエリは口を揃えた。
「ひえー。あんた、喋れるんだー?」
マチは聖剣を、目の前にかざした。
「主よ……ありがとう。わたしの名は、エックス・カリバー……」
「なんか、同じ言葉を繰り返してるだけみたいなんだけどー?」
「そのうちに、複雑な意志の疎通が、可能になるはずでございます。文献には、そうありますっ!」
マチに、カリーナは力強く主張した。
「さあ、これでーー」
まだ興奮冷めやらぬ体で、カリーナは、鼻息も荒く、
「ーーめでたく、マチさまが勇者さまであることが証明されましたっーーということで、消去法で、残るサキさまが、賢者さまであることが、確定したのでーす!!ジャカジャン!」
両手をパーっと広げて叫んだのであった。
「なんか……消去法でって……複雑なんっスけど……」
サキが小さくつぶやいた声がマチには聞き取れたが、カリーナの耳には届いていないようであった……。




